外国にルーツを持つ児童が遊びながら学べる「いみあわせかあど」制作を

岐阜大学教育学部の今井です。

私がクラウドファンディングに挑戦した2つ目の理由についてお話しします。

２つ目の理由は、研究成果をカタチにし、役立てたいという思いからです。

私は、教育現場にいる人たちの声に耳を傾け、そこで語られる言葉の中から研究課題を見つけ、それに取り組むという研究スタイルを採っています。この研究スタイルになったのは、教員として教育現場へ送り出した卒業生を支援できる研究を行いたいと思ったからです。日本語指導が必要な子供たちの教育支援に関する研究を始めたのも、教科の授業を行うためのトレーニングを受けて教育現場へ飛び出していった卒業生が専門でない日本語指導を試行錯誤しながら考え、日本語指導が必要な子供たちの支援に励んでいる姿を見たことも一つの理由になっています。

福島さんの修士研究で開発した『いみあわせかあど』は、現役の小学校教員である福島さんが昼間は小学校で勤務しながら、夜間および土日に大学院で学び、研究した成果です。修士論文を仕上げるために『いみあわせかあど』を開発したのではなく、実際に日本語指導を必要とする子供たちに使ってもらいたいという一心で、様々な調査を積み重ねながら完成させた教材になります。

現職教員として積み重ねた知識と経験、そして大学院に入って学んだ知識とが結びつき、時に化学反応を起こし、それがカードゲーム教材『いみあわせかあど』という一つの成果となりました。これまで私が取り組んできた教材開発研究では、研究成果を示すところまでは出来るのですが、こうした成果を、理想的なカタチにして、必要な人へ届けるというところまでは望んでもなかなかできませんでした。『いみあわせかあど』もこの点で躓いていました。

クラウドファンディングによって、わたしたちが長い時間をかけて取り組んできた研究成果であるカードゲーム教材『いみあわせかあど』を、理想的なカタチにして、これを必要としている子供たちに渡すことができたら、教材開発研究のカタチも変わるのではないかと思います。つまり、開発して終わりではなく、開発したものを根ざして終わりにする。そうすれば長い年月をかけて開発された様々な教材が教育現場に溢れ、学習者や先生はたくさんの教材の中から自分（学習者）にあった教材を探すことができるようになり、学ぶことがもっともっと楽しくなるのではないかと思います。

学ぶことは本当に楽しい営みです。この楽しさを支援するツールの一つが教材です。この教材開発の新たなカタチを見つけるために、私はこのクラウドファンディングに挑戦しました。これが２つ目の理由になります。

クラウドファンディングに挑戦して4週目に入っていますが、皆様が支援と共に送ってくださるメッセージを拝読し、『いみあわせかあど』の教育的意義を改めて気づかせていただいております。

クラウドファンディングを始めて間もない時期にいただいたメッセージに、親の仕事で海外の学校に通うことになった経験をもつ方からその当時を振り返り、「子供はすぐ言葉を覚えて現地に馴染むから平気と思われがちですが、物心のついた児童にとっては、自分を受け入れてくれる環境だと肌で感じられるかどうかが、学習への意欲と、馴染んでいくためのきっかけになると思います。そして、馴染めたか否かは、成長するにつれ、その国への印象にも影響すると思います。」というメッセージを届けてくださった方がいらっしゃいます。私はこの「自分を受け入れてくれる環境」を「あなたも学んでほしいというメッセージがあらゆるものを通して伝えられる環境」だと解釈し、このメッセージを伝えるメディアの一つに『いみあわせかあど』はなってほしいと思っています。

皆様のメッセージを拝見しながら、『いみあわせかあど』の教材としての意義を考える営みは、これまで行うことができなかった活動です。メッセージを読み終えるまでドキドキは止まりませんが、こうした活動は教材開発を行う者にとっては大切だと思います。

もしかすると、『いみあわせかあど』がどのような教材として評価いただけるのか、私たちが行っている研究が本当に教育現場の役に立つ教材として認められるのかを、私はこのクラウドファンディングの挑戦を通して確認したかったのかもしれません。