こんばんは。下吹越です。

 

8年前、私は階段から落下し脊髄圧迫骨折をしました。 全介護でした。

 

天井を向いて寝ているだけでした。

 

食べることも、排泄することも、背中を掻くことも一人では何一つできませんん。部屋の一部になったような気がして壁の気持ちがわかるようでした。

 

それでも手と口は動くので、仕事を始めました。 当時、図書館発行の文芸誌の校正に追われていました。 カーテンで仕切られた同室のおばちゃんが「あんたはなにをカシャカシャ音をさせてるのね?」と原稿用紙をめくる音を聞いて声をかけてきました。

 

「文芸いぶすきと言って、指宿市民の方々の書いてくれた物語を確認しているの」と、話すと「どんなことが書いてあるのね?」と言うので「読もうか?」と言うと「うん、読んでごらん」と言うので、読み始めました。

 

おばちゃんは、「いいねぇ、指宿の人がそんなことを思ってるんだね。」と泣いたり笑ったりして聞いてくれるようになりました。

 

数日経ち、おばちゃんは部屋を変わりました。その時、初めてお互いの顔を見ました。おばちゃんも寝たきりで動けなかったからです。

 

その時、おばちゃんは「あんたが毎日読んでくれたおはなしのおかげで寝たきりも辛くなかったよ。ありがとうねぇ。あんたの声はいいねぇ。むかしむかし、おっかさんに話してもろた時のごっあった。また会うがね。がんばんなさいよ。」と声をかけて涙ぐんでいました。

 

それから、私は座れるようになり、車いすに乗れるようになり、つかまり立ちできるようになり、歩けるようになりました。

 

歩けるようになると私は本を胸に抱き、各病室を回り朗読をするようになりました。朗読を聞いてくれた人は、笑うようになり、考えるようにり会話が生まれてきました。

 

図書館から団体貸出で本を持ってきて病室文庫を始めました。自分の部屋に持って行き本を読む人が増えていきました。看護師の人たちが、病室が明るくなったと言い始めました。

 

私が退院する前日、婦長さんが「どんなに薬や医学が進歩しても、人が自ら自分の病を治そうとする気持ちがなければ病気は癒えないのよ。本当は、こういうことが病院にはとても必要なジャンルだと思うのよ。これからも時々来てくれない?」と。

 

図書館で待っていてもその人は来ないと思うようになりました。だったら本のある空間を、そこで奏でるきめの細やかなコミュニケーションを楽しんでほしいと願い走るブックカフェにしたいと思いました。