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戦没学生の音楽作品よ、甦れ!楽譜に命を吹き込み今、奏でたい。

大石 泰(東京藝術大学演奏藝術センター)

大石 泰(東京藝術大学演奏藝術センター)

戦没学生の音楽作品よ、甦れ!楽譜に命を吹き込み今、奏でたい。
支援総額
4,890,000

目標 3,000,000円

支援者
263人
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2017年06月09日 18:02

「無言館」ふたたび~橋本久美子先生の手記

ネクストゴールへの挑戦を始めて以来、3度目の新着情報です。前々回の新着情報で信州上田にある戦没画学生慰霊美術館「無言館」を訪問した際の印象をご報告しましたが、それからほどなく同館を再訪することになりました。やはり大学史史料室の橋本先生と一緒でしたが、今回の新着情報は、その橋本先生のレポートをお届けします。

音楽と美術の違いを踏まえ、今回のプロジェクトが、音楽版の無言館となりうるかを考察した興味深い内容です。少し長くなりますが、ネクストゴールとして私たちが何を目指しているか、ご理解いただく上の参考にもなりますので、是非お読みください。(大石泰)

 

「無言館」ふたたび〜第二十回「無言忌」(6月4日)を訪ねて〜

                        大学史史料室 橋本久美子

◆無言忌

無言館の開館を待つ人たち

 小鳥のさえずりと穏やかな陽ざしに包まれ、「無言館」は第二十回「無言忌」を迎えました。平成9(1997)年5月に開館した「無言館」は6(ム)月5(ゴ)日にちなみ6月第一日曜日を「無言忌」とし、ご遺族の集いを催してきました。しかしご遺族の高齢化に伴い、今後はより広く一般の方々の集いにしていくとのこと。早朝より全国からご遺族170余名が集い、再会を喜び合いました。

 式典は11時より「無言館」前庭で始まり、野見山暁治理事、窪島誠一郎館主、ご遺族代表等のご挨拶があり、近年の日本の情勢への懸念や、「無言館」を継続していく課題にもふれられました。続く上田グローリア合唱団の演奏で締めくくられ、午後は建物反対側の庭で懇親会となりました。演奏曲目は「あなたを知らない」(窪島誠一郎作詞・小山章三作曲)、唱歌「ふるさと」、「さようならの歌」(小山章三作詞・作曲)でした。

「あなたを知らない」https://youtu.be/KWabjDghIss

 取材攻めの窪島館主に、間隙をぬって大石泰先生とご挨拶にあがりました。音楽の戦没学生の記録・記憶の方法を「無言館」に学びつつ探っていると申し上げると、曰く「こういう事は狂人でないとできない」。全国のご遺族から作品をお預かりして慰霊美術館「無言館」を作るには、常識を越えた情熱と行動力が必要だったのだと教えられました。

挨拶に立つ窪島誠一郎館主
「無言館」設立に尽力した画家・野見山暁治氏

◆「無言館」の画学生のメッセージ

 あらためて作品を拝見しました。丹念に描き込まれた人物画は、描き込む描き手の眼差しと絵筆の動きを次第に現前させます。モデルの存在の核を探り出し、描き出そうとしながら、自分自身の生の証を描き込み、刻印しているようでもあります。湾から水平線へと広がる海辺の風景では、波立つ海が、何か地底から湧き上がって来るエネルギーを捉えています。それらの絵は、作家が描きたかったこと全てを表現していないかもしれませんが、描くことが好きで、ずっと描いていたい、もっと描きたい、という思いに溢れ、描くことに懸ける情熱が見る者を圧倒します。

戦没画学生の名前が刻まれた「記憶のパレット」

◆戦没音楽学生のメッセージ

 ご縁のあった4名の戦没学生の手稿譜に接してきました。彼らの楽譜のなかには、すでに音楽が頭の中で完成していて、それをすらすら書きつけたように見える譜面もあります。その一方で、書くべき音を苦闘しながらえぐり出し、響きを探しながら書き進んでいるような譜面もあります。また書かれた音符は定型的でも、作曲者はそこで自らを鼓舞するような情熱的な音楽に浸っていたのではないかと想像させる譜面もあります。いったん清書したあとで考え直したのか、脇に別の音符を書き加え、時には二通りの旋律や和音が書き並べられ、作曲者の中では決着が付いていたのか、まだ推敲途上なのか判然としない場合もあります。

