戦後の歌舞伎検閲に関するシンポジウムご報告

お早うございます。松竹大谷図書館の武藤です。

 

先日の新着情報でお伝えした、10月6日の戦後の歌舞伎検閲に関するシンポジウムに出席してまいりましたので、講義の内容などご報告致します。

 

 

2000年に、ハワイ大学マノア校に寄託された、ハワイ出身の日系二世で検閲官であったスタンリー・カイザワ氏の旧蔵英訳歌舞伎検閲台本135点と、当時の写真を貼り込んだ3冊のアルバムを対象として、2016年から、マノア校と京都精華大学の日米大学の共同プロジェクト「カイザワ歌舞伎コレクションデジタル化プロジェクト」が開始され、デジタル化・台本のテキスト化が進められています。

 

今回のシンポジウムではこのデジタル化プロジェクトを中心に、日米間をライブで結んで、ハワイ大学マノア校図書館のバゼル山本登紀子さんが、カイザワ・コレクションの背景、特徴、そしてデジタル化のプロセスについて、京都精華大学の小泉真理子先生が日本の歌舞伎検閲に関する解説と、コレクションをどう捉えていくかについて、またハワイ大学マノア校のジュリー・A・イエッツィー先生が、研究者としてのこのデジタルアーカイブの評価と、今後どのようにこのアーカイブが活用出来るかについて、をお話して下さいました。

 

この新着では、それぞれのお話からコレクションとアーカイブの特徴について抜粋して、カイザワ・コレクションとそのデジタルアーカイブがどのようなものなのかをご報告したいと思います。

 

今回デジタルアーカイブ化が行われた、スタンリー・カイザワ・コレクションは3つのグループから成っています。

 

1)英訳GHQ検閲歌舞伎台本 135点(総計3,350ページ)
スタンリー・カイザワ氏が配属された東京地区で上演された歌舞伎の検閲用英訳台本で、GHQの検閲支隊の解散後は破棄されるはずでしたが、カイザワ氏が密かに故国へ持ち帰ったため、これらの貴重な資料が後世に残される事となりました。今回のプロジェクトでは、この英訳台本全頁がデジタル画像化され、内容についてもテキスト化され検索が出来るようになっています。台本の英訳は当時検閲支隊の職員が行っていましたが、誤訳も多く、資料の劣化もあり、今回のテキスト化は非常に難航したそうです。

 

また、台本本文だけでなく、検閲官の署名捺印や書込、削除箇所などの付与情報も全てテキストデータ化して、検索可能としています。松竹大谷図書館が所蔵するGHQ検閲歌舞伎台本は、検閲後に上演許可が下りた証拠として制作側に返された台本なので、基本的に「CP」(CensorshipPassed 検閲通過)という印が押されていますが、カイザワ・コレクションは、上演不許可となった英文梗概などを含むところも特徴です。

 

 

これらの英訳台本は、GHQによる歌舞伎検閲の重要な資料である事は勿論ですが、これまで英訳が存在しなかったり、現在では上演されなくなった歌舞伎台本についても英語で読む事が出来るため、英語圏における歌舞伎研究にも貢献する資料と成り得るとの事です。

 

2)アルバム 3冊(写真360枚、印刷物14片を含む)
占領期にスタンリー・カイザワ氏が作成したアルバム。主に歌舞伎俳優のブロマイド、GHQ関係者のスナップ写真、当時の日本の風景写真などが含まれています。こちらも全てデジタル化され、メタデータが付与されました。舞台写真の演目や俳優名、役名の特定や、スナップの撮影場所や人物の特定は大変困難な作業であったそうです。

 

 

3)ハワイ大学ジェームズ・ブランドン博士によるスタンリー・カイザワ氏インタビュー音声テープ
アメリカにおける歌舞伎研究の第一人者であるハワイ大学名誉教授のジェームズ・ブランドン先生が、スタンリー・カイザワ氏を28か月に渡って16回取材した音声テープのデジタル化と、ブランドン先生の研究メモ(インタビュ―ノート)のテキスト化。このインタビューの内容から、台本に付与されている検閲官の押印署名の意味や、写真に写っている人物が特定された事も多かったそうです。また、ブランドン先生の教え子であるジュリー・A・イエッツィー先生によると、ブランドン先生によるこのインタビューの内容及び研究メモからは、最初から構成を明確にしてインタビューを行う、インタビューの日時・場所を正確に記す、文字起こしをすぐやる、インタビューの内容と追加情報を区別する、といった事が分かり、学生が学ぶべきインタビューのお手本にもなっている、との事です。

 


このように、今回のデジタル化は、カイザワ・コレクション本体である英訳台本、アルバムの舞台写真、スナップなどについて、書込やメモ、署名捺印までメタデータに起こして詳細なアーカイブを構築しているだけでなく、コレクションの旧所有者へのインタビューやその研究メモも含めてアーカイブ化が成されており、あらゆる角度からの情報の収集と分析を可能にしている点が、研究材料として非常に優れたアーカイブであると感じました。

 

松竹大谷図書館が所蔵する、日本語のGHQ検閲歌舞伎台本403冊は、この【第4弾】プロジェクトのご支援でデジタルアーカイブ化を進め、お陰様で《松竹大谷図書館所蔵・GHQ検閲台本検索閲覧システム》を公開する事が出来ました。メタデータなどはカイザワ・コレクションのアーカイブに比べまだまだ簡易な情報しか入力されておりませんが、併せて研究に活用される事を願っております。

 

スタンリー・カイザワ・コレクションのデジタルアーカイブについては以下をご覧ください


2019年3月までに全面公開されるそうです。
https://evols.library.manoa.hawaii.edu/handle/10524/57059
https://kahualike.manoa.hawaii.edu/kaizawa/index.html

 


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