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2021年02月19日 15:04

抜粋。その5。『高校ってどんな処?』

 机を並べて勉強するのは楽しい。困ったことがひとつだけ起きた。勉強して
いても勉強に集中できていたかは疑わしい。それにお喋りばかり。
 隣の人に注意される始末。そんな時には机に筆記用具やテキストを置いて一
Fロビーに避難した。これは席取りの反則。
 花南は反則を無視して階段を降りた。
 今日は浪人生が少ない。
 お喋りを止めたくなかった。
 話したいことが次々に浮かんでくる。
「高校ってどんな処。中学と何が変わった…」
「勉強できない奴は大勢いるが馬鹿はいない。イジメが無い。喧嘩はたまにあ
る。でもそれはイジメとは無関係。白昼堂々の男同士の対マン」 
「イジメが無いんだ」
「他の高校は分からないけれど俺の高校では無い。散々中学でのイジメを見て
きたから愛想をつかしているんだ。イジメる奴もイジメられる奴も馬鹿だって
みんな思っている。そんな奴が出てきたら双方がハブられる。受け狙いのイジ
メる奴とイジメられる奴のコンビが居てけっこう面白い。奴らにとっては学校
がネタ探しの場所。教師ネタが笑いを取る。学校はネタの宝庫だそうだ」
「陽大の高校は超進学校だからかな~」
「あんまり関係ないと思う。退屈している奴が居ないんだ。勉強できない奴は
勉強しないからだ。だからと云って馬鹿ではない」
「どうして勉強しないの。せっかく難関の高校に合格したのに…」
「好きなことに夢中になっているんだ」
「例えば…」
「野球部はめっちゃ弱い。でも一年生のエースはめげずに今年中に一四〇キロ
を投げると言って早朝からトレーニング室で独り筋トレに励んでいる。ふたつ
の弁当を午前中に完食。授業中でもハンドグリップを手放さない。授業が終わ
ると体育館でダッシュ。陸上部よりも早い。陸上部はインターハイの地区予選
リレーに借りると決めている。牛乳ばかり飲んでいる。一日二ℓも」
「弟は野球少年。聞かせてやりたい。きっと目をキラキラさせる」
「他にも不思議な奴が多い」
「聞かせて。聞かせて」
「ストリーテラーになると言って一日中コンテンツを考えていて思いついたら
授業中でもお構いなしにスケッチしている。ノートにも教科書にもメモ書きが
びっしり。カメラに没頭していて眼球が飛び出ている奴。世の中をアッと驚か
せる動画を創ると意気込んでいる奴。一日中ラップを唄っている奴。これは女
子だけど、カラオケ選手権優勝を目指して、午後になると代返を頼んで、しょ
っちゅう消える。平日のカラオケはタダみないな料金だからだってさ。休み時
間になるとギターを抱える奴。トランペットのマウスピースを胸ポケットに仕
舞い込んでいる奴。こいつのブーイングは大迫力。俺はゴッホになると言って
美術室に泊まり込む奴。宇宙を表わす数式は美しくないと間違いだと言って先
生を困らせ、自分で考えた数式を黒板に書いた奴。ガロアに傾注してるあいつ
は天才だ。地学教室で石や隕石の標本を見つめてトロ~ンとしている奴。春と
秋深しになると縄文遺跡を巡って学校に来ない奴。どうして春と秋深しなんだ
と尋ねたら、雑草が遺跡を邪魔しないから、と答えた。俺は『な~るほど』。
宮澤賢治は近代以降の日本人が喪った精神を取り戻そうとする古代人と研究し
ている奴。声楽志望のぽっちゃり女子。彼女のソプラノは教室の窓ガラスを震
わせ俺の耳を塞いだ。あっ。もう一人居た。ピアノ弾きの女子。俺の教室は音
楽室の隣なんだ。授業が始まっても音楽室からショパンのノクターンが微かに
聞こえてくる。実に妙な気分。担任も彼女を咎めない。担任は彼らや彼女たち
の夢の途中を時々尋ねる。その答えを楽しみにしているみたい」
「面白そう。高校も悪くない。ガロアって誰…」
「ガロアは後で。俺のクラスだけでもこんな連中が居る。確かに毎日が面白いし刺激的だ。ひとつことに夢中になっている奴らを見ているのは楽しいし応援したくなる」
「そ~だよね」
「俺にはそれが無い。だから地味に勉強している」
「夢中になれるものが無いってこと」
「そう。花南と同じさ」
 花南はドキッとした。
 夢と目標は違う。夢中になっていると目標が見えてくる。目標が向こうから
手を差し伸べてくる。夢中とは夢の中でも好きにまっしぐら。夢中にならない
目標は好きの追及ではない。今まで花南は必要と考えたひとつひとつを目標に
据えた。好きに夢中になるとは遠い世界のように想えた。
「両親はお前の好きなことをやれば良いと言ってくれる。母親までも私たちは
それを応援すると言う。それも嬉しそうに。でも俺には好きが無い」
「陽大はきっと見つける。好きが勝手に陽大ににじり寄ってくる。クラスの面
白そうな連中に囲まれて刺激をこれでもかってもらっているじゃない。好きに
夢中になるって気づいたらそうなっている状態。考えて創り出すものじゃない。だから強い。好きに包み込まれていない今は勉強するのがイチバン。包み込まれた時にはきっと勉強が役に立つ。それで良いじゃん」
「ときどき想うことがあるんだ」
「ナニ」
「両親は俺が好きに夢中になって、のめりこんで、勉強を放り出してしまう。
それにハラハラドキドキしたいのかもって。もの凄いプレシャ~」
「ご両親の職業は…」
「二人とも公務員」
「そうか。ご両親の期待を一身に背負っているんだ」
「でもな~。二人とも無理強いしないんだ」
「立派だね。ご両親の期待は期待。陽大は陽大。無理はダメ。続かない。壊れ
る。わたしは今日を生きるのに精一杯だった。最近はそれが財産と思えるよう
になった。だって生き抜く力は誰にも敗けないもの」
「花南の苦労が分からない俺は世間知らずだ」
「わたしも世間が分かっている訳ではないよ。家と近所と小学校しか知らない
もの。そんな狭い範囲でわたしなりに今を乗り超えてきただけ」
 花南には楽しみがひとつ増えた。
 今日から楽しみにする。
 わたしが夢中になる好きとの出逢いを。
 今まで考えもしなかった好きとの出逢い。
「イヤなこともあるんだ」
「…」
「今年になってから三回。ストーカーに付け回された。考えてみれば一週間に
一度ずつ。それも金曜日ばっか。前はバレンタインディだったからそろそろ一
ケ月。もう付け回されないと思いたいけれどそうはゆかない。必ず付け回され                                
る。ストーカーは簡単に諦めない。目的を達成するまでチャンスを窺う」
「心当たりはあるの…」
「ある。四人のうちの一人か、全員かは分からない」
 花南は心当たりの四人の特徴を陽大に告げた。
「分かった。花南を守れないなら男を止める」
 二つのドアの開閉で寒気が吹き込んでくる一Fロビー。上気しているのは顔
と頭だけ。花南の身体は冷えきってしまった。

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抜粋。その4。『花南に出逢いが在った』抜粋。その6。『サッポロの12月の絶対的貧困』
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