「結希」の生い立ちについて

　結希は、神戸市立王子動物園で暮らしているアジアゾウ「マック」と「ズゼ」の子です。この頃よく『なぜ神戸市立の動物園のゾウが千葉県の私立の小さな動物園で出産をしたのか？』とご質問を頂きます。

 

　結希の母ゾウ「ズゼ」は、生後間もなく母ゾウと死別したためか、過去に第1子の子ゾウを死産し、無事出産をした第2子、第3子も育てる事ができませんでした。子ゾウ達は人工哺育で育てられましたが、いずれも残念ながら幼齢で亡くなってしまいました。

　2013年春、神戸市立王子動物園より第4子（結希）妊娠中であったズゼの出産、子育てを当園にてサポートしてもらいたいと依頼されました。正直不安もありましたが、日本産まれのゾウを1頭でも多く誕生させたいという思いが強かったため、お引き受けしました。ズゼは、妊娠15ヶ月の時に来園しました。

　まだ生後1ヶ月だった子ゾウ「りり香」と母ゾウ「プーリー」親子の姿を見せて、育児や子ゾウに対する接し方をプーリーから学んでくれたら、もしかしたら育児をしてくれるかもしれないと考えました。

　ズゼは第2子、第3子共に出産直後に赤ちゃんに攻撃的な行動をしていました。結希出産直後は、お鼻をのばし結希を優しくなでてくれる姿が見られました。しかし、やはり残念ながら「結希」に母乳を飲ませる事はしませんでした。

　ズゼの母乳を搾り哺乳瓶で飲ませても、量が足りません。『お腹すいたよ』『さみしいよ』と1日中さみしそうに鳴く結希のボーボーという声が今でも思い出されます。誕生して30時間後、その声に応えたのは、プーリーでした。生後9か月のりり香も結希を優しく受け入れてくれました。世界でも稀な「乳母」による哺育が実現したのです。

　その後 24時間体制で、ぞう使い2人がプーリーの育児をサポートしました。ゾウの赤ちゃんは、常に母ゾウや仲間のゾウ達と過ごします。母乳を飲みたいときにいつでも飲めて、安心できる環境が一番なのです。

 

　2021年4月、「結希」の体格が大きく成長し、他園への搬出が困難になり始めている為、オスゾウ専用獣舎建設費用の負担及び今後の飼育費用の負担について、当園から神戸市立王子動物園に協議を申し入れました。神戸市立王子動物園は当初、他園への転出を打診されましたが、当園としては「結希」の精神面を第一に考え、話し合いを重ねました。

　その結果2022年4月に、国内アジアゾウの繁殖と保全に寄与するため、動物交換をするとの結論に至り、結希の帰属を「市原ぞうの国」に変更させて頂きました。

 

　「結希」の誕生～帰属変更についてはこちらをご覧ください↓

結希 | 市原ぞうの国・サユリワールド／アニマルワンダーリゾウト (zounokuni.com)

 

　プーリーが育んでくれた「命」を守りたい一心で、約9年間「結希」をゾウたちと共に見守ってきました。将来「結希」が父ゾウになり、命をつないでいく事が当園の目標です。これからもっと大きく成長する結希が、今よりも広くて快適な環境で暮らす事ができる様に、皆様のお力添えを改めてお願い致します。

 

↓2014年に撮影した「りり香」と一緒に安心して眠る「結希」です。