新時代のがん個別化医療につながる治療標的を探索し、がん制圧の未来へ

私達が理研ジェネシス社と協同開発中であった大腸癌治療のための診断薬が、この度、薬事承認を取得しました。この診断薬は従来の遺伝子変異や遺伝子発現の検査とは異なり、ゲノムDNA上に生じるメチル化（ゲノムワイドなDNAメチル化）の状態を診断する方法で、進行大腸癌に標準治療薬として使用されている抗がん薬、抗EGFR抗体薬の治療効果を診断する検査です。当教室の大内康太助教の基礎的な研究から今回の体外診断薬開発に繋がりました。ゲノムワイドなDNAメチル化状態の診断は、マイクロアレイを用いた網羅的DNAメチル化解析で可能ですが、大内らは切除不能進行または再発大腸癌の腫瘍組織由来のDNAを用いて網羅的DNAメチル化解析を行ったところ、高メチル化群(HNCC)と低メチル化群(LMCC)の２群に明確に分類できること、抗EGFR抗体薬の治療効果（奏効率の無増悪生存期間）の予測と予後（全生存期間）の予測が可能であることがあきらかになりました。そこで、理研ジェネシス社と共同研究を行い、このゲノムワイドなDNAメチル化状態をマイクロアレイを用いた網羅的DNAメチル化解析よりもより簡便な方法により解析出来る方法をEpiLight（登録商標）として開発しました。切除不能進行または再発大腸癌の腫瘍組織かから抽出されたDNAを化学的に処理し、16箇所の特定遺伝子部位のDNAメチル化状態をPCR法により判定する方法です。この方法により簡便でより安価にHMCCとLMCC（前述）を判定でき、従来の原発巣占拠部位による抗EGFR抗体薬の選択方法よりも精度が高く効果と予後を予測可能です。このため日常診療での実用化に繋がりました。

なお、この発表は2024年7月2日にプレスリリースされました。今後、学会の新郎ガイダンスやガイドラインにその位置づけが掲載されるとともに、近い将来、薬価収載されて保険診療ものとで標準的な体外診断薬として使用されるようになることが期待されています。

プレスリリースはこちらへ

https://www.hosp.tohoku.ac.jp/release/press/41362.html