プロジェクト取り下げにつきましての経緯ご報告とお詫び。

ご賛同くださいました皆さまへ。

 

いつも温かい励ましのメッセージとご賛同のお気持ちをお送り頂き有難うございます。この度、学生達の取材予定が変更を余儀なくされたため、残念ながらプロジェクトを取り下げることになりました。ここに、これまでの経緯をご報告し、取り下げることになりました事態へのご理解を賜りたいと思います。

 

お陰様で私たちのプロジェクトは順調に進み、ロンボク島の観光局と保健局で活動するJICAボランティア山本瑞穂さんと柳澤紗也子さんとのビデオ制作は無事終了致しました。

 

看護師ボランティア・柳澤さんとは、小学校での手洗い活動や手洗い歌の指導などの様子を収め、家庭訪問先では子供たちにお母さんがご飯を作るお手伝いをするとき、食事の前や食後にも手洗いすることを教える場面が撮影できました。

DVDにして小学校の先生方や保健所の皆さんに見てもらいましたところ評判は上々で「これならいろいろな所で上映できるね」と喜んでいただいきました。

 

観光ボランティア・山本さんとのビデオ制作では、ロンボク島の美しいビーチやサーフィンを楽しむ人々、激しい夕立の後の美しい南十字星の姿を紹介することに成功して大変喜ばれ、夜明けを告げる鶏の声や浜辺に寄せるさざ波の音、小鳥のさえずりや虫の音などロンボク島ならではのサウンドを収録しました。

 

学生達は、ロンボク島保健局の活動にお役に立てたことや観光局から発信されるネット動画がこれから世界中の人々にPRされることを思ってビデオ制作に自信を深めると同時に社会貢献できた喜びを感じています。

 

皆様のご賛同によって大変有意義な活動ができましたことを深く感謝いたします。

 

さて、スマラン事件に関するビデオ制作活動につきましてですが、スマラン市軍事博物館のご理解とご協力を得て学芸員の方の歴史解説を収録させていただきました。また博物館が収蔵しておりました「スマラン事件の証言集」も部外者では初めて使用させていただくことにもなりました。

当然、博物館の展示資料物撮影料や博物館への寄付などを支払ってのことですが、これも皆さま方からの温かいご賛同の賜物だと感謝いたしております。

 

ところで、このスマラン事件に関するビデオ制作活動の目玉ともいえる「日本側遺族者へのインタビュー」ができなくなりました。

当初、学校側との話し合いでは「ラマダン明けの国民的休暇期間であれば問題はないでしょう。」ということで、７月14日を中心とした日取りで日本取材を立てていました。

ところが、卒業試験が７月18日（月）から22日（金）に行われることになりました。これでは学生達は日本に取材に行くことなど考えられません。そこで取材時期をずらすことを検討したのですが、日本側遺族の方々のご都合や今回のプロジェクトの共同発起人でもあるJICA日本語教育ボランティア小田謙爾の予定と折り合いがつきません。学生たちの日本取材は、小田がインタビュアーを務めることで日本側遺族の方々も了承されていたことでした。

 

お話いただく方々の言葉の「ニュアンス」や言葉と言葉の「間」は証言される方々のお気持ちがこもった大切な部分であり、インタビュアーは配慮しなければなりません。聞きたいことだけを単純に尋ねることなどできません。取材される側と取材する側の信頼関係が築かれた上でも相手の気持ちに寄り添わねばお聞きできないことです。インタビュアーは誰でもできるわけではないのです。

 

そのことを学校側に話して、これまでに３度会議を持ちました。しかしながら、学校側も卒業試験の実施と答案を検討する重要な時期ですし、他の学科との兼ね合いもありますから期日を変更することは大変難しいことを理解してほしいということでした。

 

その結果、日本側の証言は小田が自分のカメラで撮影することになり、学生達は、小田が撮影した映像を提供してもらって作品を完成させることになりました。

 

「日本取材」というこのプロジェクトの中心事案を慎重に協議してきたつもりでしたが、努力が十分でなかったためにプロジェクトを取り下げることになりましたことは、非常に残念なことであり斬鬼の念に堪えません。

 

私どもからプロジェクトへのご参加をお願いをしておきながら、皆さまのお気持ちに応えられない事態になりましたことを深くお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。

 

これから学生達は卒業試験と８月末日締め切りの学科制作課題の最終提出を終えて９月の卒業式に臨む予定です。今回のプロジェクトは取下げになりますが、これまで皆さま方からいただきましたご支援のお気持ちは学生達の大きな心の支えになり財産となりました。

 

企画を立案しました私どもの力不足でご迷惑をおかけいたしますが、なにとぞご理解を賜りますようお願い申し上げます。

 

恐々謹言

２０１６年７月５日　太田吉治　記