皆様、温かいご支援誠にありがとうございます。プロジェクトリーダーの海部です。これだけの短い期間で、こんなにもたくさんのご支援、応援の言葉をいただき、ただただ感謝しかありません。心よりありがとうございます。

 

今日は、「本番」の漕ぎ手監督であり、第一人者として日本のシーカヤック界を牽引し続けている内田正洋さんに、「漕ぎ手からみたプロジェクト・世界」をお伺いしました。現場を未だ直接見たことがないプロジェクトのクラウドファンディング事務局のスタッフが、皆様と同じ目線からお話を伺いしましたが、内容は大変興味深く、非常に面白いインタビューでした。是非ご覧ください。

 

内田正洋。1956年長崎県大村市生まれ。海洋ジャーナリスト。

 

「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」との出会い

一 内田さんがシーカヤックを始めた時期と、このプロジェクトとなぜ関わることになったのか、そのきっかけを教えてください。

 

シーカヤックを始めたのは、1987年。海部先生とは、このプロジェクトが始まる相当前にハワイで出会ったのが初めてで、その後、2007年ハワイから日本列島に向かって、風の力のみで動く古代式のカヌーがやってくる「ホクレア号航海プロジェクト」でも一緒になって。

 

「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」の本当の始まりは、新橋の居酒屋で(笑)。飲みながら海部先生から「旧石器時代の航海」について問われて、「縄文より昔は、全くの闇です」と答えたんです。旧石器時代の航海は、想像を遥かに超える世界が広がっている可能性がある。そして、絶対面白い!そう語らい合いました。

 

2016年「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」。与那国島の西崎の下を漕ぐ。日本の最西端の海。テスト用で作った草束舟。この後に2艘の草束舟を作った。沿岸の潮流に翻弄されていた。(写真提供:内田正洋さん)

 

「海気」を読む。海上実験中は必ず砂浜で寝泊まり

一 私が初めて内田さんと直接お会いした、プロジェクト記者発表時、「海気(かいき)」について語っていたのですが、とても興味深かったです。

 

「海気」は、辞書にはまだ残っていますが、ほぼ死語になっている言葉ですね。でも、自分たち漕ぎ手は「海気」といえば分かる。(※【海気】かいき:① 海の気。海辺の空気。 ② 海洋と大気。)

 

僕らは、生活の中で常に「海」のことを考えている。海上実験の際、一日もホテルに滞在しないで、砂浜にテントを張って寝泊まりする。そうすると、海の変化が分かるようになってくる。測定機器や天気予報ではわからない、微細な変化を感じ取ることが必要だから。そうすると「共通の感覚」というか、メンバー同士が「海気」を軸に会話をできるようになる。

 

実験中は、ずっと浜でテント生活。そうすることで海の気が近付いてくる。こんぴらさんの海上安全旗を掲げ、風が落ちるのを待つ日々もあった。

 

一 自然が豊かなところで育った人は「雨が降るのが匂いで分かる」って言う人もいて、私もそうなんですけど、そんな感覚なんでしょうか。

 

潮の感じが違うとか、肌で感じる空気の感触、大体わかりますよ。それが普通。基本的にキャンプしながらツーリング(海旅)するのが僕らの仕事で、「自然」の中で生活する、それがもう通常の状態なんだよね。

 

 

現代は、あまりにも色んなコト(文明)に囲まれて生活している

一 内田さんたちは「古代人」に相当近い感覚を持っているのかもしれないですね。

 

現代は、あまりにも色んなコト(文明)に囲まれて生活している。自然と触れ合わないで生きていけるように、世界が、社会が、作られている。

 

7年前の2011年3月11日の震災をはじめ、今回の西日本豪雨の水害も非常に大変な事態になってしまって、一刻も早い復旧を願うばかり。僕自身も、熊本地震では実家が全壊しました。やはりこの列島で生きる者すべてが覚悟しておかなきゃならないのが、自然災害への対応。海に囲まれた島国で、これからも海(自然)と共に生きていかねばならない。

 

