日本映画界が世界に誇る小津作品を未来に残す。

「晩春」サポーターの皆様

急に暑くなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
前回の更新からお時間が経ってしまい、大変申し訳ございません。先日、前半部分の修復素材が到着しました。現在、確認作業に入っております。

大変申し訳ありませんが、今後のスケジュールについては調整のうえご連絡をいたしますので、もう少々お待ちくださいませ。

さて、現在、鋭意修復素材の確認作業を進めておりますが、本日はその修復作業のうち、「音声修復」を取り上げてご紹介したいと思います。

修復作業は、フィルムに記録されている音声をデジタル化してから、「ノイズリダクション」を施すという工程を用いる場合があります。

今回の音声修復作業は、ロサンゼルスの音響専門の老舗、角川映画の「羅生門」の修復も手掛けた「オーディオメカニクス社」が担当しており、ロスのスタジオで修復された音声を、小津作品他、松竹作品の音声修復をしている「松竹映像センター」にて監修・確認を行っています。今回は、デジタル修復作業を担当している「松竹映像センター」の五十嵐氏にお話を伺いにいきました。

こちらは、「松竹映像センター」内のダビングステージという部屋です。

この部屋は、通常は新作映画の整音や調音をしている部屋で、デザインを担当したのは、パイレーツオブカリビアンで有名なピーター・グルナイセン氏、壁のウッドパネルは畳のイメージでデザインされたそうです。

これは、音声修復のガイドとして映像を映している写真です。


 

この画像は、音声の音量レベルを表すモニターだそうです。

今回の修復でポイントのひとつとなっているのが、「ノイズリダクション」です。

「ノイズリダクション」とは、決まった周波数のノイズを消す技術のことです。現代は技術が発達して、ノイズを最大限消去したうえで、美しい音が再現できるのですが、逆に、この技術を用いると、当時の音が消えすぎてしまい、奥行きのない、デジタルの音に近づいてしまうのだそうです。

一定の周波数、「サー」というような音は、この技術によって自動的に消せるのだそうですが、「ブチｯ」と切れたような音は、音声データを波形に変換して、手作業で丁寧に消していくのだそうです。気の遠くなるような作業ですね。

今回、このノイズリダクションによる第一回目の修復作業の結果、ある程度聞きやすい音声が完成しました。しかし、「どこまで当時のフィルムの雰囲気を残すか」は、修復の大切なポイントであり、「できるだけ、当時の音の雰囲気を活かして修復する」ことを重視し、現在、再度の修復を試みているそうです。「音」ひとつ取り上げても、関係者の方々の並々ならぬ思い入れと意気込みを感じるエピソードですね。

今回特別に、修復中の映像を公開していただきました。当時はハイカラだったであろう、自転車に乗った原節子さんの名場面です。クリアな映像になって、原さんの美しさがより際立っています。

当初の予定より大幅にお時間がかかってしまい、なかなか皆様にお披露目できないもどかしさも多々ありますが、このような、数限りない調整を繰り返し、少しでも当時に近い映像を再現し、皆様にお届けすべく、鋭意努力を続けておりますので、いましばらくご寛容いただき、引き続きプロジェクトの進捗を温かい目で見守っていただければ幸いです。

「晩春」デジタル修復プロジェクト係