私のプロジェクトのタイトルは「ケニアの大自然を紹介する写真展を開催し、ゾウの森を守りたい!」ですが、ケニア沿岸の森に棲んでいるのはゾウだけではありません。固有種、即ち世界中でケニア周辺の沿岸森にしか棲んでいない動物が沢山います。ハイイロコノハズクをはじめとした10種以上の鳥類や、タナ川霊長類保護区のみに生息している2種のサル、小型のレイヨウ・Ader’s Duikerやコシキハネジネズミなど、中型・小型の哺乳類が、ケニア沿岸に残された幾つかの森林保護区やミジケンダ族の鎮守の森、「カヤ」を最後の拠り所として暮らしています。もちろん固有種ではない生き物はずっと多く、アラブコ・ソコケ森林保護区に棲む鳥類だけでも250種にも及びます。ケニア沿岸の森は生物多様性の楽園となっています。

 

<ケニア沿岸林の固有種。ハイイロコノハズク(左)、タナリバー・レッドコロブス(右上)、フィッシャーエボシドリ(右下)>

 

さて「生物多様性」という言葉ですが、これは読んで字のごとく「ある地域にどれほど多種多様な生き物が暮らしているか」ということを意味しています。しかしながら、「生物多様性」には、例えば「切手コレクションの多様性」のような、単純なバリエーションの多さとは異なる深い意味が隠されています。


それは、生き物同士の関係性のネットワークです。みなさんは以前学校で「食物連鎖」という言葉を習ったことがあるのではないでしょうか。植物は草食動物に食べられ、草食動物は肉食動物に食べられ、糞や死骸は地面の微生物に分解されて再び植物の栄養になる、というあの図です。しかし実際の生態系は、教科書に載っていたあの図よりはるかに複雑です。小さな肉食動物は大きな草食動物を捕食することはできませんし、植物も毒や鋭いトゲなどで身を守っているので、それに対応した動物しか食べることは出来ません。似たような生活をしている動物同士は食べ物をめぐってライバル関係になりますが、捕食者から身を守るために協力関係にもなります。同じ環境に何百種、何千種という生き物がいても、全く同じ暮らし方をしている生き物は二つとありません。そしてお互いの関係性の中で独自のポジションを占めています。逆にポジションを得ることが出来なければその環境に暮らすことは出来ません。ある環境に棲む生き物の種類が多ければ多いほど、利用可能なポジションの数も増え、より多種多様な生き物が暮らすことができます。

 

<ヌーとシマウマは食べ物をめぐってはライバルだが、大移動のときは協力関係になる>

 

これは人間社会で、街により多くの職業や会社ができるほど、それに依存してより多くの職業や会社が増える様子にとても似ています。逆に一つの会社が倒産すると、取引関係にある他の会社に負の影響が出るように、一種の生き物がある環境から居なくなると、連鎖的に生物多様性が低下する可能性があります。そして森林の生物多様性の下支えをしているのは勿論「木」です。違法な伐採などによって損なわれた森林に適切な樹種を植えることによって、ケニア沿岸固有の生物種と、それを支える生物多様性を維持することができるのです。

 

ケニア沿岸林について紹介したポスター(PDF)がこちらにあります。ご自由にお使いください。

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