揺れるこころを見える化する「トーキングマット」子ども版を作りたい!

支援総額

1,809,700

目標金額 1,500,000円

支援者
85人
募集終了日
2021年4月19日

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2021年07月31日 11:23

「私の目標」を見える化する~リハビリテーション現場での活用~

 皆さん、こんにちは。SDM-Japanコアメンバーの市川と申します。

 

 トーキングマットは、様々な現場で活用できる可能性があります。リハビリテーション医療や介護の現場もその一つ。今回は、失語症があり訪問リハビリテーションを利用されているAさんと、閉じこもりがちで自治体の介護予防事業の対象となったBさんを例に、言語聴覚士である私の視点からリハビリテーションの目標設定の場におけるトーキングマットの可能性についてご紹介したいと思います。

 

 

意思や選好が反映された目標設定に向けての第一歩:失語症のあるAさん

 

 Aさんは50代の女性で、右上下肢の不全麻痺と、身近な事柄に関しては聞き手が援助すればコミュニケーションが成立するレベルの失語症がありました。もともとのケアプラン上では「自分の意思が他者に伝えられるようになり、交友関係が広がる」という主目標が挙げられており、訪問言語聴覚療法を開始することになりました。初回の訪問時、リハビリテーションに関する説明を行い同意をいただく場面で、Aさんが日常生活動作に関する項目の部分を何度も指差し、何かを訴える様子がみられました。

 

 そこで、ジェスチャ―や絵、書字などのコミュニケーション支援を行いながらAさんの思いを確認したところ、「会話だけでなく、実は日常生活の中でも困りごとがあるが、それを誰にも言えていない」ということでした。そこで、Aさん自身が現在の生活課題をどのように認識しているのかを明らかにし、訪問言語聴覚療法の目標に反映させるとともに、その結果を介護支援専門員とも共有して、必要に応じてケアプランの再検討を行うことを提案し、了承を得たうえでトーキングマットのセッションを行うことになりました。

 

 トピックは「みのまわりのこと」を選択し、トップスケールは「自分でできている/どちらともいえない/自分でできていない」としました。トーキングマットの手続きはすぐに理解されましたが、失語症があるAさんの表現したい内容を私がキャッチするために、Aさんが許容できるコミュニケーション支援を行うよう常に心掛けました。

 

 セッションの中で、「ひとりで生活していることから日常生活は問題ないと思われているけど、右側の手や指や顔の麻痺があって違和感があったり細かい動作やお化粧がうまくいかないこともある」「食事中、時にむせることがある」という趣旨の表出がありました。また、ご家族の話題になった際に「電話はまだ難しいが、離れた家族と気軽に連絡を取り合いたい」「LINEは私でも使えるのかな」という趣旨の表出もあり、Aさんご自身も、自分の中にある(それまで気づいていなかった)思いに気付くことができた時間になりました。

 

    図1. Aさんとの初回セッション終了後のマット

 

 日常生活は自立しており、周囲からすれば一見「問題ない」ようにみえても、Aさんご自身としては整容や飲食、家事の一部の場面で難しさを感じていることが明らかとなりました。これはトーキングマットならではの効果であると考えています。すなわち、Aさんとのコミュニケーションは聞き手の配慮があることで成立しますが、失語症のためにどうしてもYes-No中心のやり取りになります。日常生活の様々な動作や活動は、できるか/できないか、で考えれば、確かにAさんは「できる」のですが、その奥にある「どのように(その動作や活動を)したいか」ということは表面化されにくいところがあると思います。この点、トーキングマットを用いたThinkerとListenerのやり取りにより、Aさんが「どのようにしたいか」ということが焦点化され、Aさんの思いを共有することができたのだと思います。

 

 このあと、別日に「つたえること」「わかりやすさ」「いえのそと」「しごと/きょういく」の各トピックでセッションを行った結果、Aさんご自身にとって納得感の高いリハビリテーション目標を設定することができました。また、その内容を介護支援専門員やご家族とも共有したい、ということで、ケアプランの変更や家族間でのLINEアプリの使用が始まりました。

 

 

意思や選好が反映された目標設定に向けての第一歩:閉じこもりがちのBさん

 

 Bさんは70代の女性で、自宅でお一人暮らしをされています。これまで大きな病気や怪我をしたことはありませんでしたが、最近自宅に閉じこもりがちになったということで、自治体が実施する介護予防事業の対象となりました。

