大垣美穂子さんの取材一回目は、

好きな映画やら漫画やら小説のことを聞きました。

彼女が好きな映画の一本にあげたのが「フィツカラルド」。

 

舞台は、ゴム景気にわく19世紀後半の南アメリカです。

オペラハウス建設を夢見る主人公のフィツカラルドが、

ゴムを求めアマゾン川上流の未開の地を目指します。

圧巻なのは、激流を避け、陸上から山を越えようと

巨大な蒸気船が山を登っていくシーン。

フィツカラルドのすさまじい執念と

リスクをかえりみない生き方が

見事にビジュアル化されています。

 

フィツカラルドのその姿が

3年間の過酷なアマゾンロケの間に離婚も破産もしているという

監督ヘルツォークにも重なって応援したくなると大垣さん。

他にも「吉原炎上」の女郎達の破滅的な姿に惹かれたり、

「レスラー」で描かれた、体がぼろぼろになりがらも

リングに立ち続ける中年レスラーの姿に惹かれたり、

リスクをかえりみない生き方に対してある種の憧れを持っているようです。

 

「リスクのことは考えず、目的地に突き進む男たちが好きなんです。

そういうリスクを冒すのって人間だけなんだよなって思う。

人にしか理解できないことだから、やるべきなんだろうな。」と大垣さん。

 

大垣さんの初期の作品「over the pain」は、

むかつくことを叫びながら、ガラス玉を壁にぶつけてもらい、

それをホットボンドでくっつけたという人の怒りや痛みを形にしたような作品。

 

 

 

割れたことで生まれる、新たな質感や色、複雑な形を持つこの作品には

現状復帰の道が完全に途絶え、後戻りできない領域にある別の美しさがあります。

 

数年前より始めたミルキーウェイシリーズでは、

ガラス玉を壁に投げつけるという一瞬であるラインを超える行為からではなく、

立体に小さな穴をあけ続ける行為や

キャンバスに小さな白い点を打ち続ける行為を通じて

あるラインを、それも、くっきりとした境界がないラインを

超えようとしているように感じます。

 

 

 

膨大な時間をかけてあるラインを超えていった

フィツカラルドやレスラーの主人公のように

大垣さんは、じわじわと、ゆっくりと

後戻りできない領域にある美しさを表現しようとしているのです。

 

 

 

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