【コラム】2008年から継続しているコホート研究について

ツインリサーチセンター発行「ツインリサーチニュース」のコラムより、コホート研究の報告を一部抜粋して転載します。

（掲載当時の成果ですので、その後成果が増えているものもあります）

われわれの研究チームでは，臨床研究とは別に2008年から2年毎に生活習慣や心身の状態をお聞きする質問紙調査を行っています．2008年～2012年までは初代センター長の早川研究室として，2014年以降はツインリサーチセンターとして継続しています．質問内容は主に高齢者の心身の健康に関する内容が中心です．そこに，仕事に関することが加わったり，他の環境要因に関する調査が加わったりします．そのため，現役世代の方からは質問の内容が適切ではないのではないかとのご指摘をいただくこともあります．また，毎回同じような質問に回答しても意味がないのではないかというご意見をいただくこともあります．しかし，このように継続的に調査を行う研究では，疾患の対象となる年齢層の方だけでなく，幅広い年齢層の方の時間的な変化の情報をもとに，個人差や環境の違い，そして遺伝的背景の違いによる心身の健康状態の違いを研究することに意義があります．

とはいいましても，20歳代の方と80歳代の方では対象とする健康問題も異なってきます．2008年の当初はご協力いただいている方が全員40歳以上でしたので，同じ調査票でしたが，今後は年齢や環境要因を考慮した調査も検討できればと考えています．そのためにも，従来の紙の調査票を郵送する方法に加えて，Ｗｅｂサイトで質問にお答えいただく方法も検討しています．（希望者には郵送による方法も継続します．詳細は準備ができ次第，郵送でご案内します． ）

これまでのコホート研究のデータをもとに，高齢者の閉じこもりとうつの関係を分析し、2015年に論文発表しました．閉じこもりの約30％は遺伝要因によるもので，うつとの関連は薄いことがわかりました．このことにより，うつと関連する閉じこもりと，そうではない閉じこもりを分けて考える重要性が確認されました．

また、2014年実施の単年調査について、働き方やストレスと慢性疲労との関連を調べた結果、労働に伴うストレスと慢性疲労との関連は、「ストレスを感じやすい人が慢性疲労にもなりやすい」といった遺伝・環境の交絡要因によるものではなく、直接的な影響を及ぼしていると考えられ、第29回日本双生児研究学会（金沢市）において報告されました。

＊コホート研究：疫学研究手法の一つで、特定の対象者集団（コホート）に、長期間にわたり健康状態やそれに影響を与える生活習慣、環境などについて調査を行う研究をいいます。