 

 はじめてBさんとお会いした時、腰や膝の痛みを強く訴えておられました。そこで、トーキングマットを使用して、まず「やっていること」と「やっていないこと」をイメージしていただきました。その結果、「いえのそと」のトピックでは、そのほとんどが「どちらともいえない」「やっていない」に置かれました。続いて、2回目のセッションでは、1回目に「どちらともいえない」「やっていない」に置かれたオプションカードを用いて、「やりたい/どちらともいえない/やりたくない」というスケールで各活動を考えていただきました。セッションの中で、Bさんは若いころに取り組んでいたバレーボールの話や、10年ほど前まで友人とよく外食しながらおしゃべりをしていたことを語り始め、「そういえば、いろんなことをしていたわね。こんなこと、忘れちゃってたわ。」とおっしゃいました。

 

   図2.  Bさんとの2回目のセッション終了後のマット

 

 トーキングマットのセッションを通して、買い物や旅行、外食、美容室通いなど、Bさんは自身が忘れていた「好きな活動」の記憶を再確認することができたようにみえました。そして、「こちらに引っ越してきてから、お友達もいないし行く場所もなければ、出かけないわよね」と表出されました。閉じこもりという状態の奥にある、Bさんの思いに触れることができました。同時に、Bさもまた、自身の心の奥にある自分の思いに触れることができたのかもしれません。その後、Bさんの了承を得て、担当の保健師さんとも共有し、地域でのつながりを作るという視点から支援を開始することになりました。

 

 トーキングマットは「考えるツール」であるといわれますが、今回ご紹介した2事例を通して、内省により頭の中を整理し、生活課題を焦点化し、そしてやりたいことを見つけることに素晴らしい威力を発揮するツールであると感じました。そして、ご本人の意思や選好をふまえた「実現したいこと」が明確になるという点では、リハビリテーションの目標設定の場面でも活用できる可能性が高いものと考えます。

 

今後も、トーキングマット研究会での議論を通して、リハビリテーションの現場での活用可能性を探っていきたいと思います。

 

※本稿の作成にあたり、Aさん、Bさんのご両名ともに掲載のご承諾をいただいていることを申し添えます。

 

SDM-Japan コアメンバー 市川 勝

〔言語聴覚士、認定言語聴覚士(失語・高次脳機能障害領域)、認知症ケア専門士〕

リターン

5,000


SDM-Japanからのお礼状(5千円)

SDM-Japanからのお礼状(5千円)

■SDM-Japanメンバーからお礼のお手紙をお送りいたします。

申込数
6
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2021年5月

5,500


【限定30個】トーキングマット入門パック(日本語版)

【限定30個】トーキングマット入門パック(日本語版)

■SDM-Japanメンバーからお礼のお手紙をお送りいたします。

■英国式トーキングマット「健康とウェルビーイング」フルセットのうち、以下の1パックを入門パックとしてお届けいたします!定価よりお求めやすくなっています。

◆簡易解説パンフレット(英語冊子・日本語訳付き)
◆「かんきょう&自由時間のすごしかた」パック(いえのなか、いえのそと、かんきょうの3テーマ)日本語版

※Talking Mats Leisure & Environmentセット(英語版)と日本語版ではカードの枚数・種類、同梱物の内容が異なる場合があります。

申込数
23
在庫数
7
発送完了予定月
2021年10月

5,000


SDM-Japanからのお礼状(5千円)

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■SDM-Japanメンバーからお礼のお手紙をお送りいたします。

申込数
6
在庫数
制限なし
発送完了予定月
2021年5月

5,500


【限定30個】トーキングマット入門パック(日本語版)

【限定30個】トーキングマット入門パック(日本語版)

■SDM-Japanメンバーからお礼のお手紙をお送りいたします。

■英国式トーキングマット「健康とウェルビーイング」フルセットのうち、以下の1パックを入門パックとしてお届けいたします!定価よりお求めやすくなっています。

◆簡易解説パンフレット(英語冊子・日本語訳付き)
◆「かんきょう&自由時間のすごしかた」パック(いえのなか、いえのそと、かんきょうの3テーマ)日本語版

※Talking Mats Leisure & Environmentセット(英語版)と日本語版ではカードの枚数・種類、同梱物の内容が異なる場合があります。

申込数
23
在庫数
7
発送完了予定月
2021年10月
1 ~ 1/ 19


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