支援総額
目標金額 1,500,000円
- 支援者
- 172人
- 募集終了日
- 2021年2月22日
バルファキス&チョムスキー ニューヨーク対談 ④
ニューヨーク対談 財政民主化への道 ④
ヤニス・バルファキス×ノーム・チョムスキー
2016年4月16日 ニューヨーク公共図書館(NYPL)
https://www.nypl.org/audiovideo/yanis-varoufakis-noam-chomsky
ニューヨーク対談の続きですが、今回の重要部分は、第二次大戦後に、どうしてアメリカのドル基軸通貨体制ができあがったか?そのバルファキスさんならではの解答の一端です。これは、本プロジェクト『世界牛魔人――グローバルミノタウロス』の内容に深くつながるところでもあります。戦勝国アメリカの軍需産業「こそ」が、世界大恐慌の最終解決に導いたといえますが、さて、その膨大な軍事産業の後始末を戦後どうするのか?この解決案としてのアメリカの戦略が説明されるわけですが、ここに、戦後世界に広がる「大量生産と大量消費」の起源があり、世界の「アメリカ化」がおきた原因がよくわかる部分です。まさに現代の課題につながる歴史的深層の物語です。
―――――――――――――
(前回から途中を略しての続きです)
チョムスキー ここら辺で1953年の一件がまた意味をもってくるね。
バルファキス もちろん。1953年は、第二次世界大戦後のアメリカの覇権拡大という物語の一場面だ。この物語は二部構成になっている。第一に、冷戦の物語がある。これは重要な物語だ。トルーマン大統領やトルーマン・ドクトリン以降、アメリカはどんどん権威主義的になっていった。ここでも発端はギリシャだ。言っただろう? 悪いことはすべてギリシャから始まるって。冷戦もベルリンではなくギリシャから始まったのだ。1944年12月にアテネの街頭に端を発し、それがベルリンへ飛び火し、CIAは世界帝国の行く手を阻む(とCIAが判断した)政府の転覆を初めて遂行した―モサッデク政権の転覆だ。その次の標的はギリシャ政府だった。
僕はCIAが作り出した独裁政権のもとで幼少期を過ごした。国防総省(ペンタゴン)がギリシャの司令官たちを使って独自にクーデターを決行する前に、CIAが先手を打ったわけだ。1967年にCIAとペンタゴンはどっちが先にギリシャでクーデターを仕掛けられるかって競争をしていた。互いに独立して動いていたんだね。ペンタゴンは国王や司令官たちに働きかけ、CIAは大佐たちに働きかけていた。先に動いたのは大佐たちだった。機動力に長けていたおかげで、速やかに行動がとれたわけだ。その後、ピノチェトの一件があり、ラテンアメリカにおける暴力行為がそれに続く。第一の物語はこれだ。1944年以後のアメリカによる帝国主義はもはや常識と化しているよね。
第二の物語はこれよりも穏やかな話だけど、第一の物語よりも面白い。始まりはブレトンウッズだ。当時権力を握っていたニューディール派の面々―そこには善良な人たちもたくさんいた―による、アメリカ恐慌の防止をめぐる物語だ。そのときニューディール派はある不安に突き動かされていた。1944年には終戦の兆しが見えてきていた。すると、航空母艦や戦車、弾丸やジープなどの製造に使われたあのきらびやかな工場の使い道が問題となる。設備を調整すれば自動車などの耐久消費財を生産することも可能だが、残念ながらアメリカにはこうした工場が製造しうる商品をすべて受け止めるだけの需要がない。つまり、まさにアメリカ軍兵士が戦場から帰還してくる時期に投資が滞ることになってしまう。ニューディール派はこの危険性を「1949年の場面」(the 1949 moment)と名づけた。1929年からちょうど20年後の1949年に新たな制度崩壊が起きるんじゃないかって思ったんだ。
チョムスキー かの有名な「ドル・ギャップ」(dollar gap)だね。
バルファキス そのとおり。だからニューディール派はこうした事態が起こらないようにという願いを込めて壮大な「世界計画」(グローバル・プラン)を設計した。それに、ニューディール派は冷戦を意識してもいて、アジアやヨーロッパが共産主義に染まらないようにするための策が急務だと感じていた。こうした2つの要素が組み合わさってできた世界計画―ブレトンウッズ体制はその一部分にすぎない―は、要約すると以下のようになる。まず、ヨーロッパをドル化する。そうすれば、ウェスティングハウス製の洗濯機やきらびやかな自動車や飛行機、つまりアメリカ産だがアメリカでは消費しきれない製品をヨーロッパの人々が買えるようになる。戦争によってヨーロッパは焦土と化していたので、ドル化は必須だった。