ツタンカーメン王墓出土隕鉄製ウジャト（ホルス）の目 －復元完了報告－

　このプロジェクトでは利器（刃物）以外の隕鉄製鉄器にも挑むことを新たなチャレンジの目的として設定しました。そのなかに装身具があるのですが、なかでも最も複雑で難しいのがエジプト、ツタンカーメン王墓より出土した「ウジャトの目」です。「ホルスの目」とも呼ばれます。ウジャトの目は守護や魔除けの護符として古代エジプトで使用されてきたものですが、ツタンカーメン王墓には、エジプト唯一となる隕鉄製品が副葬されていました。

　このツタンカーメン王墓出土のウジャトの目は、今から3000年前をさかのぼる隕鉄製鉄器のなかでは最も形態が複雑で、それ故に加工も難しく、さまざまな金工技術が駆使された鉄製品です。素材までは私が整えましたが、その先には進めず、途方に暮れていました。
　それを実現してくれたのが愛知県名古屋市の有限会社『ノヨリ』の２代目野依克彦さんと３代目佑月さんでした。まずは隕鉄を削り、細かな加工ができるのかどうか、そして細かな加工を妨げるような隕鉄内の傷や不純物がないのかどうか、話し合いを行いました。アルゼンチンのカンポデルシエロ隕鉄は、そのときばかりはどう加工しても細かな傷、亀裂から免れることはできませんでした。しかし野依父娘には挑戦してみましょうと夏前に隕鉄素材を受け取っていただきました。そして昨日、完成品が大学に送られてきました。
　本日手にして言葉が出ませんでした。その美しさと隕鉄への加工が可能であったことに驚きました。今後、野依さんへの聞き取りや使用された道具の調査も必要となります。
　私の感動を本日中に支援者のみなさまと一刻も早く共有したく速報させていただきます。