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2021年02月18日 08:02

抜粋。その4。『花南に出逢いが在った』

 花南が図書館のパソコンから離れ、一Fロビーでひと休みしていると、一人
の男子が近づいてきた。背が高くてロングヘアー。優しそうな瞳だった。
「話しかけてもいい…」
「うん」
 花南は「うん」と言いつつも戸惑った。男の子と話すのは大輔だけだった。
大輔は保育園からの幼馴染。見ず知らずの同世代の男子は初めてだった。
「君を何時も見かけていたよ。僕が図書館に来ると君がいて、黙々と、脇目も
振らずに、楽しそうに勉強している。どうしたらそんなに楽しそうに勉強でき
るんだろうと気になっていた。どんな勉強しているの…」
「今までは中学と高校一年生を少し」
「そうなんだ。家にいると怠けてしまうから学校が休みの時は此処に来る。浪
人したくないから。僕は榊陽大(あきひろ)。高一。君は…」
「遠野花南。今日は金曜日なのに学校が休みなんだ」
「期末試験で午前中で終了。試験も今日で終わり」
「それでか」
 花南は少年の笑顔につられて微笑んだ。気にかけてくれている男子がいたな
んて考えもしなかった。そう想うと鼓動が高鳴った。
 ドキドキが始まった。
    ドキドキすると顔が紅らんでゆく。
 花南。初めての体験。
    ドキドキも紅らむのも。
 紅くなってゆくのが恥ずかしくて俯いてしまった。
 小声で「サンドウィッチ。食べる。わたしが作ったの」。
 少年は花南の隣に座って玉子サンドを頬張った。
「あれっ。食パンの厚さがサンドウイッチ用だ。だから美味しんだ」
「パン屋さんでサンドウィッチ用に切ってもらっているんだ」
「君は学校に行っていないんだね」
「登校拒否の不良中学生」
「訳がありそうだね」
「まあね。四月一日から不良を止めて働く」
「何処で働くの」
「まだ決まっていない。三月になったから面接を受けようと思って探している。パン屋さんで働きたいんだ。焼きたてのパンが大好きだから」                                
「そしたら四月一日からは君が休みの時にしか図書館に来られない」
「だから今のうちに中学の勉強はこれで良し…‼…にしたいんだ」
「今日思い切って話かけて良かった。グズグズしていたら間に合わなかった。
間に合った。今年に入って何時話しかけようかと思っていたんだ。なかなか勇
気が出なくて…。嫌がられたらどうしようと思うとドギマギしてしまって…」
 少年は『嵐』の相葉君に似ていた。相葉君は他のジャニーズと違ってチャラ
くない。自分の顔の良さを得意そうにしていない。
 花南はクスッと笑った。
「あれっ。何か変なこと言った…」
「うう~ん。おかしなことは言っていない。男の子もドギマギするんだ」
「するよ。恥ずかしいけれドギマギを乗り超えるには勇気だけ」
「わたしも恥ずかしいよ。今ドキドキしているもの」
「同じだね。あと少しで会えなくなるのはイヤだな。時々でも逢えるかな。四
月一日からも逢いたい。携帯番号を言うから僕に電話して」
 花南は言われた電話番号をガラケーに打ち込み発信した。
 直ぐに少年のスマートフォンが鳴った。
「これで連絡できる。今日は邪魔したね。サンドウィッチ。ありがとう」
 少年は二Fの学習室に駆け上がった。
 花南は火照った両頬に手を当てた。
 まだ熱い。紅色に染まっているんだ。恥ずかしかったのは紅くなったから。
どうして紅くなってしまったんだろう。知らない少年に声をかけられドキドキ
したから。相葉君に似ていなかったらドキドキしなかったのに。
 花南は少年の顔を思い浮かべ残りのサンドウィチを食べた。「間に合った」
は好意の印。登校拒否でも好意を持ってもらえるんだ。中学すら卒業できない
と世間は人間失格と見做す。そこから逃れて働こうとする少女に好意を持って
くれる少年もあっち側にいるとは…。今年に入ってから話しかけるチャンスと
タイミングを計っていたんだ。もしかして運命の出逢いかも…。

