吉備中央町は、国登録有形文化財である「天籟庵」茶庭の復元修理をはじめとした町の文化財を改修・活用していくためのクラウドファンディングに挑戦いたします。
○吉備中央町とは
吉備中央町は、岡山市、総社市、高梁市、真庭市、美咲町に隣接し、岡山県の中央に位置する町です。中国山地と岡山平野の中間にあたり、標高120~500mの高原地帯で、昔から吉備高原と呼ばれていることから、教育・福祉・文化の中心をめざす「吉備高原都市」が町の中央にあります。町出身者には日中国交正常化に尽力した岡崎嘉平太や、昭和を代表する日本庭園作家である重森三玲がいます。恵まれた自然環境、温かい住民や地域の連帯感、日本の原風景を思い出させる景観など多くの個性がちりばめられた町である反面、本町の人口は平成17年には14,040人だったものが、令和5年5月には10,435人と急激に減少、令和2年の国勢調査では本町の高齢化率は41.6%で全国平均28.4%を大幅に上回っており、基幹産業の農業、自然環境や景観を守ることが困難になってきています。
このことは、文化財についても同じことで、所有者の高齢化や管理者不足など文化財の保護においても様々なことが課題となってきております。
現在は「デジタル田園健康特区」としてデジタル技術を駆使し、住民サービスの向上や地域課題解決に取り組んでいます。
○庭園作家 重森三玲
(※撮影者より許諾を得て掲載しています)
重森三玲は1896年(明治29年)、岡山県上房郡吉川村(現吉備中央町吉川)で誕生しました。日本美術学校、東洋大学を卒業後、京都に移住し日本庭園の研究を独学で進めました。全国各地の庭園を実測調査し『日本庭園史図鑑』(全26巻 1936年~1939年)や『日本庭園史体系』(全36巻 1971年~1976年)を記したことをはじめ、日本庭園界に多大なる功績を残しています。特に『日本庭園史図鑑』については、作庭家として活躍する以前、室戸台風(1934年)による、文化財の被害を嘆き、約3年をかけ全国の日本庭園約300庭を調査、編纂したものであり作庭家としての土台となったと言われています。日本の伝統美である茶道、華道の奥義をも極めるとともに、1975年(昭和50年)に亡くなるまで約200もの庭園を作庭し、「永遠のモダン」を追い続けた作品は現在でも国内各所で見ることができます。
重森三玲が手掛けた庭園(一例)
東福寺方丈庭園(1939年 京都府京都市) 岸和田城八陣の庭(1953年 大阪府岸和田市)
※国指定名勝 ※国指定名勝
功徳庵(1963年 岡山県岡山市) 友琳の庭(1969年 京都府京都市)
※1999年 岡山県加賀郡吉備中央町へ移築 ※2002年 岡山県加賀郡吉備中央町へ移築
漢陽寺庭園(1969年~1973年 山口県周南市)豊國神社秀石庭(1972年 大阪府大阪市)
石像寺四神相応の庭(1972年 兵庫県丹波市) 松尾大社松風苑(1975年 京都府京都市)
写真:功徳庵、天籟庵、友琳の庭は吉備中央町撮影
その他は2015年 水野克比古『重森三玲の庭園』光村推古書院から引用
(※著者より許諾を得て掲載しています)
○「天籟庵」
1914年(大正3年)、重森三玲は自宅に茶室を設計しました。この時三玲は18歳であり、その後茶室に付随する茶庭を造ることになるため、ここが昭和を代表する作庭家となる第一歩であったと考えてもあながち間違いではありません。
自宅があった場所は生家跡として保存し、現在も地域住民が清掃管理を行っています。茶室は1969年(昭和44年)三玲が愛した吉川八幡宮の西側に移築、1999年(平成11年)重森三玲記念館が併設され、現在に至ります。
三玲の作庭の基調は枯山水庭園(石や砂、苔で山水を表現した庭園)ですが、天籟庵は他の作品とは一線を画した表現技法が使用されています。四畳半の茶室と三畳間に値する広さの水屋(移築時に増築)から構成されており、移築時に作られた茶庭は木や草を用いず、全面を彩色セメントにした珍しい作品です。そのような設計でも地面に水流と渦をあしらい、海と陸とを抽象化した意匠を表現しています。また、竹垣の内側は吉川八幡宮にちなんで「八」の文字をデザインしたり、天籟庵にちなんで「天」の文字をデザインしたりすることで、地模様以外にも創作性が随所に見られます。
(茶室から庭を撮影)
写真:2015年 水野克比古『重森三玲の庭園』光村推古書院から引用
(※著者より許諾を得て掲載しています)
○プロジェクト内容
今回吉備中央町がクラウドファンディングで主に実現したいことは、天籟庵周辺の美装化です。特に竹垣は町や地区住民によって修復を都度実施してきました。
(1998年記念館開館に合わせて修復した竹垣)
(2010年の国民文化祭に合わせて修復した竹垣)
しかし、近年は日光や風雨にさらされ、褪色が目立ち一部は腐食している状態です。見学に来られた方がまず目にする場所ですが、経年劣化による傷みはもはや全体に広がっています。
