
支援総額
目標金額 1,000,000円
- 支援者
- 187人
- 募集終了日
- 2018年1月31日
ガラス越しに恋人が映る。この人を被爆させたくない。
昨年10月、私はニューヨークで、大西洋横断を経たピースボートから降りてきた被爆者の木村徳子さんとユースの浦田沙緒音さんを迎えました。二人は、イギリス・ティルベリーに始まった55日間の「証言の航海」の真っ最中でした。短いけれど濃密なニューヨークでの1日半。たった一度の出会いでしたが、浦田さんが国連で行ったスピーチの力強さ、それから、見るものすべてから目を逸らさずに自分の言葉で消化し、そしてそれを言葉やアートで表現し直す様子に惹かれました。
ノーベル平和賞がICANに贈られてから、「この機運をいかそう」と#YesICANという運動が広がりました。核のない世界への「Yes」を「ICAN」と掛けて表明してもらおうというものです。笑顔で「#YesICAN」というプラカードとともに写真を撮る若者の姿がSNS上に溢れました。「核のない世界を目指す」活動をポップにムーブメント化することは被爆者をあまりにも「安易に」「消費」していないか…浦田さんの抱えるもやもやを私もこの10年抱えてきました。一方で、無関心の人たちに被爆者の声と向き合ってもらい「想像」してもらうには、とにかく彼らにこちらを向いてもらわなければいけない。被爆者の経験を軽んじないで受け継ぐための「正解」はどこにあるの?
答えは見つからないけれど、浦田さんが寄せてくれた文章に私はひとつの糸口を見いだした気がします。「核のない世界」を目指すということは、被爆者のみなさんの思いと声を継承するだけではない。自分の隣にいる大切な人をみて「この人を被爆させたくない」と思う、そのための私たち自身の思いの実現でもあるのです。その実現のために私たちは被爆者のみなさんと「ともに」これからも方法を模索し続けます。
(畠山澄子)
++++++++++
ノーベル平和賞受賞を聞いたのは、ピースボートの船の中だった。
一緒に乗船した長崎出身の被爆者である木村徳子さんとその知らせを聞き、いまいちピンとこなかったが、核兵器廃絶の動きがこの社会の中で大きくなっていることは確かだった。
真っ先に徳子さんに今の気持ちを聞いた。
「私たち被爆者は、人に認められるというよりも理解されることが目標だから、今回の受賞はその一歩だと思う。このノーベル平和賞を、勲章としてだけでなく、中身として評価されたものとして、歓迎そして賞賛したい。人の噂になるよりも実現させることが大切、それが結果につながる。」
日本に戻ると、ノーベル平和賞受賞を流行りのように持ち上げる空気を感じた。
私はそんな中にある#YesICAN の動きを安易にやりたくなくて、ずっと違和感を抱え込んでいた。
私は被爆三世である。
この日本に生まれ、「あなたは被爆三世なのよ」と言われて育ち、学校では平和教育を受けて、2001年に世界同時多発テロを見て、その反動で起きた2003年のイラク戦争の悲惨さに揺れ動かされたまま、今日まで社会活動をしてきた。
9歳で始めた。もうすぐで24歳になる。
それでも、被爆三世という存在はどこか空っぽなレッテルとなり、被爆者の方々と自身の責任を思い出すのは8月の夏だけだった。
自分が被爆三世であるというだけで、被爆者の思いを知った気になって、これまで広島と長崎について話をしてきた。
そうやって私は、被爆者の方々の思いに耳を傾けず、知らない間に踏みにじってきたのだ。
そうだ。長崎に原爆が投下された時間を私は答えられなかった。
広島と長崎のことも、原爆のことも、何も知らないんだと、自分の無知さに大きな喪失感を覚え、徳子さんと船に乗った。
「みなさんこんにちは、日本から参りました木村徳子です…」と証言会前に声を確認する。
体調を崩して声が出なくなっても、移動バスの暗がりの中、原稿を読み返している。
証言会後に「うまく話せていた?」と不安げな表情を浮かべる。
自身の被爆体験を話すだけでも、のしかかる感情やこみ上げてくるものがある。
それでも、徳子さんはまっすぐに私たちに語りかけてくる。
そんな徳子さんを見つめながら私は、毎日「被爆者」「原爆」「ヒロシマ」「ナガサキ」と向かい合った。
核と私たちとの歴史を書き起してみると、被爆者が核廃絶の声を上げるたびに、核実験が繰り返されてきた事実に打ちのめされた。
徳子さんの込み上げる気持ちを飲み込む姿を見て、泣いた。
映画「ヒロシマナガサキ」で見たケロイドと向き合う被爆者の映像を見て、あの日にいた徳子さんを想像できなかった自分を憎んだ。
大量にコピーされた文字とまんま同じの哀悼の意を聞いて、腹が立った。空っぽだ。
船の中で思い出したこともあった。あの日も暑い日であった。
幼い頃に平和資料館のロビーで水を飲んだ私は、見知らぬ女性に「どんだけの人が水を求めて死んだのか分かってるのか」と怒鳴られる。
突き飛ばされたような感覚に陥り、だけどそれが何か分からない私は、その愚かさが言葉にならずとも、あの頃からずっと後ろめたさを感じていたのかもしれない。
私には想像力が欠けていたんだろうと、徳子さんと過ごすことでようやく気がついた。
全部、隣にいなければ分からないことばかりだった。
人間なんてクソだって何度も思った。日本政府なんて恥だ。
この海に比べれば、ちっぽけなのに。

