『成長する絵画』展2015は、10日(土)にスタートし、昨日で中間地点を折り返しました。日々、いろいろな方との出会いがあります。以前からこの作品展に関わってくださったり、ご存じだった方、お知り合いから聞いていらっしゃった方、ネットの話題をご覧になりいらっしゃった方……。それも遠方からの方も少なくありません。作品を観てのお気持ちをお話しいただくとき、そこにはその方の大切な、唯一無二の物語があるように思います。私たちにとっても、ありがたい出会いです。

 

たまたま根津を散歩している時にギャラリーの前を通り、興味を持って入っていらっしゃる方も少なくありません。先日は、小さなお子さん──2歳になって1週間だそうでした──をお連れのご夫婦が、そんな感じでギャラリーに入っていらっしゃいました。作品をご覧になり、動画をご覧になり、私たちスタッフとことばを交わし、何度も深く頷いていらっしゃいましたが、ギャラリーの奥に誰でも描くことができる「成長するキャンバス」というのがあるのでお子さんにどうですか…とお誘いしたところ、この子、絵を描くの好きなんですよ、と言いながらお子さんと一緒に描き始めてくださいました。

最初はお母さんがお子さんを抱きかかえるようにして、手を持って筆を一緒に握ったり、一緒に手を動かしたりしていましたが、私たちがお子さんに直接話しかけているうちにいつの間にかお母さんは手を離し見守る側になりました。するとお子さんは、一人でキャンバスの前に立ち、そしてしまいには、何本か提示した筆の中から好きなものを自分で選び、何色かある絵の具から好きな色を自分で選び、それを筆につけると、自分の思うところに筆を動かし描くようになりました。

 

 

この年齢のお子さんと親御さんによく見られることとして、お子さんはパステルなどを手にしてぐるぐると動かして描く“ぐるぐる描き”をし、それを見た親御さんは最初は感心するものの、だんだんと何か“カタチ”になるものを描いて欲しいと願うようになります。おそらく大人の目から“ぐるぐる”は意味のないカタチ、絵に見えてしまい、それが心地良い身体表現の軌跡とは見えないのだと思います。

 

でも、この時は目の前にある「成長するキャンバス」そのものが、なにしろ“大人から見た意味のあるカタチ”をしていないので、大人にとっての意味などあまり価値を感じさせないのでしょう、お子さんの描く1本の線、ひとつの点にご両親は「おぉ…いいね」「すごいね」と心から驚きと喜びが入り交じったことばを仰っていました。その時の彼(お子さんです)の自身に満ちた、また、楽しげな表情は今も私たちの脳裏に焼き付いています。

 

いつも思うのですが、『成長する絵画』展という場にはこんな、おだやかで、ゆったりとした物語が育まれる何かがあるようです。私たちスタッフは長い時間ギャラリーにいますが、こころは何ともいえない平和のうちにあります。

 

さきほどの、ご家族はニコニコ顔で帰られました。帰りがけにお子さんに「描いてみてどんな感じだった?」と聞いてみましたが、彼は恥ずかしいのか、笑顔を見せてくれるだけでことばでは答えませんでした。するとお母さんが、この子は恥ずかしがり屋で今は話しませんが、ちょっと歩き出すと私に、すごい楽しかった! って言うんですよ…と教えてくれました。あぁ、ご両親の深い愛情のもとで日々暮らしているんだなぁ…とあたたかい気持になることができました。

 

『成長する絵画』展2015の残りの日々も、そんな物語と出会えることでしょ。おだやかな空気とゆるやかな時間の中で。

 

 

 

 

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