 今回の演奏会で取り上げる草川宏さんや葛原守さん等、昭和15年に予科に入学した男子は22名(女子30名)ですが、同期生には畑中良輔(声楽、指揮や評論でも活躍)、田村宏(ピアノ、室内楽でも活躍)、中田喜直(ピアノ、「夏の思い出」「雪の降るまちを」等の愛唱歌)等、戦後の音楽界に輝いた方々がいらっしゃいます。すこし前後の学年に広げると、中山悌一(声楽、二期会を結成しオペラ界に貢献)、園田高弘(ピアノ、早期音感教育で有名な父・園田清秀より教育を受け、小学校、中学校ともに飛び級して15歳で予科入学、演奏・教育・楽譜校訂等に功績)、岩井直溥(なおひろ)(ホルン、戦後はジャズ、ポップスに転じ、数々の吹奏楽編曲)、萩原哲晶(クラリネット、「いい湯だな」「スーダラ節」などクレージー・キャッツの一連のヒットを支え、ポップスの世界で活躍)など。そして作曲には、昭和17年入学の大中恩、團伊玖磨、芥川也寸志、島岡讓、昭和18年入学の斎藤高順(小津安二郎監督映画では「東京物語」など7作品の音楽、行進曲「ブルーインパルス」等の作品、航空自衛隊航空中央音楽隊長)、昭和20年入学の黛敏郎、矢代秋雄等です。

 7月30日には演奏曲目の楽譜原本も展示する予定です。音符の濃さ薄さ、ペン書きか鉛筆書きか、筆致やちいさな書き込みにもお目を留めていただき、それぞれの個性を見つけていただければ幸いです。

 

◆「戦没画学生」と東京音楽学校の戦没学生

 「無言館」は「戦没画学生慰霊美術館」と銘打っています。しかし作品に添えられた説明を見ていくと、必ずしも狭義での画学生に限定されていません。美術学校に学ばなくても、画学生の作品と並べて遜色のない絵が描かれていれば、帝国大学の学生の作品や、別の職業に就いて描き続けられた作品もあります。無言館での展示を希望されるご遺族が作品の寄託を申し出たケースです。また戦地で罹病して帰国し、戦後数年経って病死された方も含み、享年は21歳も38歳もいらっしゃいます。戦争がなければ亡くならなかっただろうと考えられる方々がゆるやかな枠組みで受け入れられているのです。

 一方、東京音楽学校について、昨年から始まった調査は、もともと戦没学生の調査が目的ではありませんでした。学内文書に基づき、在学中に召集された学生の調査が主目的です。年齢も大半は20歳代前半です。音楽学校の戦没学生の調査に向かうのは、この先の課題で、全容解明は至難と見られます。いろいろなきっかけでご遺族とつながりを持つことが出来た方々の作品が今回の演奏会で取り上げられるのです。

 

◆音楽学校の学生の大半は演奏家志望

 東京音楽学校では大別して、予科から本科に進み、演奏や作曲を専門とするコースと、教員養成の甲種師範科がありました。定員は男女併せて各30名。予科〜本科の大半が声楽部と器楽部、すなわち演奏家志望で、作曲部は1割弱です。ほとんどの学生は作品をのこしません。葛原守さんのように作曲科以外で作曲する学生は、少数です。

 作品をのこさない音楽学生を記録し、記憶にとどめるには、まずは在学中の形跡をたどり、演奏実績や演奏曲目の記録をまとめることでしょうか。ご遺族からのご協力がいただければ、写真、レッスンに使用した楽譜等がご本人の実像に近付く貴重な手掛かりとなるでしょう。

 

◆音楽の“無言館”はあり得るか?

 「戦没学生のメッセージ」にご支援くださった方の中には、「無言館」のようなイメージを音楽学部に託された方もいらっしゃいます。じつは「無言館」が開館した直後ぐらいから、「音楽にも無言館のようなものがあっても良いのではないか?」という声が『東京芸術大学百年史』を編集していた私の耳に届き始めました。それから20年後の調査開始です。「無言館」がご遺族のご協力によって成立したように、卒業後や応召後のことはご遺族からの連絡を頼みとせざるを得ないでしょう。

 作品についても、美術学校では卒業制作を保管してきましたが、音楽学校では異なります。作曲のレッスンでは、学生の書いた楽譜に対して、教師はチェックを入れ、助言や課題を書き込むなどしますが、楽譜は学生が持っています。学年末や卒業時の作品も学生に返されますから、作品収集にはご遺族とのつながりが必須です(現在は優秀作品の買上が行われています)。

 では、集まった楽譜はどうすれば良いでしょうか。楽譜を展示してキャプションで悲惨さを伝えるだけではなく、演奏できる作品は演奏し、彼らが生み出そうとした音楽に私たちが傾聴し、何かを感じ取ることでしょう。戦没画学生の絵画と同様、彼らの楽譜に対しても、もっと書きたい気持、書きたかった音楽を受け取り、遺された音符については教育や学術研究など多様な角度からアプローチし、伝えていくことが必要でしょう。

 

◆「音なき音」「声なき声」のアーカイブ

 「無言館」のような展示館や記念館を建てることはできなくても、戦没学生を記録・記憶から消さないための受け皿を作ることは可能でしょう。楽譜やノート類その他、一時借用してデジタル化と資料に関する情報(メタデータ)を保管し、蓄積し、適切に公開活用することができます。前途多難ですが、「無言館」の存在を開館から数年後に知ったご遺族から、さらに数年後に申し出があった事例などは希望をもたらします。「巡回展」もヒントになります。戦没学生が還ってくる場所、憩う場所を用意し、ホームページ等で発信し続け、情報提供と資料収集に備えるのです。

