日本国憲法第25条では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と定められています。憲法で守られているこの第25条の「生存権」を「生活保護法」でより具体的に定めています。この法律を受けて、生活保護制度があります。生活を営む上で必要な衣食住の各種費用に対応して扶助が支給されます。今や医療や介護のサービスさえも本人負担なしで受けられるようになっています。

 しかし、名古屋における野宿者の現実はどうなのでしょうか。愛知県内には、確かな数は分かりませんが、野宿を強いられる人は、愛知県内に400名は切らないだろうと推定されます。また、日本での平均寿命は、男性81歳、女性86歳、世界で長寿国と言われています。しかし、野宿者または生活保護受給者の平均寿命は60歳代となっています。それは、過酷な労働を強いられてきて、安らぐことのない日々が続いたせいだと考えられます。

 とりわけ本年度・2017年度にはすでに名古屋で11名の野宿者が路上で亡くなっています。白川公園周辺で移動していた人は餓死しました。中区中橋の下で亡くなられた人は凍死でした。矢田川でアルミ缶を回収していた人は夜中移動中、車にひかれて死亡しました。胃や心臓が悪くても「国の世話にはなりたくない。」と治療を断っていた人も倒れ、救急車の中で亡くなりました。これは、新聞にすら載らない現実なのです。

         ~統計資料 「野宿者を支援する会」代表東岡 牧氏より~

事例1

 67歳男性は、5~6年前からの橋の下で人で野宿していました。行政の職員が訪ねても口をきかなかったのですが、有志団体の炊き出しをしているグループが、雨の日も雪の日も何回も何回も男性を訪ねて熱心に話しを聴いているうちに、ご自分のことを話しでくれるようになりました。そして「本当はこんなところで寝ないで、年金を調べたい!」と言ってくれました。

「じゃ~いつ手続きに行く?」と聞くと「今度またね!」と笑ってごまかしていました。

急に寒くなった12月のある日、その人を訪ねると、冷たくなって凍死していました。

「もっと早く年金手続きすればよかった・・・・・」「昨日の夜、毛布持ってくれば・・・・・・」たくさん後悔しましたが、やりきれません。私達は「野宿者巡回」をやっていますが、本当に野宿している人の役にたっているのでしょうか?と、今も自分に問いかけています。早くに見つけられなくてごめんなさいね。

 事例2

 神社の前にいつもうずくまって座っている40代の野宿している男性がいました。

顔色が悪く「胃が痛い」と言って見えたので、市販されている薬を渡す事しか出来ませんでした。生活保護の中でも医療だけ受けれる「医療扶助」というのがあって、お金がなくても

病院にかかれますよ。と説明しても、軽く笑って「え、いいです。」といわれるだけでした。

その後、その男性の様態が悪化して救急搬送され、胃潰瘍から出血し、腹膜炎をこじらせて

亡くなったと聞きました。病院へ行く、行かないは本人の判断ですが、「どうして行きたくなかったのか?」をもっと丁寧に時間をかけて聞いていけばよかったと、悔やんでいます。

助けられなくて、ごめんなさい。

           ~事例 「野宿者を支援する会」 東岡 牧氏より~

 

 どうして生活保護制度が整備されていながら、このような現実があるのでしょうか。

 野宿者の多くは精神的な問題か知的機能の制約を抱えています。また、彼らには家族がおりませんし、いたとしても、頼りにならない家族です。また、住所も電話も持っていない彼らを雇ってくれる人もいません。仕事に就くことができない厚い壁があるのです。

 かれらの多くは、他人とのコミュニケーション能力に欠いています。自分の困っていることを

訴えて、助けを求めることが難しいのです。彼らに働きかけたとしても、心に傷を持っているために、自分が攻撃されたと思い、相手に罵詈雑言を吐いてしまい、働きかけた人を極端に嫌う場合があるのです。

 彼らの多くは生活保護制度の助けを受けるための申請の手続きを行うことが困難です。なかには、文字の読めない方もいます。コンプレックスもあり自分が相手より下だと思うと相手に頼むことができません。心を閉ざしながら生きていくようになるのです。思考力や感性が低下していることに助けられながら、このまま路上で死んでいくことを覚悟するようになってしまうのです。

 では、彼らの代弁者が生活保護制度の助けが受けられるように申請の手続きを援助してやればよいのではないかということになります。しかし、ささしま共生会やオアシスのメンバーもしていることではありますが、彼らと信頼関係を築き、申請に至るまでこぎつけるということは、非常に狭き門であります。

 野宿者は、昨今、様々な事情で年々増えています。社会的に孤立してしまった人、リストラで失業してしまった人、 職を得られない人、頼るべき身寄りがない人など誰にでも起こり得ることです。

 今の社会福祉制度では十分救われない弱い立ち場の方々の現状は深刻です。野宿者の多くは、再就職を希望しています。しかし、現実は大変厳しく、彼らは貧困との戦いで働く体力や気力までも失われているというのが現状です。

新着情報一覧へ