住人さんからのメッセージ、続々といただいています。

 

みなさんにとってアパートメントはどんな場所なのか。それは、私たちが続けてきたこの7年間を、みなさんはどう見てくださっていたのか。という問いかけでもあります。

 

そのひとつの答えを、こうして面と向かって(文章という形で、ですが)いただくのは、気恥ずかしいような、でもとてつもなく嬉しくもあり。

 

お一人お一人から、原稿をいただくたび、一度大きくまばたきしてから、ファイルを開いて拝読しています。

 

#4は、松渕さいこさんです。

 

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「アパートメント」では書き手を住人さんと呼んでいますが、私は読者の方々のこともまた、同じ町内に暮らす人たちのように感じています。お互いに多くを知らなくても、なんとなく気遣い合うような、そういう心地よい距離感がこのアパートメント一帯に広がっているのです。

 

このアパートメントは一体どんな形をしているんでしょう。私の知るところでは、高さは8階くらいまであって古い煉瓦造り。部屋の間取りは独特に狭いのだけど、天井は高くて、長細い窓が中庭に面して配されている。そう、このアパートメントは中庭を囲むようなロの字型の建物で、廊下は薄暗い。中庭には大きなプラタナスの木が生えていて、住人たちはたまに中庭で出会い、ひと言ふた言を交わし、やがて部屋に戻っていきます。窓にカーテンは引かれていません。

 

 

アパートメントは「開かれたインテリア(内面)」を持つ部屋の集まりです。住人たちはそれぞれ、自分の人生の仕事だと思ってる、またはそういう心意気に通じるような、自分にとって大切なことを部屋のなかに持ち込んでいます。だけど扉に鍵はついていません。いつも半開きになっているはずです。ほかの住人も近所の読者の人たちも、部屋を訪ねることができるし、望まれています。部屋のなかでひとりで書いたものや、つくってきたものをしばし一緒に見たり聞いたりしてくれたら、嬉しい。

 

ところでアパートメントには記事の紹介文を綴ってくれるレビュアーさんが存在します。

 

彼女、彼は一番最初の読者です。感覚としては両隣か上下階に住む隣人のように身近な存在です。交換日記のようにレビューと記事を交わすうちに、自分が書いた文章に思いも寄らない方向から光が差したりすることがあります。あるいは、自分だけの暗闇と思っていた景色を「私も知っているよ」と共有してくれたりすることも。

 

連載を始めてすぐ、私は誰かのために部屋の扉を開けておくことが苦手だということに気づきました。振り返ると、隣人や管理人さんや近所の人たちの声や気配が、開け放しておくことの勇気をくれた気がします。同じ屋根の下で暮らすというのは時にトラブルを生みますが、このアパートメントではお互いが異なっていることを「うん、それもいいね」と思っているのでトラブルはありません。実際にアパートメントを通じて、何人も新しい友だちができました。アパートメントの世界を共有できる人たちとは、最初から優しい空気が流れています。

 

 

今回アパートメントが大改修に踏み切れれば、このアパートメントに招かれる人たちも、訪れる人たちももっと増えることでしょう。実際に言葉を交わす機会もあるかもしれません。迷路のような各部屋へのアクセスも素晴らしく良くなって、戸棚に仕舞われてしまった住人のコラムを再び手に取りやすくなるそうです。7年分の膨大な言葉や絵や写真たちが、部屋に詰まっています。

 

一緒に改修を応援していただけたら嬉しいです。

アパートメントのような心地よく開かれた素直な場所が、これからもみなさんと一緒に朝も夜も、夏も冬も、くぐり抜けて行かれますように。

 

松渕さいこ

 

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