世界が注目した日本画家「加藤弘光」の遺言未来への展覧会と画集

僕のお気に入りの桜の路にぜひお連れしたいなあ  と彼が言う。

すると最愛の妻が、ぜひぜひぜひ～と手帳を取り出し、早速にその日が決まる。ぜひ一杯やりましょうよ  と温かく気さくな彼が無邪気に笑う・・・

そんな彼が自らの生命をひと筆ひと筆に込めた桜花は、凛として気高く、壮麗、こわいくらいに力強い光を放つ。

その世界に包まれたくて個展の度に足を運んだ。

大好きだった。

静寂、陽炎、桜華、月夜、ギャラクシー・・・

様々な『色』を持ち、神に愛され市井に生きた画家  加藤弘光氏。

今年3月『世界の巨匠』への扉が開くと同時に、彼は足早に次のステージへと旅立っていった。何をそんなに急ぐ必要があったのか・・・

解せない気持ちを抱きながら、彼の妻の気持ちを想う。

君に託したよ  そんな声が聞こえてくるような気がした。

来春、桜の花が咲く頃にまた彼の光に会える。その日が待ち遠しい。

酒巻 淑世