シリア紛争から10年。紛争下の子どもたちが、夢を持ち続けるために。

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの海外事業部プログラム・コーディネーターの福田です。
シリア国内および周辺国で避難生活を送る子どもたちに支援を届けるために、皆さまの想いとともに、精一杯活動に取り組んでまいりますので、よろしくお願いいたします！
 

いま、レバノンに避難している多くのシリア難民の子どもたちは、教育を断念せざるを得ない状況に置かれています。教育を受けられなければ、例えば、学校が楽しかったから「将来は先生になりたい」と思ったり、理科の授業が楽しかったから「科学者になりたい」と思ったり、というような夢を描くことも難しいでしょう。

私が活動のなかで話を聞いたり、一緒に活動したりした多くの難民に共通しているのは、故郷に戻りたいという想いがあることです。難民としてヨルダンに逃れたシリア人の同僚は、自分の家が紛争によって壊されたことを知っていても、家の鍵は捨てられずに毎日眺めてしまうと話していました。
自分の好きな町で、好きな家族や友だちと笑って過ごすこと、私たちにとっては「当たり前」とも思えるような、そのような日常が、シリア難民の子どもたちに共通した「夢」です。その夢ですら難しい毎日を、子どもたちは送っています。

私は、シリアやレバノンを含む中東地域の強みは、地域社会のつながりの強さだと思っています。だからこそ、セーブ・ザ・チルドレンの活動では、私たちが直接、支援活動を行うというよりも、地域の人々の思いと力を生かすことを大切にしています。

以前別の団体で、パレスチナ自治区ガザ地区で子どもの栄養不良予防のための活動をしていた際の印象的だった話をご紹介します。この活動では、地域のお母さんたちに、自分たちの地域の人々に対して情報提供や啓発活動をするボランティアとして活躍してもらっていました。 

最近は少なくなりましたが、この地域では、女性が中学生くらいの年齢で結婚して学校を中退してしまうケースもあります。ボランティアのお母さんたちのなかには、早くに結婚して教育を断念し、夢を諦めざるを得なかった人たちもいました。ですが、それまで社会で活躍する機会があまりなかった彼女たちが、活動を通して地域社会において新しい役割を果たすようになり、皆から頼られる存在になりました。誇りを持って生き生きと活動していた彼女たちの姿は、とても印象に残っています。

何より、そのようなお母さんたちを見て、子どもたちが「お母さんみたいになりたい」と言っていたこと、その時のお母さんと子どもの笑顔に、たくましさと希望を感じました。また、子どもたちにとって、周りに尊敬できる存在がいることは大切なんだと改めて感じさせられました。今後も、子どもたちに直接働きかけたり、支援を届けたりするだけではなく、家族やコミュニティ全体のエンパワーメントを通じて子どもたちに希望を持ってもらえるよう活動していきたいと思います。
 

シリア国内で避難生活を送る子どもたち、そして周辺国には、難民として生まれた子ども、度重なる避難を経験し何度も難民になった子どもなど、さまざまな境遇の子どもたちがいます。私たちは、子どもたちが将来への夢を持ち続けられるよう支援をしなくてはならないと強く思います。
 

シリア紛争から10年が経ち、世界ではさまざまな自然災害や紛争が起こり、日本を含む国際社会のシリア国内や周辺国の子どもたちへの関心も薄まりつつあります。子どもたちが将来への希望をもって生きられるようなコミュニティづくりに取り組んでまいりたいと思います。