プロジェクト終了報告

2017年08月08日

「戦没学生のメッセージ」終了報告

 

ご支援者の皆さまへ
7月30日(日)、皆さまのご支援のおかげをもちまして「戦没学生のメッセージ~戦時下の東京音楽学校・東京美術学校」のシンポジウム、並びにトークイン・コンサートを開催することが出来ました。このプロジェクトにご支援くださったすべての皆さまに、改めて御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

 

シンポジウム「戦時下の東京音楽学校・東京美術学校~アーカイブ構築に向けて」

シンポジウムは午前11時から、東京藝術大学音楽学部内第6ホールで開催されました。われわれの予想を超える260名のお客さまが詰めかける中、東京藝術大学・澤和樹学長の挨拶に続き、吉見俊哉氏(東京大学大学院教授)の司会進行の元、西山伸氏(京都大学大学文書館教授)、佐藤道信氏(東京藝術大学美術学部芸術学科教授)、橋本久美子氏(同音楽学部大学史史料室講師)の3名のパネリストが報告を行い、「学徒出陣」の調査研究の意味、戦時下の記録の状況、アーカイブの役割と可能性など、様々な観点から問題提起がなされました。

お客さまの中にはご親戚、友人を先の戦争で亡くされた方ばかりか、午後のコンサートで取り上げる戦没学生の村野弘二さんの戦友もいらっしゃり、熱心な質疑応答が続きました。戦後72年を経た今なお、戦争の記憶が消え去っていないことを目の当たりにしましたが、一方で、それがいつまで続くのだろうか、決して風化させてはいけないという思いを強くしました。

 

トークイン・コンサート「戦没学生のメッセージ」

トークイン・コンサートはシンポジウム終了後、1時間のインターバルをおいて午後2時から奏楽堂で開催されました。「トークイン・コンサート」というのは、単に曲を演奏するだけでなくお話しを交えて進行するコンサートのことで、私自身が司会を担当し、2部構成全15曲(戦没学生の作品は14曲)が演奏されました。

第1部 戦没学生のメッセージ①~葛原&鬼頭+メッセージ・トーク

コンサートの前半では、葛原守(1922.10.22~1945.4.12)作品として歌曲《犬と雲》(Ten:澤原行正/Pf:松岡あさひ)、歌曲《かなしひものよ》(Sop:金持亜実/Pf:松岡あさひ)、そして無題のオーボエ独奏曲(Ob:河村玲於/Pf:小鍛冶邦隆)の3曲、それに鬼頭恭一(1922.6.10~1945.7.29)作品として《鎮魂歌》(Org:中田恵子)、《アレグレット ハ長調》(Vn:澤和樹/Pf:迫昭嘉)、歌曲《雨》(Mez:永井和子/Pf:森裕子)の3曲が演奏されました。

またトークとして、大学史史料室の橋本久美子先生の「戦時下の「記録」と「記憶」を未来へ」、それに作曲科の小鍛冶邦隆先生の「戦時下の作曲教育」という二つの話が入り、

さらに前半の締めくくりとして、メッセージ・トーク「戦争体験者の声を聴く」が行われました。これは作曲家の大中恩さん(93歳)と洋画家の野見山暁治さん(96歳)という東京藝大の大先輩と現役学生たちが対話する試みで、冒頭、草川宏さんの無伴奏合唱曲《級歌》(Cond:千葉芳裕/藝大学生・卒業生有志コーラス)のメロディに乗ってゲストが登場しました。

最初に野見山さんが終戦直後に描かれた作品が紹介された後、トークが始まりました。ゲストお二人の飾らない発言は、時には会場の笑いを誘い、お客さまにも深い共感をもって受け入れられたようでした。現役の学生たちとの対話も、当初は果たしてかみ合うのか不安もありましたが、学生たちがよく準備をして来ていたので、実りの多いものになりました。そして最後に、大中さんが学生時代に遺言のつもりで作曲したという歌曲《幌馬車》(Ten:澤原行正/Pf:松岡あさひ)が演奏され、第1部が終了しました。

第2部 戦没学生のメッセージ②~草川&村野

休憩後の第2部では、まず草川宏(1921.10.28~1945.6.2)作品として島崎藤村の詩に作曲された歌曲《黄昏》(Bar:田中俊太郎/Pf:松岡あさひ)と《浦島》(Ten:澤原行正/Pf:松岡あさひ)、そして《ピアノソナタ第1番》(Pf:秋場敬浩)が紹介されました。また今回、宏さんの弟さんからお預かりした資料の中に、草川さんの日記があり、その一節も朗読されました。

