皆さま、こんばんは。作曲と、ギターやヴァイオリンなど幾つかの楽器の筆頭を担当しております、中崎智大と申します。
《グレングルーの地下水路街》においては、全編の作曲を担当いたしました。第三回目にあたる今回は、その経緯について、前回の記事に続く形でお送りしたいと思います。
 実は《グレングルーの地下水路街》には前身があります。マンドリンのギターの二重奏のための拙作《シチリアーナ・ストーリア》がそれでした。

 当時団長でもあった伊藤が作品を気に入り、このテーマをグレングルーのメインテーマとしても用いることになったのです。
 元々物語性を意識しつつも具体的なストーリーはなかった作品なのですが、伊藤の視点から世界観・キャラクター・筋書きが補間されて行きました。そこへ改めて曲を付ける、という少々不思議な過程を踏んでいます。
 そんな経緯もあってか、世界観は個人的にとても馴染みやすく、特に演じることなく素直な作曲が出来たかと思っています。編成についても、マンドリン・オーケストラをベースとしつつその都度形を変えていくのがリリカのスタイルなので、自由度は高かったですね。元より「こんな楽器を手に入れたので何処かで使ってみよう」というような気楽な動機から徐々に形を成していくことも多く、見ようによっては邪道気味なのですが、それが独特の異邦感に一役買ってくれたようにも感じています。


 作曲に際しては基本的に「BGM寄りの器楽曲」を意識し、ナレーションとうまく調和する塩梅を模索していました。とりわけナレーションと音楽が同時進行する箇所では、ナレーションが聞こえなければ話の筋が追えず、しかし音楽が物足りないものになってしまっては本末転倒なので、なかなか悩ましかった記憶があります。

 音楽のみで進行するシーンもあります。こちらは地下水路街全体の情景を映すシーンの曲で、マンドリン属の金属質な複弦の音色を、淡々と下水処理をする機械的な様子に見立てました。こうした場面では想像に身を任せて、グレングルーの世界観をよりリアルに感じて頂けたら幸いです。
 もちろん、「ことば」と「音楽」をある種の譲歩に終始させたわけではありません。決め所ではオペラよろしく幾つかのアリアを持ってきておりますので、その辺りの駆け引きにもぜひご注目ください。


 今回のCD化においては、ミキシング・マスタリングも私が担当いたします。プロジェクト達成の暁には、団員一同、一丸となって作り上げて来たこの物語を、最も理想的な形に仕上げて詰め込んだ、叙情的な音盤をお届けしたいと思っております。
 さて、次回はリリカの意匠筆頭であり、グレングルーの初演においてはライブペイントも担当された森さんの登場です。よろしくお願いします。

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