メッセージリレー＃1　～佐藤一恵さん～

デフ・パペットシアター・ひとみ「河の童」仙台公演を企画中の佐藤一恵と申します
 

山形公演を企画されているお一人、川崎香奈子さんからご紹介を受けまして、メッセージを書かせて頂きます。

私がデフ・パペさんとはじめてお会いしたのは、昨年の秋でした。
私は舞台演出家の小池博史さんのメールマガジンの編集をさせて頂いております。小池さんは2011年、デフ・パペさんの結成30周年記念の舞台「森と夜と世界の果てへの旅」の脚本を書いたことがあり、どのような舞台であったのかインタビューにお伺いさせて頂いたのがきっかけでした。
 

出演者のやなせさん、アドバイザーの森元さんにお話を伺い、実際に使われたパペットも拝見させて頂きました。
 

言葉での表現だけでなく、たたく太鼓の響き、白い舞台装置や衣装に映された映像、パペットやそのパペットを操るパフォーマーの皆さんの表情が、言葉を越えて雄弁に表現している様子を、聞き、また、映像で拝見して感じることが出来ました。

表現する、とは単に言葉だけではないこと、そして、伝えるとは人の全身の細胞から発せられることなのではないかと感じ、いつしか、ろう者、聴者という隔たりなどを忘れて作品を見ている自分がいました。

今回、山形、そして、仙台でもデフ・パペさんの作品「河の童」の公演を企画しています。

たくさんの方に観ていただきたいもくろみの中には、私たちの周りには、私とはいろいろな意味で「違う」人々がいることを考える機会になれば、という思いがあります。

違うことで、普段とは勝手が異なり、モヤモヤしたり、面倒だと感じたりすることはないでしょうか。それは、とても素直な感情で、隔たりを感じるのも、近寄りがたいと思うのも、ごく自然なことです。

「違う」ことを「知る」ことで、自分とは違うと思っている人のいる世界を見ることが出来ます。そして、知らないうちに自分自身の見てきた世界が広がっていることに気がつきます。

これは、私が初めて手話を使う方とコミュニケーションを図ろうとしたときの体験でもあります。

私は、ろう者の方々を勝手に自分と差をつけて見ていたのですね。
言葉を話すという技術を造作なく使える私は、これほどまでに「伝える」ことを大事にしているだろうか。

ひとつひとつの言葉に手を用い、豊かに表情を使い、相手の理解を確かめながら話す姿に、遠い遠い昔、初めて人と人が思いを交流させた時代に、想像を馳せました。

「違う」ということが私に教えてくれた出来事でした。

舞台「河の童」
ぜひに皆さんも観にいらしてください。
この作品には、人間ではないものも登場します。
「違う」ものたちは、何をもたらしてくれるでしょうか。
どんな世界の扉を開いて待っていてくれるでしょうか。

そんな出会いを楽しみにしていてください。