コロナ禍で大阪の外国人留学生が困窮 | 救うための制度を新設

 

出入国管理法などの、入管難民法改正案が見送られたことが大きな話題になっています。

これは日本で暮らす外国人にとって、とても大きな意味を持つニュースです。

 

本記事では、

 

・見送りに至った流れ

・改正案、現行法に対するそれぞれの立場からの意見

 

について取り上げます。

 

（改正案見送りの賛否や、現行法や入管庁に対する賛否の意見ではなく、

あくまで「どのような流れでそうなったのか」「改正案、現行法について、何が問題視されていたのか」を取り上げる記事です。

改正案の取り下げを喜ぶ声もあれば、現行法に関する批判の声もありますので、両面的にご紹介していきます。）

 

 

 

さて、今回の法改正案では、在留外国人の収容や送還に関する規則が変更されることがポイントとなっていました。

 

難民申請をしている外国人でも強制的に母国に送還されることや、

退去命令に従わない人に罰則を設けるなどの点から、人権侵害にあたるといった批判があがっていました。

また、下記の国際法「ノン・ルフールマン原則」にも違反している、という指摘もありました。

 

 

＞生命や自由が脅かされかねない人々（特に難民）が、入国を拒まれあるいはそれらの場所に追放したり送還されることを禁止する国際法上の原則である。 追放及び送還の禁止とも。

 

 

これほど批判を受ける改正案がなぜ生まれたかというと、入管庁は現行法が持つ問題点を挙げており、最大の問題は「送還忌避者への対応が困難」だという点です。

 

現行法では、難民認定手続きを行っている外国人は、日本から退去させることができません。

たとえ重大犯罪を犯した人や、テロリストであっても、難民認定申請を繰り返せば日本からの退去を回避することができます。

 

そこで、改正案では、難民認定が2回却下され、3回目の審査も却下された暁には、日本政府が強制的に送還できるようになります。

それでも送還を拒む人に対しては、刑事罰を加えることも可能になります。

 

しかしこの変更は大きな批判を浴びることとなりました。

本当に「帰れない」事情を持つ人たちへの配慮がなかったためです。

 

日本の難民認定は非常に厳しいと言われています。

そのため、難民に認定されず、危険な状態の祖国に帰還させられる外国人が続出する可能性があるのです。

 

ほかにも、宗教上の理由で祖国で迫害を受ける外国人や、日本国内で生活の基盤を築いており、今さら戻れないという外国人も存在しています。

 

こういった問題から反対の声が生まれる中、

今年の3月、名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんが死亡したことで、批判はいっそう高まりました。

 

ウィシュマさんは収容中に体調悪化を訴えて入院を求めていたものの、入管側から許可がおりず、当時33歳の若さで死に至りました。

 

この出来事が、改正案について大きな注目を集めることに繋がり、

反対デモに加え、SNSなどのネット上で声が広がったことも手伝い、入管法改正案は取り下げられる結果となりました。

 

多くの人が声をあげたことで、法改正を止めたという事実は、一つの大きな成果になると感じます。

 

入管法改正案の廃棄が喜ばれる中、そうではない声もありました。

 

 

「入管法が定める就労ビザ取得条件のため、学費を稼いで大学に進学したのに。不法滞在者の就労が認められるなら、ルールを守る側が損することになる」と嘆く外国人の声や、

 

「不法滞在のために難民申請を繰り返す一部の人のせいで、難民認定の手続きが複雑化しており、本当の難民から機会を奪っている」という意見。

 

また、産経新聞は「不法滞在の外国人、実刑判決の半数が難民申請 現行法で送還できず」という記事を掲載。

https://www.sankei.com/politics/news/210518/plt2105180041-n1.html

 

 

＞送還を拒否するなどして収容が長期に及ぶ不法滞在外国人のうち、懲役３年以上の実刑判決を受けた刑法犯が昨年末時点で約３１０人に上り、うち難民認定申請中が約１５０人と半数近くを占めることが１８日、分かった。申請を繰り返すケースもあり、申請中は本国へ送還できない「送還停止効」の悪用も疑われる。

 

 

送還を拒否している外国人の犯罪者のうち、その半数は難民申請を行っており、

まさに入管庁が問題としている「送還を回避するための悪意ある申請」ではないか、という指摘です。

 

 

人権侵害の可能性があり、助けを求める外国人を苦しめる内容は、見直されて然るべきでしょう。

また、個人的には、多くの人が「弱い立場の人を守るため」に声をあげ、それが結果を覆したという今回の出来事を、とても素晴らしい事例だと思います。

 

しかし、改正廃棄と同時に、現行法における問題についても考える必要があります。

 

「守ることができるルール」、そして「守られなかったときの対処」については、多くの人の考えを取り入れながら、慎重な変更がなされるべきかもしれません。

 

 

◇◆◇

 

 

外国人を取り巻く課題は本当に多く、

有権者ではない外国人の立場を守るには、私たち日本人が関心を向け、協力することが必要となります。

 

新制度「OHINERI」も、外国人がより生きやすい社会を築くため、考えられたものです。

 

皆様、引き続き応援の程よろしくお願いいたします。

 

（大阪労働協会　越原）