全盲ハッピーマン!世界を広げるフォトエッセイを多くの人に届けたい。

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支援総額

3,176,000

目標金額 2,500,000円

支援者
546人
募集終了日
2021年3月31日

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2021年02月10日 10:06

第1章を公開します!

こんにちは! 
プロジェクトリーダー大平啓朗、おーちゃんです。
ご訪問いただき、本当にありがとうございます。

 

この本がどういう雰囲気ものなのか、少しでも感じていただくために、
全10章のうちの第1章をここで公開します!

ぜひご覧ください。

 

-----

 

★STORY.1
24歳。突然、僕の目はまったく見えなくなった。

 


●大平啓朗(おーちゃん)の基本情報

 

僕は北海道に住む「旅するカメラマン」。
趣味、視覚障害。特技、全盲。光も感じない。
だから、身体障害者手帳の1級っていう最強のヤツを持っていて、「見えない人」をプロでやっている。

 

おい、ふざけてるのか!?
そんな風に思った人もいると思う。
けど僕、これは本気でそう思っているのね。
なので、「へ〜、コイツはこんなヤツなんだなぁ」って、そのまま感じちゃってほしいんです。

 

現在40歳の僕の目が見えなくなったのは、今から約16年前。
僕は意識を失った。
次に目を開けた時には、真っ白な景色が僕を待っていたんだ。

 


●事故

 

2003年11月の深夜。
山形大学の理学部の大学院生だった僕は、研究室で論文を読んでいた。
すると突然、友達からの誘いがあり、飲み会をすることになった。
それから、お酒がわりに飲もうと、研究室にあったアルコールのひとつである「エタノール」の瓶の中身をペットボトルに移して自宅に持ち帰った。
僕はペットボトルの中身をジュースで割ったもので、友達は持参したビールで乾杯した。

 

それから2日後。
目を覚ました時、僕はものすごく気分が悪かった。それに目の前のものが見えにくくて……。僕はフラフラしながらも洗面所に行き、鏡をのぞいて……絶句した。
今思い出してもすっげー不気味なんだ。そこには、視点が定まっていない自分がこっちを不安そうに見ていたんだよ。

 

僕は悩んだ結果、後輩の運転で病院に向かった。
医師の診察を受けはじめて間もなく、僕は呼吸ができなくなって……。
記憶はここまで。意識を失ってICU(集中治療室)へ運ばれた。

 

北海道から駆け付けた僕の家族に、医師はこう伝えたらしい。
「この数日が峠です。もし命を取り留めても起き上がることはないでしょうし、それよりも二度と口を開くこともないと思います」と。

 

それから数日後、警察の調べで、僕が倒れた原因が明らかになった。
僕が飲んだペットボトルの中身は、実は有毒な『メタノール』だった。研究室のエタノールの瓶には、間違って有毒なメタノールが入っていたんだ。
飲んでしまったのは、致死量をはるかに超える3倍とも5倍ともいえる量だった。

 


●親父からの告白

 

「ひろあき! 親父だぞ。わかるか? 親父だぞ。親父だぞ」
そんな風に呼ばれたような気がして、僕は返事をしようと思った。
それなのに……声がまったく出せなかった。
それに、目を開けても全部まぶしい白一色で……。
僕の目は、親父の顔どころか、なにも映さなかった。

 

「なにがあった? 人が集まってる……?」

 

こうして僕の意識が戻ったのは、ICUで3日間の処置を受け、さらに個室に移って数日経ってからのことだった。
だけど、僕は目を覚ましてからの数日間の記憶がほとんどない。
でも、家族はかけつけてからのことを毎日交代で日記を書き続けていた。
「呼吸ができるように、定期的に痰を吸引した。とても苦しそう」
「目を開いたまま、なにも反応がない。叩いても反応がない。驚いて看護師を呼んだ。胸を強く押して強くつねると少し痛そうな反応をした。脳は寝ていたらしい」

 

目の前が霧に包まれたようで、なにも見えなかった。
それだけじゃなく、薬品の副作用で脳にダメージを受けていて、身体への命令もきかなくなっていた。
僕ができたのは右腕を微かに動かすことと、少し顔を傾けることだけ。

 

僕になにが起きたのかを説明する人はいなかった。
なにが起きたかまったく想像もつかなくて、とにかく不安でたまらなかった。
ずっと天井を見つめていた。
「まばたきしてもなんにも変わんないんだな……」
「交通事故? 俺だけ? ん、どこかで倒れた……?」
「俺のせいなのかな? どうしてこうなったんだろう。せっかく丈夫な身体で生んでくれたのに、親父、母さん、ごめん……」
そんなことばかり考えていた。

 

意識が戻ってから約1週間後。
会話が少しずつできるようになった僕に、今回の事故のことを親父が説明してくれた。
そして最後にこう言った。
「なぜ見えなくなったか。そんなことより、お前が見えないで生きていくことには変わりはないんだよ。これから一緒に頑張っていこうな」と。
僕は事実を聞いて驚いたけれど、なぜだか取り乱すようなことはなかった。
ただ「うん。わかった」とだけ言った。
そして、警察からの犯人捜しの提案にも、少しの迷いもなく親父と同じ気持ちで首を振った。

 

「俺の目が見えないのは変わんないか……。なにかのせいにしてもカッコわるい。そんなことより、恥ずかしいことしちまったな」
「やっちまったのは俺だしな。やるしかないよな」
そうやって、自分に言いきかせていたりもした。

 

