2024年2月にカワウソの糞が対馬で確認されたことの意味

2017年2月に対馬でヤマネコ調査用に置かれた自動撮影装置にカワウソが最初に映りました。しかし、その後、糞や足跡が見つかっていましたが、2021年はカワウソの痕跡が全く見つからなくなっていました。それが、2022年10月から2024年10月にかけて10回もカワウソのものと考えられる足跡が対馬で見つかっています。ただ、ツシマテンも大きな足跡を残すという話もあり、断定が難しいものもあります。2024年2月に見つかった糞は写真から見るとカワウソのものと断定をして良いと思えるようなものなのですが、より正確さを期すため、DNAのよる判定結果を待っていました。そして、その糞はカワウソのものであるという学会発表が、先日5月17日にされたのです。

　最初の生息確認が2017年2月ですので、ちょうど7年後の生息確認となります。イギリスのシェットランド諸島の海岸にもユーラシアカワウソが生息しており、有名な哺乳類生態学者ハンス・クルーク氏が研究していますが、1歳までに多くのカワウソは死に、1歳まで生き残ったカワウソの平均余命は3.14歳としています。7歳まで生きることは稀と言えます。シェットランド諸島の気候は、対馬より寒く風も強いようですから、対馬ではもう少し長く生きられるかもしれないのですが。

　対馬のカワウソはオスメスが確認されているので、繁殖して生き残っているかもしれません。また、再度、韓国から流れ着いた可能性もあります。私も同意したのですが、環境省は対馬のカワウソは繁殖していないとして2022年度で調査を打ち切っています。この時、韓国で行われているように誘因筏を設置し、受動的な調査を継続することを提案しましたが、採用されませんでした。今回、このような確実な情報が出てきたので、国際シンポジウムの議論などを参考に環境省が動くことを期待したいと思います。

日本アジアカワウソ保全協会理事長　佐々木　浩（筑紫女学園大学名誉教授）