 音楽学校生の1割未満に過ぎない作曲の学生の僅かな遺品をもって戦没音楽学生の代表とすることはできません。演奏家を志した方々や師範科の方々についても、生きた証を少しずつ甦らせる試みが必要でしょう。

戦没画学生のご遺族を前に挨拶する安斎育郎氏

 「無言忌」でご挨拶された立命館国際平和ミュージアムの安斎育郎名誉館長にあとでお話をうかがいました。約3000人の学生を戦地に送った立命館大学では、平和創造の主体者を育むことを目的に同ミュージアムが設立されました。展示・収蔵・ホールなどを備えたミュージアムは、本プロジェクトにとって規模などは全く参考になりませんが、戦没学生に関する情報や資料を蓄積し活用し発信していく理念と方法においては参照すべき点があるように思います。

 大学では、戦没学生や戦没者の在籍を確認してほしいという依頼をご遺族から受けることがあります。しかし、ご遺族が東京音楽学校の学生もしくは卒業生と信じていらっしゃるにもかかわらず、どうしても確認できない場合があります。そうした情報もひとまず保管し、他大学と連携しながら継続調査する、そうした受け皿も必要になってくるでしょう。

 

◆「戦没学生のメッセージ」からの出発

 −−記録からも記憶からも消えていた方々の帰校に向けて−−

 同窓会名簿には、戦争末期頃が没年月日となっている若い方々がいらっしゃいます。卒業者名簿にも同窓会名簿にも記録されず、記憶からも消えていた方々がいらっしゃいます。これらの方々について、いつか判明するかもしれない一縷の望みをアーカイブに託しましょう。一昨年の大学祭(藝祭2015)に、宮田亮平前学長(現・文化庁長官)が大学史史料室の資料展に立ち寄ってくださいました。「出陣学徒」の調査を始めたと申し上げると、その後の難航を見越されてか「ご遺族を探し出すことにこだわらなくて良いよ」と言われたのは救いでした。まずはできることを行い、「消えていた方々」がご縁あって帰校される時に居場所があるよう、方途を探って参ります。

 

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リターン

3,000円(税込)

【戦没学生の音楽史料を未来へ:アーカイブ化を応援】

♦演奏藝術センターから感謝の気持ちを込めて御礼状
♦オリジナルクリアファイル
♦「東京藝大アーカイブ友の会」会員証(会員番号付き)
アーカイブ活動の精神的なバックアップを担っていただきます。
会員様には今後のアーカイブ活動の報告を適宜配信いたします。

支援者
68人
在庫数
制限なし
発送予定
2017年9月

10,000円(税込)

【戦没学生の音楽作品に命を吹き込み、彼らのメッセージをお届けします】

3,000円のリターン(①御礼状、②オリジナルクリアファイル、③「東京藝大アーカイブ友の会」会員証)+
♦コンサートの音源データ または、コンサートにご招待いたします。
*2017年7月30日(日)開催。詳細は、プロジェクトページをご覧ください。

支援者
150人
在庫数
制限なし
発送予定
2017年9月

30,000円(税込)

【アーカイブ研究の舞台裏をお楽しみください】

10,000円のリターン(①御礼状、②オリジナルクリアファイル、③「東京藝大アーカイブ友の会」会員証、④コンサートの音源データ または、コンサートへご招待)+

♦大学史史料室の解説付き見学会(1回の人数制限あり)*日時は別途調整いたします。
ご参加いただけない方には、イベントの裏話(たとえば、楽譜はあっても演奏会で取り上げない曲についてなど)をデータでお送りします。

支援者
27人
在庫数
制限なし
発送予定
2017年9月

50,000円(税込)

【演奏藝術センターのコンサートをお楽しみください】

30,000円のリターン(①御礼状、②オリジナルクリアファイル、③「東京藝大アーカイブ友の会」会員証、④コンサートの音源データ または、コンサートへご招待、⑤大学史史料室の解説付き見学会 または、イベントの裏話(たとえば、楽譜はあっても演奏会で取り上げない曲についてなど)をデータでお送りします。)+

♦当日のコンサートプログラムにお名前を掲載(ご参加いただけない方には郵送いたします。)、さらに演奏藝術センター主催のお好きなコンサートに3回までご招待いたします。

支援者
17人
在庫数
制限なし
発送予定
2017年9月

100,000円(税込)

【大学史史料室が提供するスペシャルなコンサート】

50,000円のリターン(①御礼状、②オリジナルクリアファイル、③「東京藝大アーカイブ友の会」会員証、④コンサートの音源データ または、コンサートへご招待、⑤大学史史料室の解説付き見学会 または、イベントの裏話(たとえば、楽譜はあっても演奏会で取り上げない曲についてなど)をデータでお送りします。、⑥当日のコンサートプログラムにお名前を掲載)、さらに演奏藝術センター主催のお好きなコンサートに3回までご招待+

♦大学史史料室の貴重資料を活用した特別なコンサートにご招待。

支援者
10人
在庫数
制限なし
発送予定
2017年9月

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