「晩春」デジタル修復プロジェクトサポーターの皆様

 

本日は、デジタル修復の調整作業の様子をお届けしたいと思います。

 

 以前にも、新着情報に上げましたが、シネリック社の修復確認の為の部屋は真っ赤な椅子が特徴的です。写真右側の方が、今回のグレーディング作業を主に担当して頂くダニエル・ドゥ・ビンセントさんです。目の前にある機械はグレーディングには欠かせないもので、映画作品を丸ごと4Kという大きなデータとして取り込んでいます。

 

 

 

 作業の進め方は、その担当者によっていろいろあるようですが、今回は以下のように進めました。

 

① プレグレーディング(一次調整)の済んでいる本編の鑑賞。

② 全てのシーンを止めながら明るさや画調などの細かい調整。

③ 一度調整したシーンと同じ箇所の明るさ、画調を整える。

④ 全体を通して再鑑賞。

⑤ 調整をいれた各シーンを再調整。

 

 今回の主な作業は、グレーディングと呼ばれている色調、画調、明るさなどの調整で、写真のような傷消しや、揺れなどを止める作業は終わっていました。

左の写真は修復前のもので、大きな傷が見えると思います。写真ではわかりにくいですが、画面のあちらこちらには無数のパラや傷が存在しています。右の写真ではそれがまったく無くなっていました。

 

 

「晩春」©1949 松竹        

 

 「晩春」は全部で12缶から構成されています。ご存知の方も多いと思いますが、小津監督の作品は、音楽が2つのシーンに跨ることが多く、非常に缶分けをしにくい作品です。音楽の途中で区切ってしまうとノイズが入ってしまいます。
現在はDCP(デジタル・シネマ・パッケージ)と呼ばれている、いうなればハードディスクにデータが記録されているので、缶分けをする必要はありませんが、35mmのプリントはそうはいきません。持ち運びの為に小分けされるのが普通でした。

 

 

 

 「晩春」にはオリジナルの35mmネガは存在しません。当時、可燃性のフィルムは、全て非可燃性のものへ変更しなければならず、このネガからマスターポジプリントやデュープネガが複製されました。残念ながら、これらの素材も失われてしまっている為、今回使用した素材は、その後のジェネレーションのものになります。

その為、フィルムに記録されている情報量に限りがあり、特に暗部の情報に限界があることが分かりました。数種類の素材から、場面場面で良い方を選択し、それらの色味、画調、明るさを合わせていきます。

 

 

 

 このシステムは、非常に優秀で、調整が済んでいる前のシーンを素早く呼び出し、現在のシーンと交互に映写することで、それらの違いを視覚的に、データ的に合わせていくことになります。

 

 映画修復作業の難しいところは、映画修復業界では世界トップクラスのシネリック社でも監督の意図した演出かどうかを判断することが出来ません。今回見せてもらうことの出来たバージョンは、雨のように降り注いでいたキズや、プリントの揺れなどはほぼ取り除かれており、素晴らしい完成度を持ったものでした。しかしながら、取り込んだ素材自体に無い情報を作り出してしまったり、補正をしすぎてしまうことは改編につながる可能性もあり、修復するなかで最も考慮が必要な部分になります。
 

 これらの程度を判断するために、小津組の撮影助手を務められた川又氏と打合せを重ねた近森撮影監督と共に、細かいやり取りをシネリックの担当者と重ねていきます。

 

 

 

 完成は、年を越してしまいそうですが、皆様の元にも良いご報告が出来るよう、現地で最善を尽くして参ります。

今しばらく、おまちください。

 

「晩春」デジタル修復プロジェクト
 

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