【第10弾】歌舞伎や映画､フィルムがつないだ記憶を遺す。

お早うございます。松竹大谷図書館の武藤祥子です。

 

プロジェクトも29日目となりましたが、連日温かいご支援と当館の活動に対する応援コメントを頂きまして、クラウドファンディングの業務とは別に、日常業務で地道に年間7,000～8,000点の新規資料の整理を担当しているスタッフのモチベーションも上がっております！現在165名の方から、1,849,000円のご支援を頂き、目標金額まであと651,000円となりました！引き続き皆さまの温かい応援をお願いいたします！

 

さて、今回のプロジェクトでも、1万円以上ご支援下さった方には、スタッフ手作りの、台本を保護するカバーにお名前を記載するというリターン(お礼)をご用意しております。台本カバーに支援者として皆様のお名前を刻み、当館の書庫でずっと台本を見守って頂きたいという思いから始まったお礼ですが、当館の所蔵資料をご紹介する、よい機会でもありますので、これから何回かにわたって、作品リストにある台本をご紹介してまいります。

 

※台本カバーの作り方については、こちらをご覧ください。
【「年間1,500冊以上」を整理！台本を保護するカバーの作り方動画】

 

まずは、【歌舞伎・新派・松竹新喜劇台本リスト】より、令和２年11月より令和3年1月までの台本をご紹介します。

 

 

11月歌舞伎座は「吉例顔見世大歌舞伎」です。歌舞伎座の座紋の鳳凰丸が染め抜かれた櫓が正面に上がる毎年恒例の顔見世ですが、四部制形式で公演が行われました。市川猿之助の五役早替りによる舞踊劇『蜘蛛の絲宿直噺』に始まり、『新古演劇十種の内　身替座禅』、義太夫狂言の名作『一條大蔵譚　奥殿』、そして『義経千本桜　川連法眼館』では、かつて十八世中村勘三郎に直接指導を受けた中村獅童が17年ぶりに佐藤忠信と源九郎狐を勤めました。
国立劇場は二部制形式での上演でした。第一部『平家女護島　俊寛』は六波羅清盛館からの上演で、中村吉右衛門が清盛と俊寛の二役を勤めました。第二部『彦山権現誓助剱　毛谷村』は片岡仁左衛門の毛谷村六助、続いて舞踊二題『文売り』『三社祭』は若手俳優による爽やかな舞台でした。

 

11月には新派と松竹新喜劇がそれぞれ意欲的な公演を行いました。新派は劇団内ユニットの「新派の子企画　新派な夕べ」と題して、齋藤雅文脚本による新作『八つ墓供養』『湯島の春』他を六行会ホールで上演、期間限定で配信も行われました。

松竹新喜劇は、大阪松竹座８階の通常は稽古場として使われているスペースを特設会場として「若手アトリエ公演」『綱の上の人生』を上演しました。

 

師走に入ると、歌舞伎座は「十二月大歌舞伎」です。舞踊『四変化　弥生の花浅草祭』は四役を片岡愛之助と尾上松也が華やかに踊り抜きました。『心中月夜星野屋』は平成30年に歌舞伎座で初演され好評を博した、古典落語「星野屋」を題材とした作品です。そして、12年ぶりの中村勘九郎と市川猿之助の共演による『傾城反魂香　土佐将監閑居』、坂東玉三郎による日本神話の八岐大蛇を題材とした舞踊劇『日本振袖始　大蛇退治』と、見応えのある舞台が並びました。

12月の国立劇場は第一部に『三人吉三巴白浪』、第二部に『天衣紛上野初花　河内山』と河竹黙阿弥の名作が並び、江戸歌舞伎の大問屋と称された黙阿弥の世界をじっくり味わえる公演となっていました。第二部には他に舞踊二題『鶴亀』『雪の石橋』も上演され、前月に続いて若手俳優たちの溌溂とした演技が繰り広げられました。

 

京都の南座では「京の年中行事　當る丑歳吉例顔見世興行」が三部制形式で行われました。近松門左衛門原作の『傾城反魂香　土佐将監閑居』、中村鴈治郎と中村扇雀の共演は2年前のロシア公演でも好評を博しました。並木千柳原作による源平合戦を題材にした時代物の名作『一谷嫩軍記　熊谷陣屋』、狂言から題材を採った松羽目物の舞踊『末広がり』、そして上方の廓の気分が味わえる上方歌舞伎の代表作『夕霧伊左衛門　廓文章　吉田屋』と、色とりどりの名作が揃いました。関西の大劇場での歌舞伎公演は10ヶ月ぶりとあって、待ちに待った観客の期待に溢れた公演となりました。

 

そして新橋演舞場では、劇団新派による「新派朗読劇場」が3日間4公演にわたって開催されました。川口松太郎や八木隆一郎、泉鏡花による新派の名作を朗読劇として劇場で上演するという試みで、朗読として聞く楽しみはもちろん、舞台として見ても楽しめる公演と好評を博しました。

 

年が明けて令和3年、歌舞伎座は短い幕間を設けた三部制形式の「壽初春大歌舞伎」で幕を開けました。『壽浅草柱建』は、毎年新春浅草歌舞伎で活躍する若手花形俳優が揃い、続いて『猿翁十種の内　悪太郎』は、二世市川猿之助（後の初世市川猿翁）が初演した舞踊劇を曽孫にあたる当代市川猿之助が勤めました。『夕霧名残の正月　由縁の月』は、近松門左衛門の作品を愛し、生涯のレパートリーとして演じた四世坂田藤十郎を偲ぶ一幕です。『仮名手本忠臣蔵　祇園一力茶屋』は歌舞伎の三大名作に数えられる義太夫狂言、そして同じく三大名作の一つ『菅原伝授手習鑑　車引』では高麗屋三代が共演しました。そして『眠駱駝物語　らくだ』は、古典落語の人気作「らくだ」を題材にした演目で、賑やかな舞台がお正月気分を盛り上げました。

 

大阪松竹座の「坂東玉三郎初春特別舞踊公演」は、『お年賀口上』に続いて『賤の小田巻』『傾城雪吉原』と舞踊二題の上演で、様々な趣向を凝らした美しい舞台が大阪のお正月を華やかに彩りました。

歌舞伎座からほど近い新橋演舞場では「初春海老蔵歌舞伎」です。市川海老蔵が初めて自身の名を歌舞伎に冠したこの公演では、成田屋の家の芸『歌舞伎十八番の内　毛抜』他が上演され、千穐楽公演はオンライン生配信もありました。
国立劇場の「初春歌舞伎公演」は『通し狂言　四天王御江戸鏑』です。平成23年に約200年ぶりに復活上演した作品を再構成して上演され、毎年初春公演恒例の菊五郎劇団総出演の舞台でした。
京都南座は元旦より「初笑い！松竹新喜劇新春お年玉公演」で幕を開けました。70年以上の歴史がある松竹新喜劇の演目の中から『二階の奥さん』と『鴨八ネギ次郎』を上演、まさに初笑いに相応しい賑やかな雰囲気に包まれました。

 

毎月の舞台のために作られ、後の世に伝えられていく上演台本には、その時々の舞台の記録が残されています。この大切な上演台本を保護するカバーに、ぜひあなたのお名前を記してみてはいかがでしょうか？

 

次回は、歌舞伎 新派 松竹新喜劇台本作品リストご紹介2として、令和3年2月から6月までの台本をご紹介します。