【プロジェクト終了報告】プロジェクトをご支援頂いた皆様へ
広島大学医系科学研究科 免疫学研究室では2021年7月〜9月にクラウドファンディング「変異株中和抗体カクテル」でだれもが安心して暮らせる世界に! 〜新型コロナウイルス次世代治療薬への挑戦〜を実施し、全国の皆様から温かい応援と多大なるご支援を頂きました。心より御礼申し上げます。
ご支援頂いた資金で新たな中和抗体の取得や広域中和抗体カクテルの開発が大きく進展しました。また幅広い変異株を中和する抗体が体内でどのようにつくられ、それらがウイルス変異の影響を受けず安定的に中和効果を示す仕組みについて明らかにすることができました。それら研究成果は国際学術雑誌や学会などで発表し、世界的な研究開発に貢献するとともに、各種メディアを通じて一般の方々向けの情報発信にも努めてまいりました。研究に協力頂いた関係者の皆様にも、この場をお借りして深く感謝申し上げます。
また本支援による研究を通じ、多くの若い研究者や医学生を育成することができました。このプロジェクトで学んだ知識、技術、経験が今後の医学研究に役立つものと信じております。
中和抗体による重症化阻止の有効性や安全性は確立しつつありますが、一方でウイルス変異に効果が左右されない抗体医薬の開発、開発期間の短縮や開発費の抑制、利用しやすい剤形の開発など解決すべき課題もまだ多く残っています。本プロジェクトの最終目標は取得された広域中和抗体の低分子化によって、飲み薬のような使いやすい医薬品を開発することです。引き続き、夢の実現に向け精力的に研究を進めてまいります。
画像1:免疫学研究室のメンバーと関係者
【プロジェクト達成状況のご報告】
(1) 各種変異系統の新型コロナウイルス株(D614G, alpha, beta, delta, delta plus, kappa, lambda, omicron BA.1, BA.2, BA.2.12.1, BA.4, BA.5)全てに有効な中和抗体1種を含む計4種類の広域中和抗体の取得に成功しました(文献1)。
(2) これら抗体のエピトープ(結合するウイルスのスパイク蛋白質上のアミノ酸部位)や結合能力やウイルス中和能を評価しました(文献1、画像2)。
(3) 取得した広域中和抗体のアミノ酸配列構造とウイルス抗原と結合する部位の立体構造解析を行い、ウイルス中和に重要な領域や構造を分子・原子レベルで明らかにしました(文献1)。
(4) 大きくサイズダウンした抗体でも中和活性を示しうることを確認しました(未発表)。
(5) 取得した2種類の抗体から構成される広域中和抗体カクテルを作成し、有効性を確認しました(文献1)。
(6) 得られた知見から、広域中和抗体を誘導する新しいワクチン手法を開発し、発表しました(文献2)。
文献(原著論文)
1. Shitaoka, K., Higashiura, A., Kawano, Y. et al. Structural basis of spike RBM-specific human antibodies counteracting broad SARS-CoV-2 variants. Commun. Biol., 6(1):395, 2023.
2. Azuma, H., Kawano, Y. et al. Vaccination with the Omicron spike RBD boosts broadly neutralizing antibody levels and confers sustained protection even after acquiring immunity to the original antigen. Int. Immunol., 35(4):197-207, 2023.
画像2:開発抗体によるウイルス感染阻止効果
デルタ株型ウイルスが感染したヒト細胞が光って示されますが(左図)、取得した中和抗体によってウイルス感染が完全に阻止されました(右図)。
【収支状況のご報告】
寄付者総数: 500人
寄付総額: 11,615,000円
資金使途(2024年1月5日時点)
研究試薬、研究機器、研究環境整備、外注費用など: 4,174,353円
実験補助員などの人件費: 916, 743円
クラウドファンディング手数料: 1,916,475円
支出合計: 7,007,571円
今後の研究継続資金: 4,607,429円
画像3:支援金で設置させて頂いた超低温フリーザー
提供された血液検体や作成された抗体などを長期安定保管するために活用しています。
【リターン発送状況について】
報告レポートの発送ならびにオンライン報告会の案内は2月上旬頃を予定しております。
最後に、支援者のみなさまに心からの御礼を申し上げます。
ご支援頂き、本当にありがとうございました。
様々なウイルス感染症の脅威に対抗するワクチンや治療薬の開発は急務であり、感染症の予防や革新的な医薬技術の開発で人類の健康と命を守ることに貢献できるよう免疫学研究室ではこれからも全力を尽くしてまいります。
今後とも応援のほど宜しくお願い申し上げます。