けど僕は、「俺と同じ考えだ。やっぱりこの人の息子なんだなぁ」って、親父の言葉がすごく嬉しかったんだよね。
「言い訳するな」「人のせいにするな」「やる時はやれ」っていう3つが、親父の無言の教えなんだなってずっと思って生きてきたから、自分の行動に後悔はあったし悔しさもあったけど、不思議と「そっか、次だよな」って思えたんだ。

 


●完全に目が見えなくなった日

 

意識が回復してから3週間くらい経った頃、僕の視覚が徐々に回復するというとても大きな変化が起きたんだ。
もちろん、家族は大喜びしてその後の回復を期待した。
だけど、その直後にあった眼科での診察で、「今見えている視力から、大きな回復は期待できません」と医師は言った。
まわり道のない宣告でスパッと伝えてくれた。とても意外だった。
「先生、サンキュー。もーわかってたんだよ。まわりくどいのは面倒くさくて嫌だったんだよね」と、僕は晴れ晴れした気分だった。
でも、付き添っていた親父の、宣告後にはじめて口からこぼした「がんばろうな」は、とても小さくて……。僕はなにも声をかけられなかったな。

 

面会が許されている時間は、毎日いろんな仲間が見舞にきてくれて、いつも誰かが側にいてくれた。
「本当に幸せ者だねー。行列のできる病室じゃん!」
そんな風に看護師さんたちに冷やかされたけど、それがまた嬉しかった。
 

それから少し経つと、僕はだんだんと見え方が悪くなっていることに気がついた。
この時はじめて、心の奥に「嘘だろ?」の文字をみつけたような気がした。

 

ある日、姉が車椅子を押してくれて、院内のテラスの近くを通った時、ふと温かさを顔に感じた。その暖かさの方には、これまでに見たことのないような、本当に本当に綺麗な真ん丸が、霧のかかったような空にクッキリと見えたんだ。

 

でもその数日後の快晴の日、また同じ場所へ見に行くと、もうその空に真ん丸を見つけることはできなかった。
「太陽とさえお別れか。24年か……」

 

小学生の時、教室から日食を見ていた幼い頃の自分を思い出した。
あの時、「太陽を直接見たらダメだよー。目が悪くなるからね」って、先生が大声で何度も何度も言っていた。
「目が悪くなる」
その言葉は、もう僕には関係ない言葉になった。

 


●生きるということ

 

見舞にきてくれたバドミントン仲間の福田先生が、こんな言葉をかけてくれた。
「大平はな、まだやることが残っているから死ななかったんだよ」
僕は、なぜだかその言葉が不思議なくらいすっと心に入ってきて、そうなのかもしれないって素直に思えた。

 

「僕にはこんなにも想ってくれる人たちがいる。生きているうちにそれを知ることができた」 
僕は素直に、なんて幸せなんだろうって思ったよ。
それは、視力を失ったことの悲しみや不安よりも、大きかったみたいなんだ。
 

リターン

2,500


書籍&ポストカード【1セット】

書籍&ポストカード【1セット】

★表紙デザインが特別仕様のクラウドファンディング限定書籍1冊お届け。
★著者おーちゃんが撮影した写心(書籍に収録するPhoto)をポストカードにして1枚お付けします。

※日本国内へのお届けのみとなります(送料込み)。
※書籍発送時期は2021年の4月発送を予定していますが、多少前後する可能性もございます。

申込数
366
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2021年4月

5,000


おーちゃん&高橋歩オンライントークイベントご招待+書籍&ポストカード【2セット】+サンクスクレジット掲載

おーちゃん&高橋歩オンライントークイベントご招待+書籍&ポストカード【2セット】+サンクスクレジット掲載

★4月25日に開催予定の【出版記念!おーちゃん&高橋歩オンライントークライブ(90分予定)】をリアルタイム視聴できます。イベントの模様は録画予定です。開催日に参加できない場合は、後日アーカイブ視聴も可能です。
★2500円のリターン「書籍+ポストカード」のセットを、2セットお届けします。
★書籍の巻末にSpecial Thanksとしてクレジット(お名前)を掲載いたします。

※注意事項:このリターンに関する条件の詳細については、リンク先(https://readyfor.jp/terms_of_service#appendix)の「リターンに関するご留意事項」をご確認ください。

申込数
138
在庫数
160
発送完了予定月
2021年4月

2,500


書籍&ポストカード【1セット】

書籍&ポストカード【1セット】

★表紙デザインが特別仕様のクラウドファンディング限定書籍1冊お届け。
★著者おーちゃんが撮影した写心(書籍に収録するPhoto)をポストカードにして1枚お付けします。

※日本国内へのお届けのみとなります(送料込み)。
※書籍発送時期は2021年の4月発送を予定していますが、多少前後する可能性もございます。

申込数
366
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2021年4月

5,000


おーちゃん&高橋歩オンライントークイベントご招待+書籍&ポストカード【2セット】+サンクスクレジット掲載

おーちゃん&高橋歩オンライントークイベントご招待+書籍&ポストカード【2セット】+サンクスクレジット掲載

★4月25日に開催予定の【出版記念!おーちゃん&高橋歩オンライントークライブ(90分予定)】をリアルタイム視聴できます。イベントの模様は録画予定です。開催日に参加できない場合は、後日アーカイブ視聴も可能です。
★2500円のリターン「書籍+ポストカード」のセットを、2セットお届けします。
★書籍の巻末にSpecial Thanksとしてクレジット(お名前)を掲載いたします。

※注意事項:このリターンに関する条件の詳細については、リンク先(https://readyfor.jp/terms_of_service#appendix)の「リターンに関するご留意事項」をご確認ください。

申込数
138
在庫数
160
発送完了予定月
2021年4月
1 ~ 1/ 21

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