これまでに曲技飛行という言葉を耳にして、何か違和感を感じた方も多いのではないでしょうか。「曲技飛行って何だろう?曲芸飛行のことかな?」と。私もここ米国にいて、お客に「明日のボーイフレンドの誕生日に内緒でスタントフライトをお願いしたいんだけれど」と言われたり、「アクロバット飛行?ああ、橋の下を低空飛行するんだよね?」と返されたりすることはよくあります。
 
曲技飛行(アクロバット、エアロバット、エアロバティックス、など)は、操縦技術の高度なレベルでの習得や、航空力学の確認、異常姿勢の回避や回復操作(UPRT)を学ぶなどに非常に有効な訓練手段です。内容はロール(Roll: 横転)、ループ(Loop: 宙返り)、またそれらの複合マニューバーであるキューバンエイト(Cuban Eight: 横向きの8の字)、スピン(Spin: 錐もみ)などが一般的です。曲技飛行を認可された飛行機や滑空機で、パラシュートを装備し、訓練であれば曲技飛行を熟知した飛行教官と、高度を十分にとり、合法的に、安全性に留意して行います。

 

 

対して、曲芸飛行(スタント)とは観客を楽しませることを目的に、正に「曲芸」を行うことを指します。その内容は様々で、私たちのように曲技飛行を披露することもあれば、酔っぱらった観客に扮したパフォーマーがコメディフライトを行ったり、ウィングウォーカーと呼ばれる人が主翼の上で芸を披露する、などがあります。
 
多くの場合、曲技飛行は高度を維持して人目につかないところで行いますから、航空祭などのイベントで目にする曲芸飛行の方が馴染みが深いのも当然と言えます。先に述べた例のように、お客を乗せてスタントをすることはありませんが、一緒に曲技飛行を楽しむことはいつでも大歓迎です。どうぞご相談ください。

 

 

航空法では、曲技飛行はどのように説明されているのでしょうか。FAR(米国連邦航空法)のPart 91.303に以下のように定義されています。
 
“an intentional maneuver involving an abrupt change in an aircraft’s attitude, an abnormal attitude, or abnormal acceleration, not necessary for normal flight.”

(訳: 航空機の急激な姿勢変化、異常姿勢、急激な加速を含む、通常飛行では用いられない意図的な飛行)
 
通常飛行とは、例えば旅客機に乗客として搭乗したときに経験する飛行です。離陸、上昇、巡航、下降、進入、着陸。それらで行われることのない飛行が通常では用いられない飛行が、曲技飛行と考えてよいと思います。

 

 

曲技飛行とは認識されないかもしれませんが、この定義では訓練で行う失速や急旋回なども曲技飛行に分類されるのでしょう。レイジーエイトやシャンデルなどは曲技飛行として記載されることもありますし、山岳飛行で山に囲まれたときの回避操作として身に着けておくと役立つ技術です。また、滑走路上のハイスピードパスも厳密には曲技飛行です。

以上のようにFARでは曲技飛行を非常に簡潔に定義していますが、日本の航空法ではまた違った記述になっています。詳しい解説については、日本の教育証明を所持する方にご質問ください。