国鉄時代の食堂車～初体験の頃～

年末年始に、2001年4月のネガフィルムが出てきました。

今年で50歳ではありますが、今後の人生期間を考えると、もう断捨離を始めないとみんな捨てられてしまいそうで(笑)、パソコンとデジカメを使ってデジタイズしていたのですが、その中に鹿嶋市内で15年間食堂車を活用したレストランを営んでいらっしゃった、「エル」の貴重な写真が出てきました。

それまで、国鉄型特急や急行を撮影に追っていた鉄道マニアだった私に、「食堂車人生」を突然語って下さったのが、この「エル」のマスターだったことを、あらためてネガをデータに落とし込みながら回想します。

初めて「エル」の存在を知ったのは1998年の5月、たまたま走っていた事でした。

私自身、振り返るとこの頃は人生の転機を迎えようとしていた、きっかけを持つ行動をしています。

東京から茨城へ早朝車を走らせていた時に目についたのが、サシ489-9でした。

その時は時間帯が悪く外観の写真だけを撮り、目的地へと車を再び走らせたのですが、どうしても営業時間中にもう一度伺いたいとの願いを持ち続け、再訪出来たのは流転の社会人生活を送っていた2001年4月、およそ3年が経った頃でした。

マスターに、「石川県から来ました」とお伝えすると、仕込みをしつつも色々とご教示頂きました。

マスターご自身が食堂車のチーフとして昭和60年まで日本食堂で働かれていた事、退職の際に退職金の代わりに食堂車2両を国鉄から譲り受けた事、本当は2両とも使いたかったが、1両は手放さざるを得なくなった事、そして人生の長きにおいて食堂車と共にあった事。

当時のお写真を見せて下さりつつ、「もう汚くなったけど、初めは車内で展示していた」と伺いました。

そのお写真はきちんと場所や日付も書いてあって、史料的にもとても参考になったものです。

しかし何より、今になって、マスターの仕事場が「食堂車」を貫かれた事を、ご自身がとても誇らしく思っていらっしゃったんだろうと感じるのです。

このプロジェクト開始後も、当時やマスターのお人柄をご存知の方のお話に触れる事があります。

私のそれまでの「鉄道マニア」の偏重視点とは異なる、「食堂車人生」の求道者の考え方に、打ちひしがれる事さえあります。

※勿論、求道にはご家族のご理解や悲喜こもごもを抜きには美談に出来ないです

サシ489-9は既に存在しません。

そして、マスターも既にご存命ではありません。

でも、同じ時代に造られたサシ481-48が、「エル」のマスターに限らず多くの食堂車「チーフ」の皆様の、人生を乗せた食堂車の語り部になって下さるように感じます。

カタチあれば、想いはつのる筈。

ネガの中に、マスターが仕込み中の後ろ姿が写った写真がありました。

ちゃんと、コック帽かぶってました。

とても愛嬌を感じるのです…。

これからも、その「生き様」、生き続けてほしいと願います。

多くの食堂車の思いと共に。