生活史の大半を海中で送るウミガメの生態は、長い間謎に包まれていました。しかし、世界中の研究者によりここ10年で飛躍的に解明されました。また、ウミガメの保護の歴史も浅く、調査をする人がいなかったり、人が立ち入れない海岸も少なくないので、ほぼ全国の海岸で調査がされるようになったのは、ごく最近のことです。ウミガメの産卵地は、地域により環境が異なります。表浜海岸の場合は、約47kmの海岸で砂浜が豊かな所、砂浜が無くなってしまった所が入り交じり、東西でも上陸数がかなり違います。また、砂浜のちょうど真ん中辺りに消波ブロックが連続して設置されており、自然豊かな海岸線に沿う形で相反する人工構造物が連なっているのも表浜海岸の特徴です。

ウミガメの調査の現場は、その地域の調査員に委ねられているので、私がこのプロジェクトで問題として紹介しているウミガメへのブロック障害は、2004年以前は伝えられることがありませんでした。私が調査を始めた翌年の2005年は、大型台風が多数本州に上陸したことで、砂浜に埋まっていた消波ブロックがむき出しになり、ウミガメに与えた被害は甚大でした。この年も私がインターネットで情報発信しなければ伝わることは無かったと思います。当然、ブロック撤去も無かったのです。

 

保護とは?


野生動物を保護すると言うことは、その種だけを保護するのではなく、生息する
環境を守ることだと考えています。その為、ウミガメの産卵地の環境を正確に把握し、人工構造物がウミガメの産卵行動にどの様な影響を与えているかを調査しています。そして、ウミガメ保護を前提とするこれからの海岸保全のあり方を提案しています。
私たちが行う保護の目的は、ウミガメに砂浜を返すことです。

しかし、一方で、ウミガメの卵を掘り返し、孵化場に移植して保護しようと取り組む調査員もいます。

ウミガメの産卵はとても神秘的です。足ヒレで深さ60cmもの穴を上手く掘り、110個前後の卵を産み落とし、穴埋め作業も完璧にこなします。消波ブロックの影響で流失する恐れのある場所で産卵する場合もありますが、私たちは、自然孵化を原則としています。

 

移植がなぜ問題なのか?

 

人の移植はウミガメの産卵には勝てません。人が産卵巣の卵を掘り返し移植すれば必ず臭いが漏れます。その為、最近は獣害が増えています。狸などの野生動物がウミガメの卵を食べてしまうのです。

 

食害にあった産卵巣
食害にあった産卵巣


未熟な調査員の移植方法にも問題があります。ウミガメの卵は鳥類の卵の様に転卵させれば、胚の発生が上手くいかず死んでしまいます。
ウミガメが命がけで完璧に仕上げた産卵巣を、なぜ掘り返して移植しなければならないのでしょうか???
それは、人が管理しやすいこと、子ガメの放流会イベントの為なのです。
冒頭に、ここ10年でウミガメの生態が飛躍的に明らかになったと申しましたが、子ガメの孵化直後の行動がいかに重要であるかは、ウミガメに関わる人には既に周知の事実です。子ガメは、真夜中に孵化して地上に出ると、一目散に海に向かってダッシュします。24時間という短い時間で外敵のいない海域まで辿り着かなければならないからです。子ガメの外敵は、陸よりも圧倒的に海の中の方が多いのです。この時間帯の子ガメの行動をフレンジーダッシュと言いますが、生まれて間もない子ガメが真っ先に経験する大事な行動です。
多くの人が体験したいと思う子ガメの放流会は、イベントの時間に合わせるため、このフレンジーダッシュを子ガメから取り上げてしまうのです。それはどういうことかというと、残念な事に、海の中にいる魚にエサを与えている様なものですね。
こうしたイベントを止めた自治体もありますが、未だに多いのが現状です。

 

詳細はこちらです。

表浜ネットワークのウェブサイトをご覧下さい。

http://www.omotehama.net/アカウミガメは砂浜の指標動物/誤ったアカウミガメの保護?/

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