「最期は自宅で迎えたい」

突然ですが、みなさんは「死ぬ場所」について考えたことがありますか? 戦後50年ほどの間に、日本では社会の変化とともに、自宅でなく、病院や施設などで最期を迎える人が急増しています。でも「住み慣れた自宅で療養したい」「病気や障がいを抱えても最期は家で」と願う人は、少なくないはずです。

そんなとき、頼りになるのが「訪問看護」と呼ばれるサービスです。重い病気や障がいを持つ人も、すべての年代の人が住み慣れた地域や家庭で暮らせるよう、看護師や理学療法士、作業療法士などが協力しながら、在宅での看護ケアを支援するサービスです。

西日本豪雨で被災した岡山県真備町にも、訪問看護のサービスを提供するNPOがあります。2016年に看護職の片岡奈津子さんらを中心に設立された「そーる訪問看護ステーション」です。そーるは、訪問看護と予防訪問看護に患者搬送を組み合わせた、岡山県では数少ない組織の一つで、訪問看護や看取り看護の重要性を広く訴えてきました。しかし、7月の豪雨で事務所や片岡さんの自宅も浸水。避難先から、利用者全員の安否を確認し、今も訪問看護を続けています。なかには、被災後に亡くなった方の”看取り”を担った看護師もいます。

「利用者の数は震災前から半減してしまいました」。そう話す片岡さんですが、あの日から4カ月以上が経ち、利用者は少し増えています。そーるの訪問は「2人体制」。訪問では、人工呼吸器の装着や器官切開、人工肛門のケア、リハビリ、精神障害を抱えた人の生活支援などそれぞれにあったケアや医療支援が必要です。

 

思いを共有する時間

「被災直後から訪問を継続していますが、今私たちに必要とされる活動をするという思いは変わりません」

「災害の影響で他地域に行ってしまったり止むを得ず利用を停止している人もいますが、支援を必要とする人が安心して在宅で過ごせるよう、変化に対応しながら私たちの役割を果たしていきましょう」

ーー24時間体制で訪問看護を担う看護師たちは多忙を極めていますが、スタッフの”元気”を持続することも大切です。そこで、それぞれのモチベーションを高めるために、最近では、顔を合わせた時にはスタッフそれぞれの思いを語り合うようにしています。

壊滅的な被害を受けた真備町で、法人としての目標や方針を見失わないようにすることも、そーるにとって大切な活動の一つなのです。

 

カフェでできる「健康チェック」

 

「地域の人々と一緒に被災後の新しいまちをつくっていきたい」。そう考えるそーるは、10月から「enrichカフェ」という新しい取り組みを始めました。それまでも、全国から届いた支援物資を地域の被災者に届ける「配布会」やお祭などを開催してきましたが、新しいカフェでは地域の人たちの得意分野を持ち寄ってみんなで一緒にまちを盛り上げていこうとしています。

 

カフェには、これまで2回の開催で200人ほどが集まりました。近所の高齢者や小さな子連れの家族、そして真備町の住民だけでなく倉敷市内のみなし仮設住宅などから来る人までいます。

 

そーるは、このカフェで「健康チェック」と題して、地域の人々のさまざまな声を聞いています。血圧測定や体重測定をしながら、「食事はどうしてる?」「夜は眠れている?」と問いかけるのです。

 

カフェに訪れる人の多くは、震災の影響で生活が一変してしまいましたが、なかには町を離れなければならずかかりつけ医に通えなくなってしまったという人もいます。そーるは、健康に関する相談があれば、自己対処できる方法を伝えたり、血圧手帳を渡してカルテ代わりに利用してもらうなど提案。そうすることで避難先の医療機関で生活・健康状態を把握してもらいやすくなるからです。

 

「寒くなってきたけれど暖房設備が不十分」「復旧に携わる仕事が多忙すぎて睡眠時間が足りない」など健康チェックを通じて、新たなニーズが見えてくることもあります。

 

地域の人々の変わりゆく課題や悩みをキャッチし、必要な支援につなげる「そーる訪問看護ステーション」。被災しながらも身銭をきって始めた看護師たちの自主的な活動は、たくさんの人を笑顔にしています。そして、「町の復興」という大きなテーマにもつながりはじめています。

 

引き続き皆様の応援をお願いいたします!

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