もちろん、ヨーロッパ諸国には自国通貨をもつ権利が認められたけど、こうした諸通貨はあくまでドルに固定(ペッグ)されていた。要するに、ドルを別の形でもつことになったんだ。こうして固定相場制が生まれた。金本位制と似ていたけど、一つ重要な違いがある。ニューディール派は世界恐慌の恐怖を骨身に沁みてわかっていた。この人たちの伝記を読めばわかるけど、この人たちは文字通り身体的な苦しみを世界恐慌中に味わっており、もう二度とこんなことは経験したくないと切に思っていたんだ。また、ニューディール派は金本位制のある重大な欠陥をよく理解していた―黒字再循環装置(system of surplus recycling)の欠如だ。政治的な装置を使って黒字生産国から黒字を回収し、赤字地域への生産的投資という形でそれを再利用する。そうすれば、黒字諸国の製品を買うための所得が赤字諸国に生まれる。こうして、アメリカを含む黒字諸国は黒字を保つことができるわけだ。世界計画を維持するために、黒字と赤字を再循環させ続けること。考えてみると、これはニューディール政策の継続としても理解できる。
チョムスキー その体制でドイツ再建が担った役割は重要だよね。
バルファキス もちろんさ。僕も最近まさにこれに関する1946年連邦議会文献を調べていたところだ。世界計画の成功には、ヨーロッパとアジアの二本柱が必須だった。つまり、強い欧州通貨と強いアジア通貨が衝撃吸収装置として機能する必要があった。調べてみると、感動的な文献がたくさんみつかった。「アメリカ資本主義にも、資本主義のご多分に洩れず必ずやショックが起きるだろう」と書いてあったりしてさ。ここ20年間の政策立案者たちにはみられないような見識の深さを当時の為政者たちはもっていた。不況の必然性について、あの頃の人たちはよくわかっていたんだ。焦土になったヨーロッパはドル化するしかないとして、もし戦後の経済で単一の通貨にアメリカが頼ってしまった場合、ドル圏(すなわちアメリカ)で起きる危機はそのままアジアやヨーロッパへと飛び火してしまう。そうなれば、その衝撃はおさまるどころかむしろ一層大きくなってしまうかもしれない。だから衝撃吸収装置が必要であり、衝撃を吸収してくれるような欧州通貨とアジア通貨が必要なのだ、とね。一定の強度を保つために、これらの通貨はある条件を満たす必要があった……
チョムスキー そうだね。支えとなる……
バルファキス そう、支えとなる産業がないといけない。
チョムスキー ドルへの従属という条件も見逃せない。ケインズ案との相違点はここだね。
(次回に続く)
リターン
3,000円
純粋応援コース
那須里山舎と『世界牛魔人ーグローバルミノタウロス』翻訳出版プロジェクトを応援してくださる方に、㈱那須里山舎より心を込めて感謝のお手紙をお送りいたします。
- 支援者
- 21人
- 在庫数
- 制限なし
- 発送完了予定月
- 2021年6月
5,000円
完成書籍先取りコース
出版プロジェクトを応援しつつ『世界牛魔人ーグローバルミノタウロス』を本棚に置きたいという方へ。那須里山舎から本書を一冊、発売日前にお送りします。あわせて、感謝のお手紙も同封いたします。
- 支援者
- 107人
- 在庫数
- 189
- 発送完了予定月
- 2021年6月
10,000円
先行出版記念イベントコース
がっつりと応援しつつ制作チームと共に出版を祝いたいという方へ。那須里山舎より以下の三点セットをお送りいたします。
1、ご賛同者様限定先行出版記念イベントの招待状(オンライン開催を予定しておりますが、開催日程については調整中です)
2、『世界牛魔人ーグローバルミノタウロス』翻訳本一冊(発売日前)
3、那須里山舎より感謝のお手紙
- 支援者
- 23人
- 在庫数
- 22
- 発送完了予定月
- 2021年6月
30,000円
マックス応援コース
最大限の応援をしていただける方に、すべてのリターンに加えて、翻訳本の巻末にお名前を掲載させていただきます。以下のセットとなります。
1、ご賛同者様のお名前を翻訳書巻末に掲載
2、ご賛同者様限定先行出版記念イベントへの招待状
3、『世界牛魔人ーグローバルミノタウロス』完成本一冊(発売日前)
4、那須里山舎より感謝のお手紙
<*注意事項:このリターンに関する条件の詳細については、リンク先
(https://readyfor.jp/terms_of_service#appendix)の「リターンに関するご留意事項」をご確認ください。>
- 支援者
- 24人
- 在庫数
- 25
- 発送完了予定月
- 2021年6月