23歳で発症して、いろいろな手術を経験しました。最初は、コア・デコンプレッションといって、骨の外側から大腿骨頭の真ん中に孔をあけて、圧を下げる手術でした。(最近では、この手術がリニューアルされて行われています。再生医療の技術を組み合わせて、骨髄単核球細胞や、幹細胞などを移植=孔の中に入れます。)

 コア・デコンプレッションの後は免荷、つまり、体重をかけないように、徹底して約半年を過ごしました。松葉づえをついて、悪いほうの足を浮かせて=ケンケンですね。腕力は鍛えられましたが、とにかく不便でした。若さゆえ、階段でも、平気で上がり降りしていました。

 体重をかけてもよくなった時には脚はやせ細り、歩き方を忘れたかのようなひどい状態でした。自己流でリハビリをして一番効果があったのは水泳です。市営プールに通い、一日1000メートルを目安にバタ足半分、泳ぎ半分、といった訓練をしました。

 

 その後、約2年。また、レントゲン写真で異常が出てきて、今度は前方回転骨切り術を受けました。手術後は3週間、ベッド上で、足をけん引している生活。排泄も尿器と便器で取ってもらうのは、かなりのストレスでした。そして、徐々に体重をかけていくリハビリをして、杖で歩けるところまで回復してから退院しました。かなり長期間の入院生活でした。

 今は、骨切り手術のときに使う金属が改良されましたので、手術後すぐに患者さんは車いすに乗って動くことができます。ただし、すぐに全体重をかけられるわけではありません。体重をかけられるのはある程度自分の骨を切ったところがくっついてきてからです。

 

 骨切りの後は、本当に通常の人と変わらない生活ができるようになりました。仕事も、スポーツもです。整形外科医の仕事は立ち仕事、力仕事が多く、ハードですが人並みに働けるのはとてもうれしいことでした。もともと大好きだったマラソンも(主治医の先生は気が気ではなかったようですが)再開して、念願のサロマ湖100キロマラソンにも出場して完走しました。

 

 それから20年が過ぎて、子供を連れて、テーマパークに遊びに行ったときのことです。子供が疲れ切ってしまって、「おんぶ」というので、背負って歩いていたら急に股関節に「ぎくっ」という感じの痛みがしました。しばらくすると症状は消えて、普通に歩けたりするのです。

 歩いている途中で、いきなり股関節痛でフリーズ状態になる。これは関節面がうまく合っていないところに体重がかかった時の痛みです。微妙に違う部分に当たれば痛くなく、歩けるわけですね。こんなことを繰り返して、徐々に痛みの出方が頻繁になってきました。

 

 検査と治療を兼ねて、股関節鏡(内視鏡)を受けました。結果は、二次性の股関節症。軟骨が擦り切れてしまった部分と、正常な部分がありました。

 治療は一般的なものです。ヒアルロン酸の注射を何回かしてもらいました。何とかこれで頑張りたいと思ったのですがどんどん痛みがひどくなって、歩いていなくても夜中でも痛むようになり、もう限界かなと感じました。

 

 人工股関節全置換術を、44歳で受けました。手術前に自分の血液を採っておく自己血輸血をしました。手術の翌日にはベッドから離れて自分の足でしっかり立つことができました。嘘のようにあの痛みが消えていたのには我ながら驚きました。手術後一般的には3週間で退院というのが当時の標準でしたが、2週間で階段の上り下りもできるようになったのでその時点で退院しました。

 

 人工股関節の不自由さは、最初は多少曲がりが悪いことぐらいだったのですが、歩く距離が増えるにつれて、股関節の前・内側の痛みが出てきて、伸ばしにくくなってしまいました。腸腰筋という、股関節を曲げる筋肉があります。この腱が、人工股関節の一部と擦れて、痛みを起こしているようだという診断でした。

 仕方ないので、腸腰筋腱を切って、人工関節の長さを少し短いパーツに入れ替える手術(部分再置換術)を、半年後に受けました。これで楽になったのですが、その後、別の難病を発症することになります。

 

 神経サルコイドーシスという病気で股関節を支える筋肉の力が弱くなったのがきっかけで、今度は人工股関節が脱臼しそうになって(亜脱臼)は元に戻る状態になってしまいました。自覚的には痛くはないのですが明らかに変な音がするわけです。金属同士がきしむ音、というのでしょうか。そして戻るときは、はっきりと、「カポン」というのがわかります。

 

 脱臼傾向の原因を確かめて、脱臼させないようにするための再手術を受けました。今度は、人工股関節のパーツを金属対金属からポリエチレン対セラミックに取り換えて、少し長さを長く、角度も調整してもらいました。(部分再々置換術)これでやっと安定した状態になって今日に至っています。

 

 手術方法が全部違うので、同じ股関節なのですが手術の傷あとが手術の数ほど残っています。

 

 身をもって経験したから、手術を受ける患者さんの苦労や不安や、どうしたら少しでも楽に生活できるか、などがそれなりに理解できる。貴重な経験をしたと思っています。

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