危口がクラウドファンディングだなんて糞ダサい。 
ていうか奴のよくわからない潔癖性からして絶対受け入れなかった方便ではないか。それとも流行り物に目配せしていた奴ならではのこと、すんなり受け入れているのかも。じゃあ、お前は何故賛同人になってるのかって?それは金森さんから依頼のメイルを直接もらったから。俺と危口の接点は金森香さんだった。金森さんは昔リトルモアという出版社に居たことがあり、その出版社から発売されたばかりの千松信也さんの著書『ぼくは猟師になった』を読んで感銘を受けたことを伝えたところ、それは危口の妹さんの旦那さんだと教えてもらい軽く目眩がしたことを覚えている。こうして憧れの千松さんの親戚である危口ってどんな男でどんな作品を作っているのだろうという遠回りの入り口から危口の公演に通うことになり、俺のイベントにも見に来てもらうような間柄になった。それから韓国や浅草で一緒に仕事をし、プライベートでも遊んだ。浅草のイベントでは帰りの足がなくなった危口や他の出演者、スタッフと一緒に小汚いカプセルホテルに泊まった。正確に言うと四畳半の一部屋だけ空いていて、あとはカプセルしかなかった。一応プロデューサーなんだから四畳半の部屋に泊まってくださいよ、とかなんとか皆んなに言われていい気になって部屋に入ったものの四隅に業務用消臭剤がドンドンドンと置いてある、2、3人は逝っちゃってるだろうと思われる部屋で百円入れると一時間は見ることができるテレビを仕方なしにぼおっと眺めながら一睡もできずに朝を迎え、搬入物体のバラシに立ち会った。危口のことを思い出すとあの部屋の匂いが脳内に立ち込める。もしあの世というものがあるのならあれぐらい素っ気ない四畳半の部屋みたいなもんなんだろう。彼は最初に会った時からこちら側の世界に、この現実に居ずらそうな目つきをしていた。 いずれ我々だってこの肉体は消滅する。それが明日か5年後か10年後かぐらいの違いに過ぎない。 
 
小沢康夫

 

「CE QUI ARRIVE 2011」-これから起きるかもしれないこと-

 

韓国ナムジュンパイク・アートセンター 
新着情報一覧へ