天籟庵は国登録有形文化財として指定を受けていますが、露地や茶庭部は未指定の部分となります。したがって修理するための補助金はなく、現状は自費で修復するしか方法がありません。また、地域住民の高齢化や若年層の人口流出も伴い、なかなか思うような修復が出来ない状況です。しかし、三玲の想いはデザインに全て表現され、どれもがかみ合って1つの作品ができているため、それらを失わぬようにしていきたい気持ちに変わりはございません。
来年には天籟庵茶室設計から110年、移築から55年を迎えます。「永遠のモダン」を追い始めた重森三玲の原点の作品を、功績とともにこれからも伝えていきたいため、ぜひ形として残るようなものを作りたいと考えております。
○目標金額
目標金額は420万円です。ご支援いただいた資金は、天籟庵の改修費用として充てさせていただきます。具体的には、天籟庵周辺の竹垣を交換し、専門の職人による丁寧な作業を行い、その景色を長期的に残すための保全活動や対策を実施する予定です。竹は真竹を使用し防腐剤を注入することで劣化速度を遅らせ、竹本来の美しさを少しでも長く見られるようにしたいと考えております。しかし、良質な竹の選定期間や防腐剤を注入する期間、さらには職人の作業量は膨大なものになると予測されるため、約700~750万円程度は必要となってきます。吉備中央町としても貴重な文化財を守ろうと手を尽くしてまいりましたが、中山間地域の一自治体だけでは実現が難しい部分が多々あります。歴史や伝統に興味を持つ方々や、文化財の保護に関心のある方、庭園の文化に興味がある方のみならず、少しでも文化芸術に興味を持ってくださる方のご支援なくしてできるものではありません。このプロジェクトは、地域の誇りを守り、そして失ってはならないかけがえのない物を伝えていくための取り組みです。このプロジェクトへのご支援は、単なる費用の捻出だけでなく、地域の文化と歴史の保護に寄与することに繋がります。吉備中央町の文化アイデンティティを形成する一部でもあり、次世代にも伝えていかなければならない貴重な文化財です。どうか皆様のお力をお貸しください。
本プロジェクトは、支援総額が期日までに目標金額に届かなかった場合でも、目標金額分を自己負担するなどして、必ず上記の内容の通り実行致します。
ご支援いただいた方は税制優遇の対象となります。また、修理後の様子等をお知らせする予定です。
最後に、ここまで目を通していただきありがとうございます。吉備中央町は、地域の誇りと文化を守るために全力で取り組みます。皆様のご支援、ご協力を心からよろしくお願い申し上げます。
○関係者からのメッセージ
難波 健吾(重森三玲記念館 館長)
今回、吉備中央町が挑戦するクラウドファンディングは、三玲の故郷吉川地区民はもとより、全吉備中央町民が文化財を活用した町おこしに繋げるための希望の光であるとの認識を持っています。
日本全体が少子高齢化社会となり、日本政府も異次元の少子高齢化対策と銘打って打開を図っているように、日本中のほとんどの自治体の共通した課題となっています。そのような中で、具体的な活用方法等を記さずしてのクラウドファンディングへの挑戦は無謀の極みとも思えますが、三玲の『永遠のモダン』を絶やさぬための挑戦でもあります。皆様のご支援、ご協力を心からお願い申し上げます。
○税制優遇について
いただきました寄附は、吉備中央町への寄附となり、寄付金の受付及び領収書の発行を行います。
個人による寄附
2,000円以上の寄附をされた方は、寄付金受領書を添えて確定申告を行うことで所得税に関する優遇措置として「税額控除」か「所得控除」のうち有利な方を選択できます。一部の住民税についても優遇措置の対象となる場合があります。
法人による寄附の場合
「寄付金特別損金算入限度額」の枠が適用され、当該限度額の範囲で損金算入することができます。
※寄付金控除の詳しい情報については自治体または所轄税務署、
国税庁ホームページをご覧ください。
○領収書の発行について
寄附をされた方には、後日吉備中央町より「寄付金受領書兼領収書」を発行いたします。
証明書名義:READYFORアカウントにご登録の「リターン/ギフトの発送先の氏名」を宛名として作成します
証明書発送先:READYFORアカウントにご登録の「リターン/ギフトの発送先ご住所」にお送りします
寄附受領日(証明日):READYFORから実行者に入金された日となります
※ご寄附後に上記情報を変更することはできませんのでご注意ください。
確定申告の際は、ご本名と現住所(住民票に記載のご住所)、法人様の場合は登記上の名称とご住所での領収書が必要となりますのでご注意ください。
領収書の送付については2023年11月頃から順次発送予定です。発行までお時間をいただきますが予めご了承願います。
○留意事項
・本プロジェクトはAll-in形式のため、ご寄附確定後の返金やキャンセルはご対応いたしかねますので、何卒ご了承ください。
・寄附完了時に「応援コメント」としていただいたメッセージは、本プロジェクトのPRのために利用させていただく場合があります。