寄付総額
目標金額 4,800,000円
- 寄付者
- 198人
- 募集終了日
- 2023年3月8日
茂木先生からの質問回答・その3
「クラウドファンディング企画★教えて!南極の茂木先生!!」へ寄せられた質問に、返信がありましたのでお届けします。
本日は3件の回答です。
質問してくれた皆さん、どうもありがとうございます!
うみうさぎさんからの質問
極寒の中、観測ご苦労様です。
日本も今日は10年に一度という寒気が襲来。
南極には比べものになりませんが、どこも真冬日です。
ところで、プランクトン採集はどのような目的でやられているのですか?
例えば、層別に採集して、異なる水塊との関係など気になるのですが。
茂木先生からの回答
こちらも寒いといえば寒いですが,日本の方がもっとたいへんだと思います.私たちは寒いところで海洋観測する準備を整え,それを実行するだけですが,日本の我が家がある地域で大雪が降れば,朝保育園へ子ども送っていくことだけでもたいへんだし,仕事に行くにも一苦労で,ころんでけがをするひとも(東京では)続出するし,物流も滞ります.そんなことを考えると,我々が帰る日本の社会を維持してくださっている皆さんに対して,我々がここで仕事をさせてもらっていることを感謝しなくてはなりません.
さて,プランクトン採集の目的はいろいろとあります.動物プランクトンに話をしぼると,中長期的にその組成を調べることによって海洋環境変動の指標にする(サインをみつける)ことができます.産まれてから死ぬまでのサイクルが比較的短いので,プランクトン組成が環境の変化に早く反応するためです.こういった海洋環境のモニタリングは,私たちのプランクトン採集の目的のひとつです.私たちが観測を行っている東経110度の線での観測は毎年おなじ地点で行われ,データが蓄積されています.この110度線は「しらせ」も行きかえり(11月と3月)に通るので,海鷹丸のデータ(1月)と合わせて一年で季節のちがう3回分のデータを取ることができます.これは世界ではなかなかできない充実した体制を取っているといってよいです.
層別採集は,うみうさぎさんご指摘のとおりで,海域や深度でことなる水温や塩分などの特徴(水塊の分布)と合わせてプランクトンの分布を検討します.今回はとくに,魚とイカの子ども(こちらもプランクトン)の分布が海水の性質とどう関係しているのかについてデータを蓄積することが目的です.
その他にも,残留性の有機汚染物質(ポップスPOPs,Persistent Organic Pollutantsと呼ばれます)が南極海でどのように生態系に入り込んでいるのかを,サルパやナンキョクオキアミを対象に,マレーシアやオーストラリアと共同研究を行っており,そのサンプルを採集することも目的となっています.
鵜川 亮さんからの質問
茂木先生
学生時代は、河野先生や茂木先生に大変お世話になりました。
南極とはあまり関係ない質問なのですが、
私が学生であったころ (10年ちょっと前) と今とで、
大学や研究の現場で変わったと思われるところはありますか?
あればどういったところでしょうか。
茂木先生からの回答
ぐちになりそうなので,あくまでも一般論,個人の感想で回答したいと思います.近年,ノーベル賞をとった日本人の多くが,このままでは日本の科学はすたれていく,といった趣旨のことばを発表されています.なにかといえば,基礎科学を軽視した「選択と集中」による予算の重点的な配分を我が国のエライひとが進めているからです(個人の感想です).アメリカでも「イノベーションの創出」を目指し同じことをしていましたが,20年以上前にそれがむしろ予算の無駄であることに気付き,将来技術革新につながるとは思えない基礎学問にも大きな予算を割く方針に変更しました(こちらの方が効率的に技術革新が生まれる).なのに,わたしたちの国はむしろ「選択と集中」を学問の世界で先鋭化しているようにみえます.学問の自由はすでに置き去りにされているようです(個人の感想です!).
2008年,わたしはオーストラリアの港町ホバートに1年間滞在し,現地の研究機関で共同研究をしていました.ホバートは南緯60度に位置し南極への玄関口として知られたタスマニアの州都です.ここは,アムンゼンが南極点に到達したあと滞在し,その旨を本国に電報を打った場所でもあります.オーストラリアの砕氷船の母港であるばかりでなく,世界の観測船が補給に立ち寄ります.もちろん海鷹丸も.このまちの酒場で,自分が南極海から戻ってきたといっても,それほど驚かれることはありません.地元紙マーキュリーには,その年最初のコウテイペンギンの産卵が確認されたというニュースが掲載されるどころか,オーストラリアが南極にもつ基地周辺の天気予報も掲載されます.それほど南極はホバートの市民にとって身近な場所です.ひるがえって,日本ではどうでしょうか.南半球のホバートと比較すべきではありませんが,私としてはもう少しだけ興味をもっていただければ嬉しいです.クラウドファンディングは,その意味で一定の成功を収めたと思っています.まだ半ばではありますが,私たちの研究や海鷹丸という船のことを知っていただくきっかけになったからです.
