本は心の栄養

みなさんこんばんは。シャンティ国際ボランティア会の神崎です。

 

カンボジア難民キャンプで活動を始めた当時から、難民問題の本質を、民族の文化的アイデンティティの喪失と考えていました。

 

命からがら身一つで祖国を逃れ、難民キャンプにたどり着くカンボジア人が、その先も変わらず持ち続けるもの、それは心に刻まれた、カンボジア人としての民族の誇りや伝統、文化でした。

お話しを大きな声で読んでいきます

 

アイデンティティを維持するために、言語は欠かせません。

しかしカンボジア内戦時、ポル・ポト政権の徹底した焚書政策によって、カンボジア語の図書は大量に失われました。

 

「母国語の読み物が欲しい。」

 

難民キャンプに開設された図書館にやってくる青年や大人、教師たちは、

「子どもたちのためには、カンボジア語の本が必要だ。」と訴えました。

 

シャンティは村々を周り、残っている本をお借りして、お話しを復刻させました。

また、敬虔な仏教国であるカンボジア復興のために欠かす事ができない、重要な「精神の糧」であるカンボジア版仏教経典の復興にも携わりました。

 

ポル・ポト政権時代に徹底的に焼き尽くされたこの仏教経典は、内戦終結後、国内に残っていたのはわずか１セットのみでした。

カンボジア版仏教経典全110巻を1200組、冊数にして13万2千冊を復刻したのです。

スタッフ総出で印刷作業を行います

 

シャンティの出版事業は、今も継続されています。

その土地・民族に伝わるおはなしの聞き取り・収集をしたり、物語りを創作したものを、その国・地域の言語で絵本や紙芝居を出版しています。

 

本として残されることで、以前は口承で語り継がれてきたおはなしに絵と文字が付き、子どもたちが読書に親しむ最初の一歩となっています。

 

2015年は、計18タイトルの絵本・紙芝居を出版し、子どもたちへ届けました。

ラオスで製作された「サンタタモン」カム族の村に伝わる民話　紙芝居

 

食べることで子どもの体が成長するように、本を読むことは子どもの心の成長を促します。

本を読んだり、読み聞かせによる「おはなし」をたくさん聞いたりすることは、楽しい、役立つ、ためになるをこえて、物事に取り組む力や自信、困難に立ち向かう勇気や希望を育んでくれるのです。

 

本を読むことで、子どもたちは字を知る貴重な機会を得ることができます。

字を知ることは、生きるのに欠かせない情報を得るだけでなく、国内外の歴史や文化を知るなど、教養を身につけるのにも役立ちます。

©Yoshifumi Kawabata

 

シャンティでは、こうした「本の力」を「生きる力」ととらえ、子どもが読むための本が不足している国で、絵本や紙芝居を出版しています。

 

本を通じて「学ぶ」のはもちろん、子どもたちは絵本を純粋に「遊び」として楽しんでいます。これが彼らの心の栄養となり、たくさんのこぼれるような笑顔を作っているのです。

 

子どもたちが本を開くことで、彼らの未来が拓けます。

子どもたちが明るい未来を築けるよう、ご協力をお願い致します。