お早うございます。松竹大谷図書館の武藤です。

 

前回の新着情報でお知らせいたしましたが、先週11月23日(金・祝)に藤澤浮世絵館で、「演劇・映画の専門図書館松竹大谷図書館の活動と所蔵資料」と題して、お話をさせて頂きました。

 

当日、藤澤浮世絵館最寄のJR辻堂駅を降りると、改札正面の周辺情報案内パネルに貼ってある「松竹大谷図書館所蔵3D浮世絵歌舞伎組上燈籠の世界」展のポスターが出迎えてくれました。今回の講座はこの展示の関連企画になります。

 

藤澤浮世絵館は、この辻堂駅の北口から徒歩5分のところにある複合施設ココテラス湘南7階にあります。当日はお天気も良く、入り口を入って正面の窓からは、富士山がきれいに見えました。

 

目線を上にやると、窓に貼られた「松竹」の文字が!遠くに見える富士山を借景に、松竹映画のオープニングの富士山マークを、この講座の日限定で再現して下さったとの事で、感激です!

 

会場は、藤澤浮世絵館の多目的室をお借りし、前半は当館の概要、利用方法、そして資料について、特に歌舞伎や松竹映画の資料の特徴をご説明し、後半は当館が所蔵する組上燈籠絵の特徴や面白さを、組上燈籠復刻版の試作品を製作した時の作業を例として、スライドを使ってご紹介しました。会場には34名の方が来てくださり、最後には当館の資料に関するご質問などを受け、無事一時間の講座を終了致しました。

 

終了後は、藤澤浮世絵館の学芸員の方が展示を解説しながら一緒に回って下さる、という贅沢な時間を過ごしました。藤澤浮世絵館は、東海道五十三次の各宿場や藤沢宿、そして近隣の江の島を描いた浮世絵を多数所蔵していますが、そのコレクションを展示した「東海道五十三次」「藤沢宿」「江の島」という3つのコーナーを回り、最後に今回組上燈籠が展示されている企画展示コーナーを見るという順路です。

 

まず、「組上燈籠」の企画に合わせて展示替えが行われた「東海道五十三次」コーナーでは、東海道の宿場の風景と名物を背景などに描いた役者絵「役者見立東海道五十三駅」が、また「藤沢宿」コーナーでは「大山詣で」の役者絵が展示してあり、歌舞伎ファンには堪らない内容でした。

 

いよいよ、企画展示コーナーの『松竹大谷図書館所蔵3D浮世絵歌舞伎組上燈籠の世界』を案内して頂くと、当館から展示提供した「組上燈籠絵」とその組上完成形、関連の舞台写真、番付と共に、「組上燈籠」と同じ演目や登場人物が描かれた藤澤浮世絵館の浮世絵や役者絵などが展示してあり、歌舞伎の同じ演目を様々な表現の浮世絵や関連資料で楽しむことが出来る、大変充実した展示となっていました。

 

「祇園祭礼信債功記金閣寺の場四枚つづき」

今回展示した組上完成形の製作は、湘南工科大学の学生さんにお願いし、薄いパネルに貼り付けた組上燈籠絵をデザインナイフ(カッター)で切り出し、グルーガンで組み上げる、という現代的な手法を用いて製作して頂いたそうです。組上燈籠は組上げると遠近感が出るよう奥の方が小さく設計されており、建物なども奥に向かって小さくなるように斜めに作ってあります。手作りの場合、斜めの屋根などが壁に上手く取り付けられず微妙に浮いてしまったりするのですが、さすが、工科大学の学生さんが作った完成形では、建物なども隅までしっかり組み立ててあり、手前から奥に向かっての遠近感がきれいに出ていました。

 

「極新板切組とうろう山門の段 石川五右衛門」

また会場では、完成形が少し高い位置に「八百屋飾り」(手前を低く奥を高く、斜めに飾った舞台の事)で展示してあり、さらに立体感や奥行を感じさせるように工夫がしてありました。今回の展示は、お子さんの来場も多いそうで、学芸員の方が手前から低い姿勢で覗くように勧めると、組上の奥までよく見える事をとても喜んでくれるそうです。

 

その他にも色々な工夫が凝らされており、例えば当館の復刻版でもおなじみの「車引」は、後方から照明に照らされて、組上燈籠に明かりを入れたという昔の遊び方が再現されていました。また、「め組のけんくわ」と「宇治川合戦先陣あらそい」は、見る角度によって組上と影が変化する様子を表現するため、丸いターンテーブルに設置され、モーターで回るようになっているとのこと。残念ながら訪問した時は調子が悪く、自動で動いている所は拝見できませんでしたが、手で回して影が動く様子を見せて頂きました。

 

「め組のけんくわ組上とうろう」

 

「宇治川合戦先陣あらそい組上五枚続」

 

 

そして「忠臣蔵討入」では、上から5ミリ四方の雪を降らせる事が出来るようになっているそうですが、見学時は、ちょうど雪が全部降ってしまった後だったので、(学芸員さんが定期的に雪を回収して戻すそうです)、下地を息で吹いて地吹雪を起こし、討ち入りの劇的瞬間を演出してみました。

 

「忠臣蔵討入組上五枚續」

 

特に当館の「頼朝富士之牧狩」の組上と、藤澤浮世絵館所蔵の「源頼朝公富士之裾野牧狩之図」(歌川国久)が並べて展示されているところは必見です!牧狩りの最中、突然飛び出してきた大猪に踏みつけられ、跳ね飛ばされた頼朝の家臣たちとその大猪を退治する仁田四郎、という有名な場面。これを組上の完成形と浮世絵とでは、同じ場面を異なった構図で表現しており、まるで俯瞰と寄りの別角度で撮影したVTRを鑑賞しているかのような、大変ドラマチックな展示となっています。

 

「頼朝富士之牧狩仁田四郎功名之圖組上ケ五枚續」

大猪に跳ね飛ばされた頼朝の家臣は、組上ではアクリル細棒で支えられています。浮世絵の方ではどう描かれているか、ぜひ現地でお楽しみ下さい!

 

「浮世絵すり体験」コーナー

 

刷り上がった版画

遊び心溢れた展示コーナーを出ると、土日には午後13時から「浮世絵すり体験」が出来るコーナーもあり、すり方のコツや、浮世絵の特徴などの説明を受けながらの体験に、大人も子供も楽しんでいかれるそうです。

 

浮世絵の保護のため、展示コーナーは照明が暗く、細かい部分まで見る場合は、小休憩をはさみながら鑑賞して頂くのがお勧めです。関連書籍が揃った小さなライブラリーや、浮世絵が出来るまでのパネル展示、東海道すごろくが楽しめるテーブルなどもありますので、ぜひお時間に余裕を持ってご来場いただき、藤澤浮世絵館を丸ごとお楽しみ下さい。会期は12月9日(日)までですので、お見逃しなく!!

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