プロジェクト活動報告
患者がん移植(PDX)モデルによるがん個別化医療を実現するための新ゼブラフィッシュ品質管理システム開発プロジェクトにご支援をいただき、ありがとうございます。ここに、この1年間のプロジェクトの成果を、ご報告いたします。
次世代のがん個別化医療を実現する患者がん移植(PDX)ゼブラフィッシュモデルシステムとは、患者様のがん細胞をゼブラフィッシュに移植し、その薬物感受性を観察することで、最適な治療薬を選択する技術です。このシステムは、以下のような利点を持っています。
- ゼブラフィッシュは、高い透明性と発生速度を持ち、in vivoイメージングや高スループットスクリーニングに適しています。
- ゼブラフィッシュは、正常な免疫系を持ち、がんと微小環境の相互作用や免疫療法の効果を評価できます。
- ゼブラフィッシュは、ヒトと高い遺伝的相同性を持ち、がんの遺伝子変異や薬物感受性に関する情報を提供できます。
- ゼブラフィッシュは、低コストで大量に飼育でき、倫理的な問題も少ないです。
患者がん移植(PDX)ゼブラフィッシュモデルシステムは、既存の2D培養細胞やPDXマウスモデルに比べて、より迅速かつ正確にプレシジョンメディシンを実現できる可能性があります。このシステムは、がんの診断や予後判定、治療効果予測、創薬開発などに応用できると期待されています。次世代個別化医療のための革新的なツールとして、今後のさらなる研究開発が求められています。
患者がん移植(PDX)ゼブラフィッシュモデルシステムは、がんの発生や進行、転移、治療応答などを研究するための有用なツールです。しかし、このモデルシステムの精度やスループットを改善するためには、ゼブラフィッシュ受精卵の品質管理が重要です。ゼブラフィッシュ受精卵の品質管理とは、受精卵の発生段階、形態、遺伝的背景、感染症の有無などを評価し、適切な条件で保管し、必要に応じて処分することを指します。親ゼブラフィッシュ品質管理を怠ると、受精卵の生存率や発生能力が低下し、移植された患者様のがん細胞の生着や増殖に影響を与える可能性があります。また、品質管理を行わないと、受精卵間のバリエーションが増加し、実験結果の再現性や精度が低下する恐れがあります。したがって、患者がん移植(PDX)ゼブラフィッシュモデルシステムを用いる際には、ゼブラフィッシュ受精卵の品質管理を徹底することが必要です。
そこで我々は独自に受精後5日間の生存数や生存率を、正確にモニターし、リアルタイムにクラウドデータベースに記録することにより全ての受精卵品質管理システムを世界で初めて再構築しました。その結果、確実に高品質なゼブラフィッシュ受精卵を生産することが可能となり、患者がん移植(PDX)ゼブラフィッシュモデルシステムを強化し、次世代のがん個別化医療の実現に、1歩大きく前進することができました。
今回のクラウドファンディングにご理解ご支援いただきました皆様に、心から感謝申し上げます。
このプロジェクトは、ゼブラフィッシュを用いたがん研究の新たな可能性を示すものです。ゼブラフィッシュは、人間と疾患ゲノムの約80%が共通しており、がんの発生や進展のメカニズムを解明するのに有用なモデル動物です。また、ゼブラフィッシュは透明な胚を持ち、発生過程や組織構造をリアルタイムで観察することができます。さらに、ゼブラフィッシュは高い生殖能力と遺伝子操作の容易さを備えており、大量かつ迅速に実験を行うことができます。
我々は、患者様のがん細胞をゼブラフィッシュに移植することで、がんの転移や薬剤耐性のメカニズムを解析し、効果的な治療法の開発に貢献することを目指しています。しかし、このような実験を行うためには、高品質なゼブラフィッシュ受精卵の確保が不可欠です。従来の受精卵品質管理システムでは、親ゼブラフィッシュの形態や色素沈着などの外観的な特徴に基づいて判断していましたが、これでは受精卵の内部的な品質や機能を正確に評価することはできませんでした。
そこで我々は独自に受精後5日間の生存数や生存率を、モニターすることにより全ての受精卵品質管理システムを再構築した。その結果、確実に高品質なゼブラフィッシュ受精卵を生産することが可能となり、患者がん移植(PDX)ゼブラフィッシュモデルシステムを強化し、次世代のがん個別化医療の実現に、1歩大きく前進することができました。
今回のクラウドファンディングにご理解ご支援いただきました皆様に、心から感謝申し上げます。おかげさまで、我々はこのプロジェクトをさらに発展させることができます。今後も、よろしくお願い申し上げます。
2023年4月吉日
三重大学大学院医学系研究科システムズ薬理学
田中 利男 拝