「子どもは何もできない。今は我慢するしかない」
 母の言う通りに諦めていたならば嫌なことに会う回数は減っていた。それは
確かだ。でもその言葉を聞くと…そんなことはない。子どもでも絶対に何かで
きる…と身体が震えた。震えたのは何かできるとの自信があったのではない。
何かをやろうとしなければ何時までも何もできない子どものまま。母を助けら
れない。母にばかり苦労をかけられない。母は愚痴のひとつも言わない。働き
づめなのに何時も明るい。優しい。頼りがいがある。そして働き者だ。でも知
っている。辛そうにしていなくとも時々束の間、悲しそうな表情になる。それ
は記憶から消えない。消えないかぎり少しは楽させたいと思う。パートも昼間
だけにしてやりたい。夜のコンビニのパートを辞めてもらうには子どもが頑張
るしかないのだ。働けないのが口惜しかった。母のように働けなくてもその辺
のオバさんには敗けない自信がある。                                
 健太と筋トレを続けてきた。懸垂だって五回できる。小っちゃいくせに健太
は一〇回。三つ下なのに駆けっこでは敗けてばかり。運動神経抜群の健太に思
い切り野球をやらせたい。それには働かないと無理。
 諦めなくて良かったこともあった。
 今年に入ってから矢野先生と出会った。
 そして今日は相葉君似の男子から声をかけられた。ドキドキさせられた。紅
くなってしまった。恐らく首筋まで紅くなった。玉子サンドを美味しいと言っ
てくれた。嬉しくて「ありがとう」と叫びたくなった。母の口紅を借りて薄く
塗っていれば良かったのに…。そうすれば少しは大人っぽく、可愛らしくなっ
たはず。これから図書館にはお洒落して口紅を忘れないようにする。 
 生きてきて良かった。
 諦めなくて本当に良かった。
    壁ドンされたらどうしよう。
 固まってしまって動けなくなりそう。
 榊陽大の目を見つめるだけになってしまう。
 いや~だぁ~。
 壁ドンを待っているみたい。
    今日はもう集中できない。
 ひとつだけ気懸かりが在った。
 榊陽大から時雨の匂いが漂って来た。
 …どうしてだろう。わたしの気懸かりが的を得ていたら、そう遠くないうちに
分かるはず。今は気にしない。気にしてもしょうがない…
 花南は書き写した『中認』の試験問題をリュックに入れて図書館を出た。
 出る時に榊陽大にショートメールを送った。
『これから家に戻ります。今日はありがとう』
 返信は直ぐに来なかった。                        
 家の玄関に入った時にメールの着信メールの知らせ。

