ウィーンのお客様からの声が届きました。

皆さま、ご支援をいただきまして、誠にありがとうございます。最終日まであとわずか、引き続き応援をよろしくお願いいたします。

さて、ウィーンのオデオン座にて両日公演をご覧いただきましたお客様から大変嬉しいお便りを頂戴いたしました。本日は、スタッフ岩田から、一部抜粋ではございますが、そのお声をご紹介いたします。

この感想を寄せて下さった江崎様は、日本、アメリカ、ヨーロッパへと暮らしを移されながら、作曲にて博士課程を修了、および音楽理論の研究をなさっている女性です。その深い考察に、わたくしたちスタッフ、そして役者も感嘆致しました！今回は「ヤコブの井戸」についてです。

 【江崎敦子様 ご感想】

今回、Odeon座での銕仙会の能舞台に大変感銘を受けました。中でも、「ヤコブの井戸」は、ストーリーに内包されるオリエンタリズムやポストコロニアリズム、自者と他者、辺境などのディスコース、平和と水とのメタファーや、積み重なる縦の記憶、ロシア、エルサレム、日本といった空間の大きさを凌駕する普遍性を含む内容で、圧倒されました。空っぽの女、と繰り返し歌われながら夢幻の世界へと連れていく夢幻能の手法はとても効果的で、また、移民の若者と年老いた教師の問答、教師と女の問答が弁証法的な二重構造となっていて、背景の絵に象徴される水を軸に、次第に観客をも巻き込んで上へ上へと引き上げ、互いに水を与え合うことでもう乾くことのない平和の成就を祝うラストシーンは感動的でした。空げ（むなしげ）だったパレスチナの女が、突然自虐的な笑いとともに怒りを爆発させる般若のような表情に豹変するところが鳥肌ものでした。猫の役の方（岩田注：間狂言 ニーナ・フォグさん）のしなやかな所作、移民の若者の方（岩田注：ワキツレ ヤクブ・カルポルクさん）の少し訛りが残る、でも流暢な日本語も味があって良かったです。教訓的なメッセージのみに陥らず、芸術性の高いものとなっていたと思います。    

「ヤコブの井戸」ウィーンでの稽古より

ニーナさん（手前）とカルポルクさん（腰掛けている奥の方）