学問とは研究者や産業界,ましてや為政者のためにあるのではなく,私たちのものです.学問を取り戻すには,私たち研究者が,何を考え,何をしているのかをもっと伝えていくことが必要かもしれません.自然科学(南極海の研究だけではなく,必ずしもイノベーションを生まない)は自分たちのすむ地球を知ることで,それを皆さんと共有することが,よりよい大学,よりよい社会の実現につながると信じています.
こういうこと書くと,また怒られるのだろうな.そもそも,ほとんど回答になってないですね.すみませんでした.鵜川さん,東京に来たら研究室によってください.そのときにあらためて,ビールでも呑みながら.
海洋大生さんからの質問
南極の海洋生物(ウミグモ等)は巨大化する傾向にあると聞いたことがあるのですが、魚類でも同じ傾向にあるのでしょうか?
茂木先生からの回答
Polar gigantism(ポーラー・ジャイガンティズム,極域海洋生物の巨大化現象)が北極海と南極海で知られています.極域の底生生物がやたらと大きくなる現象です.この現象が起こる理由は諸説あり,例えば溶存酸素濃度が高いことに起因しているとか,海水に珪素が多く溶け込んでいるなどの要因が指摘されています.どれもそれらしいので,分類群ごとに単独か複合的に作用して起こるのかと考えられています.さて,これが南極海の魚類であるのかというと,少なくともそのような傾向は見出せません.南極海は3000万年前から5000万年前くらいの間に他の大陸から分離され寒冷化が進みますが,そのときに多くの魚類は適応できずに絶滅します.その結果南極海にはおよそ300種程度しか生息していません.日本近海に4000種くらい分布することを考えるといかに少ないかが分かります.その寒冷化の過程において唯一極寒環境に適応して進化したのがノトセニアの仲間(ノトセニア亜目魚類)でおよそ140種を数えます.南極の大陸棚上(沿岸の水深1000 mまでの水域)に分布するのはほとんどこのグループです.つまり,同じ仲間は他の温暖な海域にはわずかしかいないので,南極海で巨大化が進んだかどうか比較しようが無いのです.また,一般的にみてもノトセニア類の大きさは数十センチまでなのでとくに大きいとは思えません.例外的に体長1.8メートルになるライギョダマシという種類がいますが,他の種類がほとんど底生なのに対して,この種とコオリイワシという種だけが完全な遊泳性の魚類に進化したことと関係がありそうで,魚類の巨大化といった意味で一般化はできそうにありません.
さて,こんな結論では面白くないので,もう少し魚の話でご機嫌を伺います.ハダカイワシという魚の仲間が350種くらい世界中の深い海の中層にすんでおり,南極海にも35種以上がいます.先ほどのノトセニアが大陸棚海域なのに対し,こちらは外洋域(水深が3000メートル以上の海域)に分布しています.35種の多くは南極海にのみ分布する種類ですが,ノトセニアと違って,深いところに流れ込むやや暖かい水(1.5~3度くらい)にすんでいます.ハダカイワシの仲間の多くは10 cmくらいまで,大きくてもせいぜい20 cmくらいまです.しかし,やはり南極海のみに分布するGymnoscopelus bolini ギムノスコペルス・ボリニは体長28 cmにもなります.この1種からPolar gigantismを引っ張り出すのは無理がありますが,南極海の特殊性の一端を示していると思います,外洋の中深層帯(深度200-3000 m)には,ほかにもソコダラ科なのに海底付近にいないとか(その名のとおりソコダラ科はふつう海底近くでくらします),10 cmにもなるのにまだ海底にいないヒラメとか(ヒラメ・カレイの仲間は一般に赤ちゃんは表層にいて,成長すると底生生活に移ります),彼らも南極海の中深層の特殊性を示していますが,こういった魚が現れる理由については分かっていません.すっかり海洋大の講義みたいになっていました.
以上になります。茂木先生の専門の魚類学以外にも南極や研究に関することについて幅広く回答してくれています。
質問は1月31日の火曜日まで募集しています!
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
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