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2023年05月07日 10:39

どのような事に支援金が使われるのか?その一例をご紹介します

今回は、みなさまから寄せられたご支援の使い道について、具体的例をお伝えしたいと思います。ちなみに、この工具箱製作は2022年の輸送費用プロジェクトのネクストゴール分からのご支援で複製が実現したモノです。

 

まずは、なぜこれほど綺麗に修復されたハ号の工具箱だけが弾痕だらけのままだったのか?という疑問にお答えします。今回の修復にあたり、30年以上ポナペ島の風雨に晒されていた4335号の社外装備品は一部を除いて失われていました。実は車両修復時に一番困るのは「欠損部品」です。

 

どんなに錆びていようが、傷んでいようが、オリジナルの形が判れば複製は作れます。しかし「欠損」していると手当のしようが無いのです。そこで、前オーナーのオリバー氏は修復にあたり世界中の博物館や愛好家に渡りを付けて、 部品を収集したり、入手不可能な部品は計測して複製しました。

 

そうなのです!この工具箱はもともと4335号車のモノではなく、米国アリゾナ州米軍射撃場に標的になっていた別の九五式軽戦車から取り外したモノなのです。英国人のオリバー氏からすれば、標的にされていたことも歴史の一部ですし、この工具箱は世界中にも数個(小林調べでは5個程度?)しか現存しません。そこで、安易に修復せずにそのまま取り付けることにされたそうです。

 

2019年英国にて撮影:ハ号の左フェンダー上に取り付けられた工具箱は穴だらけでしたキャプション

とはいえ、実戦経験なく終戦を迎えた4335号車に米軍射撃標的だった車両部品をそのまま取り付けるというのは、当事者の我々日本人からすると複雑な心境であります。また、実務的なお話をすれば錆びは錆びを呼びます。新造されたフェンダーも、貴重な車体部分も錆びさせたくないので錆びたオリジナルは取り外し、複製品を作成することは里帰り後にやるべき作業の一つ目の決定項目でした。

 

穴だらけ&錆だらけとはいえ、貴重なオリジナル部品です。この工具箱はそのままの状態で別途保管展示することにします。

 

工具箱内側には収納工具の固定金具や、固定用の皮ベルトが一部残されています。この写真からでも、金具のリベット留の状況や、皮ベルトの縫製による取付状況がハッキリ解ります。この現物がなければ当時の解像度の低い写真資料からでは、ボルト固定なのかリベット留めなのか判りませんし、工具箱の内部写真は見たことないので、皮ベルトがリベット留めなのか縫製取付けなのかは全く解らないままだったことでしょう。

 

現物を参考にリバースエンジニアリングで、複製品を製作します。鉄板の厚さや溶接方法、リベット留めの状態も可能な限りオリジナルに忠実に復元を進めます。

 

上方から見ると、車体形状に合わせて五角形になっております。この辺の細やかな設計は日本人ぽいところです。アメリカ製ならそもそも車体形状がこんなに複雑にならず、工具箱も絶対に四角形ですね。

 

南京錠を掛ける丁番の逃げ部分も再現。雨水が入らないように工夫されているのですが、工数が増えるだけでやっぱり日本人的な拘りの部分です。米国製なら蓋を一回り大きくするか、贅沢にゴムパッキンを使用してることでしょう・・・。

 

いずれにしろ作業者泣かせの設計で、令和の時代に昭和の鈑金製品の復元作業は選ばれし鈑金工員しか出来ないロストテクノロジーとなりつつあります。

 

オリジナルに忠実に蓋のヒンジや工具取付金具用の穴をあけて仮止めしたところ。プラスねじは戦後の発明なので、当時の製品には使用されていません!リベット留めの前段階の仮止めの状態です。

 

裏面はこんな感じです。今回の複製の肝はヒンジや金具も全て一品製作でオリジナルと寸分たがわぬ形状に復元したところです。ホームセンターで数百円で入手できる似たような形状のヒンジや金具は、大量生産規格品であり、それらを使用すると再現した工具箱は、素人目にも偽物にしか見えなくなるから不思議ですね。

 

さて、問題はここに何がついていたのか?です。

 

実は判りません・・・

 

日本軍戦車の情報は、令和の日本では米軍戦車やドイツ軍より圧倒的に少ないという嘆かわしい現状なのです。また、ご存命の当時の戦車兵の方々にお聞きしても「日常の当たり前」は記憶に残っていないことが普通です(実際に数名の方々にお伺いしました)。私たちも特別な出来事は別として、毎日繰り返される日常は記憶から消えてしまいますよね?

 

だからこそ現物を残すことに意味があると思います。自衛隊の初期装備車両もいまなら工具箱に何が入っていたのかを後世に伝えることが出来ますが、あと10年したら怪しいと思います。当たり前のことを歴史に刻むことの難しさと、大切さを今回の工具箱復元で実感したところです。

 

 

こちらが完成した復元工具箱です。2か月という短い期間にも関わらず、お披露目会に間に合わせて下さった永遠ボディ様に改めて感謝の意を表します。この工具箱の気になる複製金額は、一昔前なら新車の軽トラックが購入できるくらいの費用でした。

 

支援者の方々は、今回の記事をお読みになってその価値をご理解下さると思いますが、知らない人は「高い~!」とか「ぼったくり!」なんて書き込みをしそうですね。そのような方々に出会った際には、支援者様からも丁寧にご説明して頂けるようにお願い致しますm(__)m

 

道楽でコツコツ締め切りもなく作業することと、事前に製作期間と見積もりを出して、納期までに間に合わせる「仕事」は全く別次元のお話です。

 

 

こうして4月16日のお披露目会では、工具箱も新品に置き換わっておりました。お気づきになった方はかなりの目利きですね。

 

この様に、今後も少しづつ歴史の証人ふさわしい状態に近づけるためにご支援頂いた浄財を活用させて頂きます。また、その様子は随時この新着情報でご報告させて頂きます。

 

引きつづき、ご支援とご指導をよろしくお願い致します。

実行者:小林 雅彦

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