【第4弾】歌舞伎や映画、日本文化の歴史を後世に伝える。

お早うございます。松竹大谷図書館の武藤です。

閲覧室内のミニ展示を展示替えいたしましたので、お知らせいたします。

今回の展示は、5月大阪松竹座と7月新橋演舞場にて行われる松竹新喜劇の「藤山寛美二十七回忌追善」によせ、松竹新喜劇の名優、藤山寛美の資料を展示します。

藤山寛美は、昭和4年6月15日大阪に生まれました。本名は稲垣完治、父は関西新派成美団の俳優藤山秋美です。背が高く二枚目役者だった父秋美が、昭和8年1月に46歳で逝去した後、10月に新派の名優花柳章太郎から、父の一字をとった「藤山寛美」の芸名をもらい、4歳で関西新派俳優の都築文男に弟子入りします。関西新派の子役として舞台に出演する一方で、歌舞伎や新国劇にも出演しています。

そして、昭和16年1月大阪歌舞伎座での松竹家庭劇『防犯当番』に出演します。

下の写真の資料は、その『防犯当番』が上演されたときの昭和16年1月大阪歌舞伎座のプログラムです（※こちらの資料は参考資料として複製を展示してあります）。

配役の先頭に藤山寛美の名前が記載されているのが見えますでしょうか？

二代目渋谷天外や曾我廼家十吾の名前もありますね。この作品に出演したことがきっかけで、二代目渋谷天外の勧めにより、寛美は松竹家庭劇に入座します。

戦時中は慰問隊として満洲へ渡り、昭和22年10月に帰国した後、二代目渋谷天外の劇団「すいとほーむ」への参加などを経て、昭和23年12月に中座で旗上げされた劇団「松竹新喜劇」に19歳で参加します。このときのプログラムを見てみますと、ハンサムなお顔立ちで、実際しばらくは、二枚目役が続いたそうです。

転機は、昭和26年12月に中座で上演された『桂春団治』の酒屋の丁稚役でした。この役で一躍脚光を浴び、以来喜劇俳優として人気を不動のものにしていきました。

お客様のリクエストで当日上演する演目を決定する「リクエスト狂言」を発案し、昭和61年11月には中座で藤山寛美年中無休二十年を達成。「寛美二十快笑」狂言を選定するなど、平成2年5月21日に60歳で逝去するまで、名実とともに松竹新喜劇の顔として、常に第一線で活躍し続けました。

今回の展示から、ユニークな資料をひとつご紹介いたします。昭和42年に発行された、図書『あほやなあ　喜劇役者の悲しい自伝』の裏表紙カバーです。藤山寛美の当時8歳の三女、藤山直美さん(本名:稲垣直子)が「私のパパのこと」と題して、父寛美について、とても可愛らしい文をよせています。

他にも、子役時代の写真と三女直子ちゃんと共演したときの写真が掲載された図書、数々の新喜劇での舞台のスチール写真、「リクエスト狂言」のプログラムやスチール写真、そして、映画に出演したときのスチール写真など、様々な資料を展示しております。

展示資料の他にも、藤山寛美の著書や写真集も所蔵しておりますし、新橋演舞場や中座など出演した舞台のプログラムも所蔵していますので、併せてカウンターでご請求いただければ、展示と一緒に、よりお楽しみいただけるかと思います。

6月29日まで展示しておりますので、お近くにいらした折にはお立ち寄り下さいませ。

閲覧室の奥で展示しております！