#Yes ICAN
私は、このハッシュタグがネット社会の中で拡散されていくことでその重みが薄れ、そのうち消えゆくのを恐れてる。
受賞したことは終点ではない。
被爆者を特別扱いしながらも、その存在を消費し、そのくせ活動を押し付けてきた私たちの責任は、想像以上に重くのしかかっている。でも、想像力が欠けたままでそれさえ気づかない。
そんなうちに、「被爆者の方から直接証言を聞ける最後の世代」という言葉が何重にも聞こえてくるだろう。
最後の世代なんだからね、頑張ってね、とまたまた押し付けがましいことばかりだ。
そこから生まれるものは、この社会に蔓延する愚かさ。
つまりは私、そしてあなた自身の愚かさだ。
徳子さんがよく言っていた。
「何万人というのは地図上の数でしかない。」
何万人の中には、誰かのお父さんがいて、お母さんがいて、子どもがいて、そして愛する人がいた。
船の中から海を見ていると、ガラス越しに徳子さんが映る。こんな社会をこれ以上この人に見せたくはない。
また海を見ていると、ガラス越しに恋人が映る。この人を被爆させたくない。
私は、誰も被爆させたくない。愛する人たちを被爆者にしたくない。
そういう社会であってほしくないし、私はもう被爆したくない。
それでも私に子どもが生まれたら、被爆四世になる。

今年の初め、母の実家である広島へ向かい、原爆ドームを訪れた。
一番納得する場所で #YesICAN を掲げた。
徳子さんからもらったおりづるのバッジをつけて、正田篠枝さんの歌が刻まれている原爆犠牲国民学校教師と子どもの碑へ行き、帰国報告をした。
青々としてる元安川を見つめて、自分のちっぽけさを噛み締める。
8月の夏であろうとなかろうと、ノーベル平和賞の授賞式であろうとなかろうと、原爆ドームはここにある。
広島、長崎で亡くなった全ての人たちの感情も、今もなお被曝と生きる人たちの思いは、昨日も今日も明日も広島と長崎にある。
私は継承していく人であり続ける。ちっぽけなりに、できることをしよう。
最後に、なぜ核兵器廃絶が大切なのか。
もしかしから自分が被爆者になるかもしれないという想像をあなたができれば、核兵器廃絶は当然なことだ。もし、あなたが想像できれば。
(浦田沙緒音)
リターン
1,000円

被爆証言を全国に届けたい。この思いに共感してくださった方へ
・感謝の気持ちを込めて、サンクスメールを送らせていただきます。
- 申込数
- 13
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2018年3月
3,000円

被爆証言を全国に届けたい。この思いに共感してくださった方へ
サンクスレターを送らせていただきます。
- 申込数
- 63
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2018年3月
1,000円

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