『僕こそ。今日はありがとう。これからヨロシク』
 

    翌日『中認』の試験問題を解いていると後ろから肩を叩かれた。
 美子だった。
「花南。変わらない図書館通いだね。パソコンに向かって何やっているの。後
姿から一心不乱のオーラが出ていた」。
「こんな時間に美子が現れるなんて。期末テストが終わったから…」
 この日の図書館は何時ものように静かだった。けれど高校生の男女が多かっ
た。何やら華やいでいた。テストが終わった安堵感。花南は到着すると直ぐに
榊陽大の姿を探した。来ていない。代わりに美子が登場。
「これで後は高校入試と卒業式を待つだけ」
「美子。これを見て。『中認』の試験問題。五教科あるんだ」
「へぇ~。『中認』って中学卒業認定試験のこと…」
「そうだよ。わたしは中学の卒業証書をもらえないから。十五歳になったら受
験できる。毎年の試験は一〇月。四月一日が誕生日だから受験できる」                                
「そっか~。花南の誕生日は嘘みたいな日だよね」
「そのおかげで今年の一〇月に中卒資格を持てるんだ」
「『中認』は知らなかった。花南。何処で知ったの…」
「知らないのも無理ない。美子には関係ないから。NHK学園高等学校が気に
なって問い合わせた。中学校の卒業証書が無くても受験できるかって。そした
らできない。かわりに『中認』を教えてくれたんだ。パソコンで調べると試験
問題と解答が載っていた。これが高校受験の内申書になると書かれていた。一
〇〇点中五〇点以上取れば合格とも。全然難しくなかった。でも試験慣れして
いなくて四〇分もあるのに気持ちが急いてしまって早トチリで満点は無理だっ
た。わたし。満点を狙っているんだ。そしたら中学の勉強を卒業できる」
「花南の言い方だと九〇点以上は取ったんだ。凄いね」 
「なんも凄くない。美子なら楽々満点取る」
「…と言うことは大学受験の時のように落とす為の試験ではないんだ。受から
せようとする試験なんだ。ところでさ。『大検』が無くなったの知っている。
それを知らせに来たんだ」
「えっ。無いの。どうしてさ…」
「安心しな。制度が変わって今は『高認』と呼ばれている。大検よりも難しく
ないみたい。あんたにとって朗報は十六歳になれば試験を受けられる」
「そうなんだ。図書館のパソコンで調べてみる。美子。ありがとう」
「あんた。『高認』を受けるんでしょう」 
「『中認』の後に受ける。『高認』も受からす試験だったら助かるな」
「多分、受からす試験だよ。『大検』は難しかったと言うウワサ。それで、そ
れを変えたんだ。ところであんた十六歳で『高認』に合格したら十七歳で大学
を受験しようと企んでいるのかい」
「そこまでは考えていない。高校の勉強に手が付いていない。わたしは恵まれ
ていると思う。中学を卒業していなくと『中認』があった。そして『高認』を
受けられる。受かったらみんなよりも一年早く大学を受験できる」
「あんたが恵まれているなんて言うと私。困ってしまう。あんたらしいけど。
大学は何処を狙っているの…」
「決めていない。ヨシ。これで高校の勉強が終わったと思うまで決めない」
「でも。あんた。Eテレの高校講座を欠かさず観ているじゃない。わたしも時
々観る。平日の十四時からだから、ほんとうに時々しか観られない。一日約二
時間の講座は勉強になる。それを中一の時から続けているから『中認』が簡単
と言えるんだ。わたしはのんびりと高校へ行く。あんたのマネはできないもの。けれど応援しているからそれを忘れたら怒るよ」
「美子。ありがとう」
「花南。今日は何時もとちょっと違う。何か良いことがあったの…」
「ナニが」       
「お洒落している。ウールの赤と黒のタータンチェックのキュロットは初めて
見た。トレーナーは白地に水色と黄色のスヌーピー。ストッキングは黒。少し
大人びている。靴も黒のローファー。何時もはスニーカーじゃない。とっても
似合っていて可愛い。それにさりげなく薄いピンクの口紅も。これは異常だ」
「別に。何もないよ」
「嘘。ウソ。うそ。白状しないとトモダチやめる」
「困ったな。どうしても言わないとイケナイ」
「ダメ」
「美子。笑わないと約束してくれる」
「する」
 花南は矢野先生の二万円を伝えた。
「それはそれは良かったね。でもそれだけでないでしょう。それだけだったら
お洒落する必要がないもの。ほら。思い切って吐きなさい。笑わないから」
 花南は観念した。
 誰にも告げずにいようと思っていた「榊陽大から声をかけられ嬉しかった」
を俯いて言った。玉子サンドウィッチを「美味しい」と言ってくれた。最後に
「携帯番号を交換」。
「やっぱり…。良いね。羨ましいな。恋だね。花南の青春が始まったんだ」
「内緒にしていてね」
「分かった。ところで花南を舞い上がらせた高一の男子は今日来ていないの」
「来ていない」
「そうかぁ。残念。私も会いたかったのに。機会を作って紹介してね」
「イヤだ~。恥ずかしい。それに…」
「それにって何さ」
「美子に獲られてしまいそう。だって美子はわたしよりも美人で可愛い。登校
拒否でもない。美子に獲られたらわたし。立ち直れない」
「あんた。意外とバカだね。花南と私はまったく別のタイプ。花南に心を動か
された少年が私にも気持ちを向けたら、あんた、誰でも良い証明。私はそんな
男子は御免。あんたには止めな…‼…って言う」
「そうかな~。そんなものなんだ。だったら近いうちに紹介する」
「おっ。そうこなくちゃ。早めにお願いね」
 美子はそう言い残して踵を返した。

 

 

 
 

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抜粋。その3。『作業服の男』抜粋。その5。『高校ってどんな処?』
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