そして最後に、村野弘二(1923.7.30~1945.8.21)作曲の《君のため》(Bar:田中俊太郎/Pf:松岡あさひ)、《この朝のなげかひは》(Bas:高崎翔平/Pf:松岡あさひ)、《重たげの夢》(Bar:田中俊太郎/Vc:成田七海/Pf:松岡あさひ)、オペラ《白狐》より第二幕〈こるはの独唱〉(Mez:永井和子/Pf:森裕子)の4つの歌曲が演奏され、トークイン・コンサートは幕を閉じました。

コンサートのトリを飾ったオペラ《白狐》では、永井和子先生が狐・こるはが人間・保名に寄せる想いを切々と歌い上げ、会場を埋めた約700名の聴衆が水を打ったように静まり返りました。そして全3幕のオペラでありながら、譜面がこの部分しか残されていないことを惜しむ声があちこちから聞かれました。


ホワイエ等での展示
今回、大学美術館の倉庫の片隅に眠っていた東京美術学校出身の5名の戦没画学生の自画像が、皆さまからいただいたご支援のおかげで、新たに額装され奏楽堂のホワイエに展示されました。また、戦没画学生慰霊美術館「無言館」から、やはり東京美術学校出身の戦没画学生の作品画像をお借りし、奏楽堂ホワイエならびに6ホール前ロビーで繰り返し上映いたしました。

またその他、ご遺族からお預かりした自筆楽譜や日記などの貴重資料、さらに当時の演奏会プログラムや学生たちの生活が偲ばれる写真パネル等、本学の音楽学部大学史史料室と美術学部教育資料編纂室が所蔵するさまざま資料も展示され、多くのお客さまが熱心に見つめていました。なお、これらの写真パネルも皆さまからいただいたご支援で制作いたしました。

 

収支報告(2017.8.7現在)

今回のクラウドファンディングでは、当初の目標金額300万円に対して、それを大きく上回る489万円のご支援が集まりました。そのうち、2,920,000円を7月30日(日)のイベント関連ですでに使用、あるいはこれから使用いたします。

シンポジウムパネリスト、演奏者等出演費………430,000円

舞台技術者、会場整理等スタッフ人件費…………800,000円

自画像額装代、写真パネル製作費等………………700,000円

クリアファイル等リターングッズ制作費…………150,000円

今後に実行する見学会等のリターンの経費………350,000円

チラシ、プログラム等印刷費………………………170,000円

ゲスト等交通費………………………………………150,000円

リターン等郵送代……………………………………100,000円

その他物品購入費……………………………………  70,000円

合計                   2,920,000円
残金の1,970,000円はネクストゴールとして掲げた、継続的な資料調査演奏用楽譜の作成、それに基づく音源制作など、今後のアーカイブ構築の充実のために使わせていただきます。

リターンの発送状況

リターンは、すでにご支援者全員にお送りしたクリアファイル、30日(日)のコンサートのご招待券以外は今後の対応となります。概ね以下のようなスケジュールになりますので、リターンを心待ちにしている皆さまには申し訳ありませんが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。近々、文書にてご案内をお送りします。

3,000円のリターン
・オリジナルクリアファイル(全員)……発送済み

・「藝大アーカイブ友の会」会員証(全員)……9月上旬発送予定

10,000円のリターン

・7月30日(日)コンサートのご招待券……発送済み

・コンサート記録DVD(コンサート欠席の方のうち希望者)…9月中に発送予定

30,000円のリターン

・大学史史料室の解説付き見学会……近日中にご案内、9月9日(土)、30日(土)、10月20日(金)の3回行いますので、ご都合のいい日にご参加ください。

※見学会に参加できない方の「イベントの裏話」はイベント開催のためのプロデューサーの打合せメモをお送りします。

50,000円のリターン

・演奏藝術センター主催コンサートにご招待……近日中にご案内、9~11月に奏楽堂で行われる演奏会のうち、演奏藝術センター主催の7公演が対象となります。

100,000円のリターン

・大学史史料室の特別なコンサートにご招待……近日中にご案内、11月23日(木・祝)開催予定です。詳細は決まり次第改めてご連絡します。

 

今後の計画について
7月30日(日)のイベントは終わりましたが、これはあくまで通過点に過ぎません。このプロジェクトにゴールはないとも言えます。ネクストゴールとしてお約束した、演奏用楽譜の作成、音源制作など、これからも引き続き我々の活動を見守っていただきたく、応援のほどよろしくお願い申し上げます。

東京藝術大学演奏藝術センター 大石 泰