着物の復元は、初の試みの連続、そして発見の連続でした。

 

 貴婦人が着ていた打掛の柄は藤の花でしたから、本物の桃山時代の着物で藤の花を刺繍してある古裂をスキャンしてデジタルデータ化。色は劣化していたので画像処理でキレイに復元した後、花ひとつひとつ、葉も一枚一枚保存し、データベースを作りました。

 

 それをデータベースから細かくひとつずつ呼び出しながら、地道に違和感なくレイアウトしていきます。もちろん、絵画の打掛の模様の様子を見ながら、自然な感じになるよう努めます。

 で、完成したのが下の図です。

 

 

 これからがちょっと普通と違っていて、面白いところです。

 というのも、この柄を前回紹介した綸子の生地にプリントアウト(なんと、今の着物の60%以上が、デジタルプリントで染められているそうです)するので、コンピューター上で袖や身頃や襟などパーツに解体、それを組み合わせなおして、通常の反対に反物の形に戻すのです。

 

 それで、いよいよプリントアウト。

 

 プリントアウトの結果は、素晴らしい出来でした。

 この作業を協力して下さった京都の専門業者も、「(デザインされたイラストをプリントするのが通常で)刺繍の写真をそのままプリントしたのは初めて」と言い、遠目から見れば本当に刺繍しているように見えるその出来に、『染め刺繍』と名付けてみてはどうか、と提案するほどでした。確かにいい名前ですし、大きな可能性を感じます。

 

 古びたものを現代人がリアルに感じるために、デジタル復元が有効であることが、だんだんとお分かりいただけましたでしょうか。

 そして、それが現代の伝統産業に、新しい風を起こすヒントにあふれていることも感じていただけたら嬉しく思います。

 

 さて、屏風の復元では、どんな新しい風が吹くでしょうか。いっしょに探ってみませんか?

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