「自然災害等に対応する」ということも含めて、我々の仕事があるというか、「アウトドア」というのはそういうことなんですよ。現代は、色んなものに守られて人々は生きていますけど、僕らは、自然災害による緊急事態、キャンピング、食料の確保そして環境について、応急処置など、「生き残るための術」を知り、冷静でいられるからこそ、そういった意味での、今の時代における自分たちの役割もあると思います。

 

※現在、僕の所属する「アウトドア義援隊(株式会社モンベル)」では、「『平成30年7月豪雨』災害援助金」を受け付け中です。

(URL:http://about.montbell.jp/social/support/od_gientai/

 

 

「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」の課題

一 今回のプロジェクトについて具体的に伺いたいと思います。今残っているプロジェクトの課題について教えてください。

 

台湾のスタート地点は1000m以上の山脈があって、海がいきなり2000mくらい深くなるんですよ。3000mくらいの崖っ縁みたいにそこが存在している。そこから出航して行く。しかも、黒潮が横から入るから、何が起こるのか未知数ですね。日本にはそこまで高い山があまりないんで、不思議なところですね。

 

一 その地形はネックになる?強みになる?利用して行く方法があるのでしょうか?

 

それを今から考えるってところですね。3万年前の人が、この地形を理解していたとしたら、彼らも戦略的なことを考えたと思う。だけど、もちろん、もう彼らからは教えてもらえないから(笑)。彼らが試行錯誤した内容は我々にはもう残っていない。 ただ、これから来年夏までに、「こういう地形でこういう風が吹いて、こういう時はこうなるから、こういう風にしなきゃいけねぇな」っていう計画が立てられるだけの、下準備はもうこれまでやってきたから、大丈夫。

 

2017年。台湾。緑島を目指す。突然のスコールに見舞われる。台湾東海岸の海の複雑さがまだ理解できない。(写真提供:内田正洋さん)

 

舟が自分の下半身。自分たちは、舟が悦ぶ方向へ「進ませる為の部品」

一 今回のプロジェクトで、プロとして技術的に一番難しいのは何でしょうか。チームワークなどですか?

 

「息を合わせて漕がなきゃいけない」と言うのは皆分かっている。やっぱり「使う舟」の問題。これは普段使っているシーカヤックの、例えば「竹筏舟」だと3分の1のスピード。超遅いね。

 

僕らは「舟を進ませる為の動力としての自分」なんだよ。だから、舟が悦ぶ…、悦ぶと言うか、気持ちよく走るために、自分たちがいる。「自分たちがそっちに行きたい」じゃなくて「舟が行きたいように進む」自分たちがエンジン、「舟の部品」として存在する

 

一 面白いですね。漕ぎ手が「舟の部品」。

 

「舟が進みたい」というのは、すなわち、その下にある波の動きを感じて受け取る。「舟自体が自分の下半身」なんです。そのまま直接、自分の下半身が波を受けているから、そういう風になるんですよ。30年間もやっていると(笑)。波の動きを感じ取って、「今はこっちへ滑らせた方が進みがいいだろう」って。

 

2017年。緑島を目指している。午後から南風が強くなり、フェリーグライド(瀬渡り漕法)が難しくなっている。風に逆らおうと全員が左側を漕いで風上側に舳先を向けようとしているが、向いていかない。ウェザーコッキング(風見鶏現象)が足りないことが分かる。カヌーには、風上側に舳先が向こうとする性格が重要な要素だが、竹筏舟では難しいのか?(写真提供:内田正洋さん)

 

舟が「こうやって漕ぎなさい」と教えてくれる

一 漕ぎ続けるパワーはどこから来るのでしょう?「命がけ」の必死な状態だから「火事場の馬鹿力」みたいなのが発揮されるのでしょうか?

