ハーバード歴史学者による「明治維新と水戸の物語」

M-HISTORY支援者へのメッセージ
ソントン・マイケル
４月20日
ニューヨーク市ブルックリン

研究と執筆を続けてきて2年間が経った今、やはりM-HISTORYに取り組み始めたは水戸についての知識はほんのわずかだったと認めなければなりません。江戸と水戸との関係、水戸学者の多様性、水戸藩の社会構造など、水戸の歴史は思ったより複雑で興味深いです。残念ながら研究は興味深くなるほど、時間が費やしてしまうので、執筆期間がどんどん伸びてきてしまいました。

執筆を始めた時、自分の専門である「都市史」を視点にして水戸城下町を本の中心にしようと思いました。城下町の歴史で水戸の社会の全体像を把握できると思って、それに１９世紀日本の劇的な歴史を少し「離れた」地域から見てみれば、外国人には日本列島の多様性を紹介できるかな、と思いました。

しかし、アメリカの出版社と相談したり、水戸の方々と話したりすると、本の構造を完全に考え直す必要が明らかになりました。日本にはあまり詳しくない外国人にとって、聞いたことがない「地域」よりは、人間的に共感を覚えられる「人」のストーリーが興味を惹く可能性が高い、と納得しました。

そのため、去年9月から、水戸の歴史上の人物を八つ選んで、それらの「ストーリー」を中心に新しい研究と各章の書き直しに努めてきています。最近のコロナウイルス感染拡大で勤め先のイェール大学は完全に閉鎖してしまい、研究室や図書館が利用できない状態ですが、4月上旬、原稿を書き上げる予定です。

研究過程で色々な面白いことを発見しました。最近、１８５０、６０年代が研究のフォーカスで、その時日本に滞在していた外国人（外交官など）の史料を読んでいます。気になったのは、その外国人が「攘夷」運動が発達していたことを心配していたが、水戸の役割や水戸の政治家、志士などの活動については、ほとんど知らなかったそうです。その時代以降、外国で語られた日本の幕末維新期の歴史は、この史料を基礎にできたもので、水戸が比較的に軽視されたことも、史料の限りによることではないかと、考えさせられました。

これからも、M-HISTORYの支援者をはじめ、水戸の方々からコメントやご指摘をいただければ幸いですので、近いうちにセミナーが開催できるよう祈っております。引き続きよろしくお願い申し上げます。