2023-2024年 猛禽類医学研究所 完了報告
2023-2024年 クラウドファンディング完了報告
「もっと多くの命を繋ぎたい!野生猛禽類の救護と継続飼育体制の充実を」
READYFORで3回目の挑戦となりました本クラウドファンディングは、2023年12月7日~2024年2月29日の期間で挑戦いたしました。ご支援くださった皆さま、ありがとうございます。のべ3400人もの方々にご参加いただき、また支援総額は51,959,000円と今回も目標金額を大きく上回って達成することができました。こんなにも多くの方々がご参加くださったことを心から嬉しく思います。ご支援と共に、応援や共感のあたたかいメッセージも本当にたくさん届きました。皆さまからのお気持ちが大きな力となって日々の活動を支えてくださっています。賜りました応援を励みに、スタッフ一同一丸となって、さらなる邁進を継続してまいります。
今回のクラウドファンディングにより得られた資金は、老朽化した医療機器の更新とより負担の小さい治療や迅速な検査を可能とする新機導入のため、また、専用の公的資金があてがわれていない野生に帰ることのできない個体(終生飼育個体)の飼育管理およびQOL(生活の質)の向上を目的として継続的に必要となる費用のために大切に使用いたします。さらに環境省事業では賄いきれない救命治療費、飼育管理費、より良い治療や原因究明のための研究費、教育普及活動に使わせていただきます。なお、本プロジェクトは実施完了日が2025年2月28日となりますため、一部の費目では支出予定を含めての使用内訳をお示ししています。
新しく導入することができました内視鏡・マイクロ波メス・血液検査機器(一般検査・生化学検査)により、救急治療だけでなく、日常の処置や定期的な健診もより早く正確に、動物達へ与えるストレスを小さくしながら行うことができるようになりました。
救命の始点であるレスキュー活動に必要不可欠なドクターカーや四輪駆動車も、必要時に迅速な整備ができたことで、大きなトラブルなく、長距離ともなる現地収容へ安全に対応することができました。しかしながらドクターカーは2016年からの稼働により老朽化が進み、エンジンやブレーキの不調が増えてきました。また野外調査や傷病対応に活用しているランドクルーザー・プラドですが、近年増加している鳥インフルエンザ疑いの傷病鳥収容に使用した際に、布製のシートであるが故に消毒剤が浸透してしまい、滅菌作業が複雑かつ衛生上の不備が生じています。また感染隔離用輸送ボックスも荷台のスペースの関係で横向きにしか積載できないことも、現地での乗り降ろしが困難となっています。これらのことから将来の更新を念頭に積み立て金として資金を計上させていただきました。
毎日の飼育管理の中でQOL向上を目指して取り入れてみたいと思っていたことや、試してワシ達の反応を見てみたかった事にも挑戦し、試行錯誤しながら飼育環境をより良く整備することができました。おかげさまで、治療を乗り越え、命をつなぎとめたワシ達は釧路湿原野生生物保護センターで、皆精一杯健やかに過ごしております。そして、新しく設置した止まり木に我先に乗ってきたり、広くなった水バットで豪快な水浴びをしたり、旬の新鮮な魚を見て駆け寄ってきたり…と、嬉しい姿を見せてくれています。
今年度、野生復帰の叶ったワシは全て(4羽)が追跡用の衛星送信機を装着しての放鳥をすることができました。放鳥後の無事を見守りながら、野生個体の動態把握や、それらの蓄積による事故等の防止に欠かせない生態学的なデータ取得に繋がっております。実際に、動きの鈍い個体の現地での安否確認や、潜在している事故の可能性とリスクを未然に察知して防止策を検討するために重要な情報を得ることができました。
さらに、近年世界中で多発し、深刻化しているバードストライク(とくに大型猛禽類と発電用風車の衝突)の根本的な事故発生の抑制を目的として、ワシ達にとって視認しやすく、衝突リスクの少ない新型風車の開発に着手いたしました。終生飼育個体の飼育ケージ内に設置した大型の模型を安全に配慮しながら実際に稼働させ、ワシの反応や行動を把握する検証実験を実施し、まずは飼育下においての安全性の確認を進めることができました。また、こちらの実験は別途助成金を受けて始動することができた事業でありますが、条件を変えながら分析に有意義な実験のデータを長期的に重ねるためには資金の不足がございました。継続のため、本クラウドファンディングでいただいたサポートから資金を補い、現在もケージでの実験をまた新たな検証段階へ進めながら続けることができています。実際に被害にあっている希少な猛禽類に参加してもらう検証実験は私たちにしかできない保全活動の一つです。今後も実験を続け、新しく傷つくワシ達を1羽でも減らせる未来に繋がるように、彼らが身をもって伝えてくれるメッセージをできる限り拾い集め、野生動物とのより良い共生社会を実現していきたいと考えております。
教育普及活動につきましては、出張授業や展示、講演会、実習生受け入れ等の他、啓発を目的としたイベントへの参加をいたしました。野生動物が直面する問題と対策の紹介や彼らとの共生に向けた私たちの幅広い活動について、そして輸血のドナーや検証実験への参加等で私たちの保全活動を広範に支えている終生飼育個体の存在と重要な役割について、真剣に思いを込めて、時に楽しみながらお伝えできるよう取り組んでまいりました。会場でご支援者様と直接お会いできるようなひと時もあり、改めて皆さまとの繋がりや応援をあたたかく、また心強く思いました。
この度ご報告させて戴きましたこれらの取り組みは、皆さまのお力添えにより実現することができました。毎日傷ついた猛禽たちと接している中で、もどかしさを感じる時、現実に向き合わなければならない時もございますが、目を背けることなく真摯に向き合い続けていきたいと思います。私共の活動に寄り添い、支えてくださる皆さまと、猛禽類とのより良い共生に向けて取り組み続けられることを、改めてありがたく存じます。
これからも歩みを止めず、私たちの活動の小さな一歩とともに、野生および飼育下にある猛禽たちの生活改善の一歩をSNSやホームページで発信していきますので、引き続き応援をいただけますと幸いです。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
猛禽類医学研究所 代表 齊藤慶輔