詩　「王冠」

まだまだ時間はあると思っていたのに、あと20数日になりました。

応援ありがとうございます。80パーセントを超えてすごくほっとしています。一方、はらはらと不安な気持ちもあって、ひたすらに、成立を願ってます。

 

きっと、潜在的な読者はたくさんいると思います。情報が届きますように、宣伝してください。蝦名さん、パソコンもスマホももたなかったし、人間関係もとても少なかったし、むしろ行方不明者になりたがっているような人だったし、「作者と読者とは一生会わないものですよ」と日頃言っているような人だったし、結社にも所属しないし、発表の場ももたなかったし、
なのに、ここまで応援いただいて、蝦名さんの短歌さんすごいよね、やっぱり、と思います。

一方、野樹も、コミュニケーション力というか、ネットワーク力、息も絶え絶えなので、蝦名さん、もっとしっかりした友だちをもっておくべきだったよ、と嘆息していますが、私なりに、誠意を尽くしたいと思っています。

 

蝦名さんは、詩も書いていました。伊丹イタリアというペンネームで『カール・ハインツ・ベルナルト』（1994）という私家版の詩集を出しています。その後の詩篇も預かっています。未収録の昔の詩篇は、私が探したり送ってもらったりで集めました。

亡くなる前に、いつか詩集を出すとき、名前はどうしますか、と聞いたら、蝦名泰洋で、ということでした。ことのついでに書いておきます。無事に歌集が出せたら、詩集も出したいと、私はひそかに思っています。

『カール・ハインツ・ベルナルト』から、詩をひとつ紹介しますね。このクラファンをはじめてから、しきりに思い出すので。

 

　　　　王冠　　　　　

 

だれかが

だれかを応援してる

そう思わなければ

つらいじゃない

迎えにくる人がいなかったら

いつまででも一人でジャングルジムにいた

生きるということは

家に帰ったあとも

あのジャングルジムで

一人で老いるということだ

けれども怖いのは

そんなことじゃない

だれでも

だれかに応援されてる

そう感じなければつらいじゃない

地球が青いのはひかりのせいだけど

ひとのまなこの裂け目から流れるものが

血でない理由はなんなんだろう

すくなくとも五千年にひとりのワタシが

りんごの木の下で待っている

ワタシが

おりてくるのを待っている

 

　　リンドヴァーグのヴォーカルはね

　　風の谷のナウシカでね

　　グリフィス天文台で

　　泣いているよ

 

だれでも

だれかに応援されてる

そう誤解する権利を

神さまに要求できなかったらつらいじゃない

その

　地球色の液体をぬぐって

　　りんごの木の下に

　　　おりておいで