 

頑張っていたら漕げない。「漕ぎ」もね、1時間、2時間漕いで疲れるような漕ぎじゃない、漕ぎの技術があるんですよ。と言うことは、24時間漕いでも疲れない。何年もやっていると、自分が舟に鍛えられて、舟が「こうやって漕ぎなさい」って教えてくれるんです。筋力も体力も当然いるんだけど、重要なのは、いかに海に慣れているか、海の世界をいかに知っているか。「海との距離の近さ」が大事ですね

 

あとは「パドリングハイ」って言うんですけど。漕いでいる間は、苦しい、辛い、楽しい、怒り…そういう感情が全部出てきて、気持ちが一歩上に上がっている。昂ぶっているんじゃないんだけど、感覚が鋭くなる。だからこそ、波をとらえられる。目だけじゃない。お尻で波を感じるとか。漕いでいるパドルからの感触とか。

 

一 実際に日本列島に渡りきった祖先の人達も「海に慣れ切った」人々だったと思いますか?

 

そうじゃないとできないと思いますよ。「古代人」という人達というよりも、まあ今でもいるけど、「海の動物みたいな人間」。カヌーで海を自由に動ける人たちって、例えばイルカみたいな、僕も海洋哺乳類に近づいている感覚があるんですよ。

 

 

自分たちは完全に「古代人」となって漕ぐ

一 来年夏の航海を成功させるために大事なことを一つ挙げるとしたら何でしょう?

 

達成させるために大事なこと…、「我々漕ぎ手の思っている感じ方」を研究者たちがいかに理解してくれるかどうか、ですね。それぞれ全く違う視点で見ているから。我々は「海から」見ていて、陸の人は「海からの視点」で見たことがないから、多分、長い時間をかけないと分からないだろうな。

 

一 答えが意外です!

 

実験の主体は、「舟」だけはなくて、我々も含めてなんですよね。完全に「3万年前のホモ・サピエンス」の再現となった我々が、舟に乗った時にどういう動きをしているのか、そういったことも実験の内容なんです。自分たちが「古代人」として漕ぐ、その自分たちの行動を、ちゃんと研究者たちも見て、理解して、判断ができる状況がいかに作れるかが重要だと思いますね。

 

2017年、舞鶴の沖。沖合10キロほどのところに浮かぶ冠島を目指している。シルエットで見ると、3万年前の光景とも大差ない気がする。冠島は竜宮島や常世島などとも呼ばれる聖地。今はオオミズナギドリの繁殖地として島には上陸禁止。神話の時代から、さらにさらに時代を遡り、縄文を遥かに超えて旧石器時代へ到達することは想像を絶すること。丸木カヌーでならたどり着けるだろうか?(写真提供:内田正洋さん)

 

一 今回「島」が見えたことで「移住計画」を立てることができた、と海部先生は説きますが、実際には、当時の人々(男女)が「冒険心」から島が見えない状態で偶然にも陸を見つけた、という仮説はあり得ると思いますか?

 

誰も死にたくないからね。そういう本能に近い状態であれば、島が見えないと出発できないかもしれない。だけど「島(がある)」という概念があれば、その可能性を信じて飛び出ちゃうこともあったかもしれないし、可能性を信じるっていうのが、割と海の民の伝統なんだよね。それでもやっぱり「冒険」の成功の鍵は、90%が「準備」ですからね。

 

一 最後に「最後の実験航海」への意気込みをお願いします!

 

意気込み…というより、「最後の」ってのが気に入らないんだよね。最後ってなによ(笑)!それ以降やらないの(笑)? 辿り着くまでは途中では止めないだろうなぁ。みんな、自分でやりたいからやってるからね。本当は納得するまでやり続けたいね。

 

インタビュアー: 「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」 クラウドファンディング事務局・田島沙也加


◆プロフィール:内田正洋

海洋ジャーナリストであり、海上保安庁やアウトドアメーカーモンベルのアドバイザ ーでもある。また、日本レクリエーショナルカヌー協会理事も兼務。80〜90年代にかけ8回のパリ・ダカールラリーに参戦。自動車、オートバイ関連のデザートレースに精通。その後シーカヤックと出会い海洋ジャーナリストへ。西表島から東京湾へのシー カヤック遠征「黒潮エクスペディション」など。著書に『シーカヤック教書』、『カヌースポーツ基礎』等がある。


 

本プロジェクトへのご支援は以下から

 

今週日曜「NHK番組」放送!7/15(日)21:00

 

 

 

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